2026年2月20日(木)
熱気あふれる会場、未来への静かなる胎動
雪解けの季節を待ちわびる2月中旬。北海道の空はまだ冬の色を残していましたが、北竜町公民館のホールは、外の寒さを忘れさせるほどの熱気に包まれていました。2月15日(日)、「北竜町まちづくりフォーラム2026冬」の開催です。
この日、会場に集まったのは、単に話を聞きに来た聴衆ではありません。自分たちの町の未来を、自分たちの手でどう描いていくか。その真剣な眼差しを持った、町民の皆さん、そして北竜町に心を寄せる関係人口の皆さんでした。100名ほどの参加者が集い、町を想う人々の熱狂が会場を満たしました。
定刻の午後1時、司会のまち未来戦略課・川本弥生 課長の進行により、フォーラムは静かに、しかし力強く幕を開けました。
スクリーンに映し出されたのは、私たちが共に歩んできた地方創生の軌跡と、これから目指す未来図。
「次は何を咲かそう」。
その問いかけは、ひまわりの花のことだけではありません。私たち一人ひとりの心の中に眠る「夢」や「希望」という種を、どう咲かせていくかという、町からの温かい招待状のように響きました。
町長の熱い想いと「関係人口1,600人」への挑戦
冒頭、佐々木康宏 町長が登壇しました。
「こんなに多くの皆さんが来ていただいた」と感謝を述べた町長は、前日の歓迎会でのエピソードを披露し、会場を和ませました。
鈴木義和次長と杯を交わした際、「ビール瓶のラベルを正面にして注ぐ」という礼儀作法について触れ、「古き良き心」を受け継ぐことの大切さをユーモアたっぷりに語られました。これは単なる飲み会の話ではありません。「人の心を大切にする」という北竜町の精神が、どんな場面でも息づいていることを象徴していました。
「地方創生というのは、町民の皆さんが一人ひとりの思いを叶えることだと思っています」。
佐々木町長のこの言葉は、行政主導ではなく、住む人こそが主役であるという強い信念を表しています。子どもたちが「僕たちの思いが形になっているのかな」と感じてくれていることへの喜び。それが、町長の原動力です。
続いて登壇したのは、総合政策室・高橋克嘉 総合政策官 。
高橋 総合政策官が語ったのは、北竜町が掲げる「関係人口1,600人」という壮大な、しかし温かい目標でした 。
2050年には人口が779人まで減少すると予測される中で、定住人口だけを奪い合うのではなく、北竜町を愛し、関わってくれる「仲間」を増やすこと。「関係人口とは、町外で暮らしていても、北竜町を応援してくれる『家族』のような存在」そんなメッセージが伝わってきました。
- 私たちが目指す町の姿:仕事や活躍できる場所と機会があり、町の経済が元気に循環し、お互い様のコミュニティが機能している町を目指す
- 協働の体制づくり:町民と関係人口が力を合わせ「アジャイル型」(素早く試行・実行し、変化に対応しながら改善を繰り返し、段階的に進化させていく手法)で進めていく
- 事業の取り組み:「新しい地域公共交通」「子育ちビジョンの策定」「町のロゴマークづくり」「全世代・全員活躍型『生涯活躍のまち』構想」「ものづくりの裾野を増やす(ハンドメイドサークル)「デジタル活用の検討」「社協が担う仕組み『しごとコンビニ2.0』」「農業振興ビジョン」の策定」「わくわく未来」創造館」
- 町民の暮らしの変化:「関係人口1,600人」を合言葉に、どの世代も好きなものにチャレンジできる環境が整っていく未来が広がっていく
- 生涯活躍のまち2.0の活動:「高齢者住宅・団地との一体性強化」「子育ち支援・交流機能」「関係人口・協働しごと機能」「社協ヘルパー人材の活用」「AIを活用した便利な移動」を5柱を目指す
質疑応答では、「1,600人という数字の積み上げ根拠は何か」と町民の鋭い問いかけ。
これに対し高橋政策官は、「単なる数字合わせではなく、それぞれの分野で関わる人を丁寧に積み上げていくことこそが重要だ」と誠実に回答。町民がただ受け身で聞くのではなく、自分事として真剣に数字の意味を問い、行政もそれに向き合う。この信頼関係こそが、北竜町の強さだと感じました。
