2019年10月31日(木)
10月22日(火)16:30〜、世界的な建築家・隈研吾(くま けんご)氏と立正大学・鈴木輝隆(すずき てるたか)特任教授による北竜町まちづくり講演会「新国立競技場から北竜町へ」が、北竜町公民館大ホールにて開催されました。
会場には、町内外から約200人の方々が詰めかけ、隈研吾氏の建築に対する想い、北竜町新保育園のデザイン、ひまわりの里の全体配置計画(案)、さらに、新国立競技場をはじめ、これまでに携わってきた建築物などについて、隈氏の貴重なお話の数々に熱心に耳を傾けました。
▶ 北竜町ひまわり観光大使・ひまわりの里基本計画策定委員会 委員隈研吾氏、鈴木輝隆氏は、両者ともに、2017年より北竜町ひまわり観光大使を就任され、現在北竜町で進行中の「ひまわりの里基本計画策定委員会」の委員も務めていらっしゃいます。 ▶ 隈研吾 氏
1954年、神奈川県生まれ。1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年に隈研吾都市設計事務所設立。2001年から慶應義塾大学教授。2009年から東京大学教授。 ▶ 鈴木輝隆 氏
1949年愛知県名古屋市生まれ。北海道大学卒業後、神戸市役所、山梨県庁、総合研究開発機構を経て、2000年から江戸川大学・特任教授。現在、地域創生プロデューサー・立正大学経済学部特任教授。
▶ 司会進行:北竜町役場産業課・細川直洋 課長
▶ 主催者代表ご挨拶:北竜町・佐野豊 町長
「今日は、北竜町まちづくり講演会ということでご挨拶させていただきます。町内はもとより、札幌市・旭川市等、近隣からの沢山の方々に参加いただいております。こうして盛大に講演会が開催されることは、私達にとっても本当に嬉しい限りです。
▶ 隈研吾 氏と鈴木輝隆 氏の対談▶ 鈴木輝隆 氏
「先程ご紹介がありましたように、二十数年前に隈さんと北竜町を訪れた日の事を懐かしく思い出していました。その後、ご縁があり、町長さん、議長さんなど二十数年来の仲間ということで、今関わりのある北竜町の保育園やひまわりの里などについて、隈さんの力をお借りしながら進めています。 ▶ 隈研吾 氏
「これまでどんなことをやってきたかをご紹介します。最近は、地域の素材を生かした、地域らしい建物を作って、地域を盛り上げていくことに大変興味があります。
▶ 1. 那珂川町馬頭広重美術館(栃木県那珂川町)2000年7月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>
浮世絵作家・歌川広重の作品を中心に展示している美術館。地元産の八溝杉の格子で覆われた建物。この建物は、アメリカCNNのチーフが取材に訪れるなど、私が海外で仕事をするきっかけになった建物です。
▶ 2. 竹屋(Great (Bamboo) Wall・中国)2002年4月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>中国万里長城の麓に建つ「Commune by the Great Wall」。
2002年、中国にて、万里の長城のすぐ脇に、中国製の竹を使い、山の緑の環境に合わせて造った建物です。このヴィラは、中国の人々、特に若者の支持を得ました。
北京オリンピック(2008年)の総合プロデューサー・張芸謀(チャン・イーモウ)氏が、この建物を使って、オリンピックの開会式に流す映像に使いたいといい話題になりました。(参照論文はこちら >>)
▶ 3. GC プロソミュージアム・リサーチセンター(愛知県春日井市)2010年5月・<隈研吾建築都市設計事務所 HP >>愛知県春日井市鳥居の博物館・研究所。飛騨高山に伝わる木製の玩具「鴨」のシステムを発展させ、木材を釘の接着剤も用いずに組み合わせた木造建築。
2010年、飛騨高山の技術を用いた3階建ての建物。実験室で強度を試験しながら作り上げました。木材の骨組みだけで作る建物。日本の職人の高い技術を施した建築になっています。
▶ 4. 梼原 木橋ミュージアム(YUSUHARA Wooden Bridge Museum・高知県梼原町)2010年9月・<隈研吾建築都市設計事務所 HP >>
町の面積の91%を森林が占め、雄大な四国カルストに抱かれた自然豊かな山間の小さな町。梼原町(ゆすはらちょう)は山奥なので行きにくい場所ですが、外国人にも人気の町になっています。
「雲の上のホテル」と「雲の上の温泉」を結ぶ連絡通路兼ミュージアム。梼原産杉を使用した刎橋構造でつくられています。
