2026年3月19日(木)
- 1 【ひまわりメロン栽培物語】北竜町の農家が一年をかけて紡ぐ、いのちの叙事詩
- 2 第1章 雪の中の始まり:2月・台木の播種
- 3 第2章 いのちをつなぐ技:2月・接木
- 4 第3章 98%の奇跡:3月・接ぎ木後の苗
- 5 第4章 大地への旅立ち:3月・定植
- 6 第5章 蔓を導く手:4月・摘心・剪定 & 水稲播種
- 7 第6章 いのちの選択:5月・摘果作業
- 8 第7章 歓びの朝:6月・初出荷
- 9 第8章 市場に届く想い:6月・初競り@旭一旭川地方卸売市場
- 10 第9章 土への恩返し:7月・堆肥作り & 散布
- 11 第10章 学びの夏:7月・JAきたそらち抑制メロン講習会
- 12 第11章 秋の実り:9月・二期作目の赤肉メロン
- 13 第12章 秋の贈りもの:9月・秋の赤肉メロン出荷
- 14 第13章 大地への感謝:11月・メロンハウス用ワラ堆肥作り
- 15 おわりに。一玉に込められた物語
- 16 ひまわりメロン栽培:全記録
- 17 Youtube動画
- 18 その他の写真
- 19 関連記事
【ひまわりメロン栽培物語】北竜町の農家が一年をかけて紡ぐ、いのちの叙事詩
ひまわりメロン栽培・北竜町ひまわりメロン生産組合。北竜町のメロン栽培の農家の人々が一年をかけて描く、ひまわりメロン栽培の壮大な叙事詩なのです(2018年のメロン栽培取材より)。
第1章 雪の中の始まり:2月・台木の播種
渡邊靖範さんの育苗ハウスで、メロンのいのちが芽吹く
立春を前に、雪深い日々が続く2月1日より、渡邊農場では、メロンのビニールハウス立て作業がスタートしました。除雪し、ハウスのビニール掛けをし、育苗ポットの土壌を準備する作業が開始。育苗箱や育苗ポットの土つめ作業、ポット並べ作業等が行われます。
台木メロンは、病気に強い元気なメロン。土台のメロンに接木をするためのメロンです。土は、病原菌に抵抗性のある土、育ちやすい土である培養土。土を30℃に温め、育苗箱に、ふんわりと空気を入れるようにほぐしながら、平らにし、等間隔に溝をつけます。
プレート1列に台木の種19粒ずつピンセットで配列。種は溝に直角に置くと双葉が横向きに出てくる。1列の溝に、種19個を均等に並べていきます。溝を作るのは、種を播いた後に土を被せるとき、種が動かないようにするためです。ふんわりと覆土をし、土の表面を平らにして、新聞紙を被せます。
播種が行われた育苗箱は、ハウスの中の電熱の入った苗床に置かれ、ビニールを掛け、毛布を掛けて、30℃の温度を維持しながら、大切に育てられます。
播種してから3日後に発芽。播種して一週間後には、育苗ポットに移植されます。台木の育苗が完了したら、メロン本体の播種と育苗を行い、台木メロンと本体メロンの接ぎ木が行われます。
昨年の農業実習生で、現在渡邊隼斗さんのお嫁さんになった美香さんも初体験。一粒一粒丁寧にピンセットで種を並べる姿に、家族の絆がメロンづくりを支えていることが伝わります。
第2章 いのちをつなぐ技:2月・接木
「割接ぎ」師匠から受け継いだ、指先の技術
台木が発芽し、育苗ポットへの移植と同時進行で、メロン本体(北竜3号メロン)の播種作業です。
現在、北海道指導農業士である渡邊靖範さんは、北海道内でも、無加温でメロン栽培の早期出荷をしていらっしゃいます。2002年(平成14年)には、それまで行っていた「呼接ぎ」より良い接木方法があることを知り、音江町の柴田孝典師匠(現・北斗メロン生産協議会会長)より「割接ぎ」を習得。
現在は、JAきたそらちで出荷数が一番多い農家。北竜町のひまわりメロン生産組合の皆さんに接木の講習会を開催して技術向上にも励まれています。
根が強い台木に、メロン本体を接木することによって、土壌の病害に抵抗性のある元気で美味しいメロンとなります。また、連作障害も防ぐことができるとのことです。
まず、台木の芯芽を摘み、子葉付け根の中心部から上から下へと縦に切れ目を入れます。メロン本体の方は、胚軸を切り発芽したメロンの茎を指の上に乗せて、茎の側を薄く削ぎ取ります。両側について行い、茎は並行な面がある台形となります。台木にメロンを差し込み、ミニクリップで留め接合させます。
指先に神経を集中して1本ずつ丁寧に。カミソリを使う繊細な作業。整然としたハウスの中で、渡邊さんご夫妻の接木作業が続きます。