基調講演「スマート・シュリンク」の衝撃・縮むことは不幸ではない
講師:鈴木義和氏(北海道保健福祉部次長兼子ども施策連携担当局長)
- 1981年 岩手県一関市(旧東山町)生まれ
- 2995年 厚生労働省入省 福祉や雇用に関連する部局はか、大臣官房部局や内閣官房等、省内外の政策の総合調整に関する業務を経験
- 2020年7月 在アメリカ合衆国日本大使館一等書記官
- 2023年8月 厚生労働省雇用保険課調査官
- 2025年7月 北海道保健福祉部次長兼子ども施策連携担当局長・現職
フォーラムの前半、会場の空気がぐっと引き締まり、そして希望に変わったのは、北海道保健福祉部次長の鈴木義和氏による基調講演でした。テーマは「スマート・シュリンク(賢く縮む)」。
「人口減少は避けられない現実です。しかし、それは必ずしも『衰退』を意味しません」、鈴木氏の言葉は、力強く、そして優しく響きました。
2040年、高齢者人口がピークを迎え、現役世代が2割減る「八掛け社会」が到来します。しかし、人口が増えることだけが正解ではない。身の丈に合った資源で、住民一人ひとりの幸福(ウェルビーイング)を高めていくこと。それが「スマート・シュリンク」の本質です。
鈴木氏は、GDPが増えても人口が減っている日本の現状を挙げ、「人口減少が必ずしも個人の豊かさを損なうものではない」と説きました。
そして、非常に興味深いデータとして「自殺率が最も低い町」の研究を紹介されました。その町には5つの要素があったといいます。
- いろんな人がいていい(多様性の受容)
- 人物本位(地位や財産で見ない)
- どうせ自分なんてと言わない(自分でも変えられるという効力感)
- 嫌なことは早く言え(弱さをさらけ出せる関係)
- 緩やかにつながる(がんじがらめではない心地よい距離感)
これはまさに、北竜町がずっと大切にしてきた「和の心」そのものではないでしょうか。困ったときに「助けて」と言える関係。お互いの顔が見える距離感。
鈴木氏は、北竜町の取り組みを「他の自治体のモデルになるレベルをとうに超えている」と高く評価してくださいました。
また、ユーモアを交えたアドバイスも印象的でした。
「過度な期待をしないこと。期待しすぎると失望になる。私の妻との関係もそうです(笑)」。
会場は笑いに包まれましたが、そこには真理がありました。いきなり完璧を目指さず、一つひとつ積み上げていくこと。そして、「自分のことは自分が一番見えない」からこそ、外の視点(関係人口)を取り入れることの重要性を説かれました。
小さくなることは、寂しいことじゃない。それは、お互いの体温を感じられる距離になること。愛の密度が高まることなのです。
リレートーク:北竜町の「今」を創る5つの物語
フォーラムの後半は、実際に現場で汗を流し、笑顔を作っている皆さんによるリレートーク。ここには、理屈ではない「生きた物語」がありました。
司会進行を務めるファシリテーターは、五十嵐智嘉子 氏(一般社団法人 北海道総合研究調査会 理事長)
1. みんなで描いた「次は何を咲かそう」 町のロゴに込めた想い
❂ 発表者:まち未来戦略課・橋本僚太 係長
橋本 係長が紹介したのは、新しい町のロゴとキャッチフレーズ。
「次は何を咲かそう」。
この言葉には、失敗してもいい、また次の種を撒けばいい、という「挑戦」へのエールが込められています。ロゴの12枚の花びらは、1月から12月までの北竜町の色彩を表しています 。
橋本 係長は、「冬は全部白だと思っていたけれど、子どもたちの絵を見て、1月は青、2月は影の色だと気づかされた」と感動を語りました。子どもたちがワークショップで塗った色は、大人の想像を超える鮮やかさでした。特に8月。
「8月はやっぱり黄色!ひまわりの色!」 。
子どもたちの中にも、ひまわりの誇りが根付いているのです。