▶ 5. まちの駅「ゆすはら」・高知県梼原町)2010年7月・<隈研吾建築都市設計事務所 HP >>雲の上のホテル別館 マルシェ・ユスハラ。ホテルのロビーがマーケットになっていて、地元野菜が並んでいます
雲の上のホテル 別館 「マルシェ ユスハラ」は、茅葺きで作りました。現在茅葺きを施す職人さんがいないので、経験のある職人さんに現場復帰してもらい作ったものです。
梼原町の特産物販売とホテルが融合したまちの駅「ゆすはら」は梼原町の顔。まちの中の「森」というコンセプトを映すように施設内には杉丸太の柱を林立させ、森の中を巡るような内部空間を作り出しています。
▶ 6. スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店(福岡県太宰府市)2011年11月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>X型の木組みは、杉材を約2,000本使用し、筋交いとして建物を支えています。太宰府という歴史ある特別な場所に、木造現代アートがクリエートした独特な空間が広がっています。
▶ 7. スターバックス リザーブ ロースタリー東京(東京都目黒区)2019年2月
外装の設計を隈研吾氏が手掛け、内装は、リズ・ ミュラー(Liz Muller)氏による「スターバックスリザーブロースタリー」。リズ氏は、チーフデザインオフィサーで、ロースタリー5店舗すべての主任デザイナー。
▶ 8. サニーヒルズジャパン(Sunny Hills Japan・東京都港区 表参道)2013年12月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>サニーヒルズは、台湾のパイナップルケーキ専門店。
「SunnyHills at Minami-Aoyama(南青山店)」は、ヒノキの角材に覆われた建物。三階建てで、地獄組みと呼ばれる伝統的な組木格子が施されています。
▶ 9. 浅草文化観光センター(Asakusa Culture Tourist Information Center・東京都台東区)2012年3月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>浅草雷門前に位置する建物で、観光案内所などの複合施設。7つの家が重なったようなデザインで、ヒノキを使い、遠くに見える五重の塔の現代版のようなイメージでつくりました。
中も木材をふんだんに使い、この場所の風情にあったものができ、沢山の外国人が集まってくるような場所になりました。屋内から、浅草寺を眺めることができるようになっています。
▶ 10. アオーレ長岡(Nagaoka city hall Aore・新潟県長岡市)2012年3月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>
長岡城の市松模様をモチーフとして、地元産杉材を使ったすのこ状のパネルを外壁に張り付けた構造。新潟県の長岡市役所、アリーナ、ナカドマ(市民交流ホール)が一体となった市民交流の拠点となっています。
屋根に可動式の太陽光発電パネルが設置されています。
アリーナ内には卓球台が設置され、子どもたちが卓球で体を動かし、疲れたら本を読んだりしています。
市民の人々の活動の場である市民の活動室は、ネット予約で使用可能になっています。
ガラス張りの議会。議会以外の時は、ミュージック・ホールや結婚式場として様々なイベントが開催されています。
材料は、地元の小国和紙を使って壁を作っています。第一応接室の壁と天井には地元名産小国和紙を使用。壁面装飾には砂が練り込んで焼き上げた陶造形が施されています。
▶ 11. Birch Moss Chapel(長野県軽井沢)2015年5月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>長野県軽井沢町の白樺の森の中の小さなチャペル。鉄のプレートを挟んで、屋根やベンチを透明なガラスとアクリルで造り、床には苔を敷き込んで、建物と自然とが一体化したような空間です。
▶ 12. La Kagu(ラカグ・東京都新宿区神楽坂)2014年9月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>
東京・神楽坂の商業施設「ラカグ」は、新潮社の倉庫をリノベーションした2階建ての建物。50年前に建てられた倉庫の面影を残しつつ、倉庫1階床と交差点とが繋がる木製の大階段を設置。
倉庫だった部分は、カフェやショップが設置。