第3章 98%の奇跡:3月・接ぎ木後の苗
水分補給と乾燥の繰り返しで、いのちをつなぐ
2月23日に接木作業が行われ、育苗ポットの苗たちがすくすくと順調に成長しています。3月6日の訪問時には、苗のクリップも外れ、ポット同士を離して並べ替えが行われていました。
接ぎ木の成功率は、その年によって異なりますが今年は例年より良くて、98%程。高い確率で成功しています。接木した苗には100%以上の水分補給と乾燥の繰り返しが必要です。乾いたら水をかけて、噴霧機で水分補給し再びビニールを掛けます。午後から再び、ビニールを外して1時間くらい乾かします。
3日間位繰り返し、その後はビニールを外した状態で、日中暑くなるときだけ遮光します。しっかりと本葉が付着し成長するまでに10日間くらいかかります。台木から出てくる芽を摘むことも大切な作業。メロンの本体に栄養を集中させるためです。
「接木作業は繊細な作業でした。傷ついた台木と本体が一体となって成長していくのは不思議です」と語る美香さん。今後、10日後くらいにハウスへの定植作業となります。
第4章 大地への旅立ち:3月・定植
ハート型の葉の縁に並ぶ、宝石のような水滴
播種から1か月が経過し、メロン苗も順調にすくすく育っています。本葉が3枚しっかりと成長し、水分を吸い上げて、ハート型の葉の縁には、小さな水滴が、宝石のように並んで輝いていました。
90mのメロンハウスの土壌は、肥料を散布して荒起し。盛り土をした、ふんわり柔らかな土のベッドには、マルチフィルムで土を覆い二重のトンネルビニールを掛けます。
16℃程の地温(地下20cm程)を保ちながら、土の保温調整をしていくためのビニール掛けです。15℃を切ると、成長がとまってしまうことがあるので、温度の微調整をしっかりと行っていきます。ハウス内の気温は、ビニール掛け1枚で3度の差が生じるそうです。
60cm間隔にビニールに切れ目を入れて準備万端。定植前のメロン苗ポットは、ぬるま湯につけて、水分補給をします。マルチビニールの上に並べ、手で穴を空け、そっと丁寧にメロン苗を植え込み、土で優しく抑えて固定させます。
膝をつく、その姿に
ハウス1棟90mに290株ほどの苗が並びます。苗を定植する作業は、膝をついて、座った状態で行っていきます。曲げたままの膝の痛みはさることながら、土壌が温度上昇してくると、低温やけどをするくらい熱くなるとのことです。膝にサポーターを付けて、膝を保護しながらの大変な作業が続きます。
ビニール素材、土壌、種なども毎年進化していくので、しっかりとアンテナを立てて情報収集。失敗と成功の試行錯誤を繰り返しながら、毎年改良を重ねていきます。
定植1か月後には、大切な着果作業が行われる予定です。
第5章 蔓を導く手:4月・摘心・剪定 & 水稲播種
メロンと水稲、二つのいのちを同時に育てる
定植されたメロンの蔓がぐんぐん伸び始める4月。摘心・剪定は、メロンの実に栄養を集中させるための大切な工程です。
不要な蔓や脇芽を丁寧に取り除き、蔓の伸びる方向を整えていきます。同時に、水稲の播種も始まります。メロン農家は米農家でもあり、ハウスの中と田んぼとを行き来しながら、朝から晩まで休む間もない日々が続きます。
渡邊農場では、メロンのハウス作業と水稲播種の準備が並行して進みます。一つひとつの作業に手を抜かない姿勢が、北竜町の農業の礎です。
第6章 いのちの選択:5月・摘果作業
一蔓一果:潔い選択が、甘さを生む
メロンの実がつき始めると、摘果作業が行われます。まだ小さいうちに、形や位置を見極めながら、最も良い実を選び残す作業。農家の長年の経験と目利きが試される瞬間です。ネットがきれいに入るか、糖度が乗るか、すべては、この選択にかかっています。
ひとつの蔓にひとつの実。その潔い選択が、甘く芳醇なひまわりメロンを生み出します。
第7章 歓びの朝:6月・初出荷
渡邊靖範さん・伊藤直人さん、いよいよ出荷の時
2月の播種から約4か月。ついに、その日がやってきます。ビニールハウスの中で大切に育てられたメロンたちが、美しいネットを纏い、甘い香りを放ち始めます。一つひとつ丁寧に収穫し、等階級を選別し、箱詰めされるメロンたち。
渡邊靖範さん、伊藤直人さんをはじめ、生産組合の皆さんの顔に、安堵と喜びの笑顔が浮かびます。北竜町のひまわりメロンが、いよいよ世に旅立つ瞬間です。
第8章 市場に届く想い:6月・初競り@旭一旭川地方卸売市場