クラフトマルシェでロゴの色塗りに参加した町民の方からも、「普段来ないようなクリエイターの人たちが北竜町に興味を持ってくれて嬉しかった」という感想が寄せられました。
このロゴは、完成品ではなく、これからみんなで育てていく「種」なのです。
2. 優しさを運ぶAI交通「ひまわる」ピンチをチャンスに変えた絆
❂ 発表者:まち未来戦略課・吉倉裕策 係長
吉倉 係長が報告した「みんなの車・ひまわる」。これは、民間バス路線の撤退という地域存続の危機を、AI技術と「助け合い」でチャンスに変えます。
これまでの定時定路線のバスではなく、予約に応じて家の前まで来てくれるデマンド交通。AIが最適なルートを計算し、効率よく運行します。
「家の前から乗れるなんて、夢のよう」。
特に感動的なのは、これが単なる自動運転や冷たいシステムではないこと。町民の協力ドライバーが運転を担い、隙間時間で支え合っているのです。
AIは、人と人を切り離すのではなく、心を通わせるための「触媒」として機能している。北竜町らしい、テクノロジーの使い方がそこにありました。
3.「お互い様」で働く「仕事コンビニ2.0」世代を超えた労働の喜び
❂ 発表者:北竜町社会福祉協議会:事務局・高畑枝梨乃 主査、介護事業・三浦睦美 係長、垣野まゆ 主任
社会福祉協議会の職員の方々が紹介した「しごとコンビニ2.0」。
「がっつり働くのは無理でも、ちょっとだけなら役に立ちたい」。
そんな高校生から80代までの想いを、「業務委託」という形でつなぐ仕組みです。
仕事内容は、「レストラン食器洗浄」「温泉受付」「期日前投票事務」「投入・投函」「パソコンExcel入力」など。
現在、登録者は20名。そのうち45%が10代の若者だという事実は驚きです。選挙の期日前投票の事務や、除雪作業など、地域の困りごとを解決しています。
参加した高校生たちの生の声
- 地元で働けて、お小遣いも稼げていい」(A君)
- 優しく教えてくれたので安心した。稼いだお金でコスメを買いたい(Bさん)
- 役場の人の苦労がわかった(Cさん)
高校生にとって、これが初めての社会経験となり、地域を知るきっかけになっているのです。得意なことが違うからこそ、支え合える。凸凹(デコボコ)があるからこそ、カチッとかみ合う。
労働力不足を嘆く前に、「眠っている優しさ」を掘り起こす。それが北竜町の底力です。
4. 世代を超える居場所「みんなの広場 おむすび」誰もが主役になれる場所
❂ 発表者:北竜町社会福祉協議会:村井恵 支援体制係長、阿部匡美 主任、川本瞳 様
報告したのは、「おむすび」という名前に込められた、人と人を「結ぶ」温かい居場所。
月曜日の午後、老人福祉センターの和室や体育館を開放し、子どもから高齢者までが入り混じる「カオス(混沌)」で「温かい」空間を作りました。
最初は手探りでしたが、モルック大会、縁日、石猫アート教室、クリスマスパーティなど、多彩なイベントを通じて、参加者は延べ450人を超えました。
「イベントをするから集まるんじゃない。集まった人たちがつながって、新しい楽しさが生まれるんです」。「昔遊び」を教わるのではなく、一緒に「今」を楽しむ対等な関係。
竹林さんご夫婦からの「知らない大人と子どもが触れ合える貴重な機会」という感想も印象的でした。
特別なイベントがなくても、ただそこに「居ていい」という肯定感。それが、孤立を防ぎ、心の健康を守る最強のセーフティネットになっています。
5. 地域と共に学び、育つ場
❂ 発表者:北竜町教育委員会・岸直樹 係長(社会教育主事)
岸さんが紹介したのは、中学生を中心とした「北竜未来ユース」と「けん玉クラブ」。
中学生が高齢者にスマホを教えたり、天売島で研修を行ったり。「自分で考えて動けるように育てるのではなく、自分が育つ仕掛けを作る」。
そして、けん玉クラブのインスタグラムのフォロワー数は、なんと北竜町の人口よりも多いそうです!。失敗しても、「頑張ってるね」と認めてもらえる環境。それが子どもたちの自己肯定感を育んでいます。
最後に岸主事が主張することは「地方創生に必要な視点」3つ!