▶ 13. COEDA HOUSE(こえだはうす・静岡県熱海市)・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>海と空を一望する絶景カフェ・熱海「COEDA HOUSE」。アカオハーブ & ローズガーデンの高台にある、四方ガラス張りのカフェ。小さな枝を積み重ね、小枝が集まって大きな樹木になりそうなデザインです。
▶ 14. 富岡市役所(Tomioka City Hall・群馬県富岡市)2018年3月・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>群馬県富岡市庁舎。世界遺産である富岡製糸場の街にふさわしい市庁舎。「小さな屋根の集まり」としての分棟型建築。市役所を観光の通り道にしようというコンセプトから発想。
最初庁舎の前は、利便性を図って、駐車場にしようという意見がありました。しかし敢えて、人々が集う、コニュニケーションスペースとして芝生にしました。すると、屋台など出店され、予想外に賑わって市民の憩いの場になっています。
壁面には、「きびそ」と呼ばれる生糸を用いた壁紙を使っています。
▶ 15. 日本平夢テラス(Nihondaira Yume Terrace・静岡県静岡市)2018年10月・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>富士山を望む日本平山頂に立つ「日本平夢テラス」は、展望施設と1周約200mの空中回廊、360度の「パノラマ展望」を備える建物。
奈良 法隆寺「夢殿」にヒントを得た、八角形のジオメトリーの造りとなっています。木材は地元静岡県産ヒノキを使用。
▶ 16. 中国美術学院民芸博物館(Museum of the China Academy of Art・中国抗州)2015年11月・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>中国美術学院のキャンパス内に建つクラフト・ミュージアム。
古い瓦をリサクルして、外壁を覆う瓦スクリーンが、太陽光をコントロールして、自然に溶け込むような設計になっています。
▶ 17. 北京 前門(Beijing Qianmen・中国 北京)2016年11月・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>
北京旧市街の中心、前門東区の再生プロジェクト。今中国では、歴史の流れが大きく変わってきて、環境の歴史保存が大きなテーマになっています。
中は木材が使われています。
▶ 18. ブサンソン芸術文化センター(Besancon City of Arts and Culture・フランス ブサンソン)2012年12月・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>フランスのブザンソンに建つ、音楽ホール・ 現代美術館・コンセルバトワール (音楽学校) からなる複合的文化施設。ドゥ川の川岸に面した建物で、屋根には、植栽・ 木・ 石・ガラス・太陽光パネルがモザイク状に配置。
川沿いの散歩道になっています。全体をひとつの屋根で覆い、屋上緑化し、構造には鉄骨の柱と木の梁を組み合わさっています。虫や鳥が生育できる場所「ビオトープ(生物空間)」が、建物の脇に存在するデザインで構築しました。
音楽ホールでは、世界的指揮者である小澤 征爾氏が指揮し、ブザンソン指揮者コンクールで優勝されました。
▶ 19. Saint-Denis Pleyel Emblematic Train Station(フランス パリ)建設中・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>
サンドニ平野にあるパリメトロ13番線の駅「サンドニ・プレイエル駅(Saint-Denis Pleyel Emblematic Train Station )。
完成まで、あと3年を予定しています。
▶ 20. ポートランド日本庭園 カルチュラル・ヴィレッジ(Portland Japanese Garden・米国 ポートランド)・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>
オレゴン州ポートランドの日本庭園(ジャパニーズガーデン)。日本をイメージした3棟の建築物にリニューアルオープン(日本庭園は、1967年開園)。
▶ 21. V & A Dundee(英国 スコットランド)2018年9月・隈研吾建築都市設計事務所 HP>>