競りの声が響く、北竜町ブランドの誇り
旭一旭川地方卸売市場(旭川市)での初競り。市場に並ぶひまわりメロンは、北竜町の農家の皆さんの一年間の想いが詰まった宝もの。市場関係者の方々の手に渡り、やがて食卓へ届きます。
生産者の顔が見える、物語のあるメロン。それが、ひまわりメロンの最大の魅力です。
第9章 土への恩返し:7月・堆肥作り & 散布
来年も、その先も、美味しいメロンを届けるために
7月。一期作目のメロンの出荷が続く一方で、もう次の準備が始まっています。ワラ堆肥を作り、畑に散布する。渡邊さんは、堆肥づくりについても研究を重ねています。良質な堆肥は、土壌の微生物を活性化させ、メロンの根が健やかに育つ環境をつくります。
土づくりは農業の基本。北竜町のメロン栽培が毎年進化し続ける秘密は、この地道な土づくりにあります。
第10章 学びの夏:7月・JAきたそらち抑制メロン講習会
渡邊靖範さんが講師を務める、技術の伝承
JAきたそらちの抑制メロン講習会。渡邊靖範さんが講師を務め、メロン栽培の技術を次の世代へ、そして地域の仲間たちへ伝えていきます。
接木の技術、温度管理のコツ、土づくりのポイント。長年の経験から培われた知恵を惜しみなく分かち合う姿に、北竜町の「おすそ分け」の精神が息づいています。
第11章 秋の実り:9月・二期作目の赤肉メロン
「黄金まくら」秋ならではの濃厚な甘さ
渡邊ファームでは、9月下旬頃の出荷予定の赤肉メロンの栽培を行っています。
赤肉メロンの品種は、平成元年(1989年)より栽培が始まった「黄金まくら」です。芳醇な甘さを持つ赤肉メロン。夏のメロンとは異なる、秋ならではの濃厚な味わいが特徴です。
ハウスの中では、赤肉メロンの鮮やかなオレンジの果肉が、甘い香りとともに成熟していきます。ふっくらと膨らんだ姿は、まさに「黄金のまくら」。
一年に二度の実り。北竜町の農家の皆さんの技術と情熱があってこそ実現する、贅沢な恵みです。
第12章 秋の贈りもの:9月・秋の赤肉メロン出荷
夕陽に映えるハウスと、最後の収穫
9月下旬。秋の赤肉メロンの出荷が始まります。
ハウスの中で丁寧に収穫されたメロンは、選別され、箱詰めされ、出荷されていきます。渡邊さんご家族の笑顔とともに、秋の食卓を彩る赤肉メロンが旅立ちます。
ハウスの向こうに沈む夕陽が、一年間の労をねぎらうかのように、金色に輝いていました。
第13章 大地への感謝:11月・メロンハウス用ワラ堆肥作り
終わりは、始まり
11月。メロンのシーズンが終わり、北竜町に再び雪の季節が近づきます。
メロンハウス用のワラ堆肥作りは、来年への約束。稲わらを集め、発酵させ、良質な堆肥に仕上げていく。この作業が、翌年のメロンの味を決めるといっても過言ではありません。
終わりは、始まり。北竜町の農家の人々は、一年の感謝を大地に返しながら、また新たな一年の物語を紡ぎ始めるのです。
おわりに。一玉に込められた物語
ひまわりメロンを手にしたとき、どうかこの物語を思い出してください。
真冬の2月、雪に埋もれたビニールハウスの中で、30℃に温められた培養土に一粒一粒、種を播く農家の姿。カミソリで繊細な接木をする指先。ハート型の葉に宝石のように並ぶ水滴。膝をついてハウスの中を這うように苗を植える背中。そして、初出荷の朝に浮かべる、安堵と喜びの笑顔。
この一玉には、北竜町の農家の皆さんの一年分の愛情が詰まっています。
北海道の大地と、太陽のようなひまわりの温かい心で育てられた、ひまわりメロン。一口ほおばれば、きっとその甘さの中に、北竜町の「和の心」を感じていただけるはずです。
ひまわりメロン栽培:全記録
- 2月:台木の播種(渡邊靖範さん)
- 2月:接木(渡邊靖範さん)
- 3月:接ぎ木後の苗(渡邊靖範さん)
- 3月:定植(渡邊靖範さん)
- 4月:摘心・剪定 & 水稲播種(渡邊靖範さん)
- 5月:摘果作業(渡邊靖範さん)
- 6月:初出荷(渡邊靖範さん・伊藤直人さん)
- 6月:初競り@旭一旭川地方卸売市場(旭川市)
- 7月:堆肥作り & 散布(渡邊靖範さん)
- 7月:JAきたそらち抑制メロン講習会(渡邊靖範さん)
- 9月:二期作目の赤肉メロン成長中(渡邊靖範さん)
- 9月:秋の赤肉メロン出荷(渡邊靖範さん)
- 11月:メロンハウス用ワラ堆肥作り
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