「多世代が関われること」「自分事として地域を考えること」「挑戦と成功体験ができること」!!!
6. 「子育ち」の町北竜・先生も変わる、町も変わる
発表者:北竜町教育委員会・田中佳樹 教育長
田中教育長のお話は、教育の枠を超えた「人間讃歌」でした。
時間は押していましたが、「昨日16分かかった話を10分に縮めました」と笑いを誘いつつ、熱い想いを語られました。
テーマは「子育て」から「子育ち」へ。
- 一文字の違いですが、そこには天と地ほどの意識の転換があります
- 大人が主語の「育てる(教える)」から、子どもが主語の「育つ(学ぶ)」へ
- 「Help(手助け)」ではなく「Support(自立支援)」
- 失敗を「ダメなこと」とせず、「学びの種」として見守る
先生方も30時間の研修を受け、マインドセットを変えようと必死に努力されています。
さらに、令和9年度からは「教育課程特例校」に挑戦し、「北竜学」という独自の教科を作る計画も発表されました。「英会話科」で英語を楽しむ時間を増やし、「ふるさと北竜科」で地域を愛する心を育み、「チャレンジ科」でICTを活用した個別最適化学習を進めていきます」と熱く語る田中教育長でした。
北竜町の子どもたちは、この豊かな土壌で、自分自身の根を張り、自分だけの色で花を咲かせていくことでしょう。
世界へ届けたい、この「温かい縮小」の物語
フォーラムの最後は、北竜町議会・中村尚一 議長の挨拶で締めくくられました。
議長は、近隣市町村からの参加者に感謝を述べつつ、今回の衆議院選挙での北竜町の投票率が約80%と非常に高かったことに触れ、「町民の意識の高さ」を誇らしげに語りました。
そして、駅舎マニアが集まる「旧碧水駅」の話など、外からの視点が町の価値を再発見させてくれることへの期待も込められました。
全体を通して感じたのは、北竜町には「悲壮感」が微塵もないということでした。人口が減ることは、確かに課題です。しかし、それを嘆くのではなく、「じゃあ、どうすればもっと楽しくなる?」「どうすればもっと仲良くなれる?」と、知恵とユーモアで乗り越えようとする。
鈴木氏が語ったように、「スマート・シュリンク」とは、ただ縮むことではありません。無駄なものを削ぎ落とし、本当に大切な「人と人とのつながり」の純度を高めていくプロセスなのです。
AI交通も、関係人口も、教育改革も。
すべての中心にあるのは、効率ではなく「人への思いやり」です。
「あなたがいてくれて、よかった」。
「あなたの出番が、ここにあるよ」。
そう伝え合う「和の心」が、テクノロジーや制度に血を通わせています。
世界中が分断や孤独に苦しむ今、北竜町が示した「スマート・シュリンク」の姿は、希望そのものです。
小さくなることで、心の距離は近くなる。
不便になることで、助け合いが生まれる。
この「逆転の発想」こそが、これからの世界を平和にする鍵ではないでしょうか。
北竜町の挑戦は、まだ始まったばかりです。次は、あなたがこの「和の輪」に加わる番かもしれません。
次は何を咲かそう。その答えを、北竜町で一緒に見つけませんか。
「信頼」「思いやり」「助け合い」の和の心が共鳴し広がっていく「北竜町の地域創生2.0」に、限りない愛と感謝と祈りを込めて。。。
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