北の厳しい自然の中に位置するスコットランドの都市・ダンディのウォーターフロントにおける美術館・カフェ。以前は、川沿いに倉庫が並び、市民が近づけない場所でした。そこで、市民が歩ける空間へと導くようにしました。
内部は、木材をふんだんに使い、「市民の居間・リビングルーム」をテーマとし、カフェ・レストラン・売店等の楽しい空間が広がります。市民に大変喜ばれ、パンフレットやトートバックにまでアピールされました。
▶ 22. The Darling Exchange(オーストラリア シドニー)2019年竣工予定・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>
シドニーのダーリンハーバーエリア開発計画の一部で、まわりは高層タワーマンションに囲まれた場所に立地する。1階がマーケット、2階が図書館、3階が保育園、4階がレストランや会議室となる複合施設。
▶ 23. The Odunpazan Modem Art Museum(エスキシェヒルの現代美術館・トルコ)2019年木材での建築を希望されたのですが、トルコでは木が取れなかったので、ロシアから輸入しました。大きな異なる箱を積み上げて中央に集める構成で、ストリートスケープの連続性を保つような設計になっています。
▶ 24. 新国立競技場整備事業(New National Stadium Devlopment Project・東京都新宿区)2019年11月完成予定・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>
「杜のスタジアム」と題して木材を取り入れた構造。全国47都道府県の木を使い、外壁に杉、屋根を支える構造に唐松(北海道)を使用(木材と鉄骨のハイブリッド構造の屋根)しています。
椅子の色をアースカラー(白、黄緑、グレー、深緑、濃茶の5色)とし、森の中の木の枝や落ち葉をイメージしています。
夏の暑い時でも自然通風で、風が全体に回るようになっています。スタンド上部には「気流創出ファン」が設けられ、観客の体感温度を低減。外部の入場ゲート付近には「ミスト冷却装置」が設置され、周囲の温度を下げる効果をもたらします。
リサイクル素材も活用しています。
周辺には木々が茂り、小川が流れています。太陽光発電や雨水・井戸水の有効利用など自然エネルギーを積極的に利用しています。建材一体型シースルー薄膜太陽電池を大屋根先端のガラスに設置しています。
▶ 25. 品川新駅(JR 高輪ゲートウェイ駅)(JR Takanawa Gateway Station)2015年〜2020年完成予定・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>2020年完成予定。鉄骨と唐松の集成材が組み合わされたフレームに、半透明のテフロン膜を貼ることによって、日本の障子のように、光が差し込み、日本の和を感じるようなデザインになっています。
▶ 26. つみき(Tumiki)
森林保全団体「more trees」の代表を務める音楽家・坂本龍一氏からの依頼で、新しいスタイルの日本の積み木をデザイン。杉材をV字に組み合わせた「つみき」。
様々な組み合わせができるつみき。今年は、このつみきでクリスマスツリーをつくる事を予定しています。
▶ 27. 住箱(Jyubako)設計:2016年6月完成・隈研吾建築都市設計事務所 HP >>木でできたトレーラーハウス。アウトドアーメーカー「スノーピーク」との共同開発です。
普通のトレーラーハウスと同じ大きさですが、木でつくると広く感じる空間が広がります。
空き地で1年間レストランを開店しました。
レストラン営業の許可をとって1年間のみ実施。こんな住まい方もあるのではないかと実感しました。
▶ 立正大学・鈴木輝隆 特任教授
30年来のお付き合いをしている隈さんは、自然体でありながら、普通ではないものをもっている方です。
▶ 新保育園の構想について▶ 周囲にマッチする保育園複雑に絡み合う環境の中で、この保育園があまり大きく感じないようなサイズにしました。
▶ひまわりの花びらが散らばっているようなデザイン保育園の真ん中の部分がメインとなり、天井が高くなっています。その高い部分を囲むように、低い小さな部屋が、ひまわりの花びらが散らばっているようなデザインを考えました。
▶ 北竜町のひまわりの花びらで染めた布を垂らした照明
可愛らしさや子供の視点に合った建物を考えました。中央の一番天井の高い部屋は、子供たちが一番楽しいと感じる空間になっています。
▶ ひまわりの里の全体配置計画(案)▶ ひまわりの里の圧倒的なランドスケープ
北竜町に20年前来た時「ランドスケープ」の素晴らしさを実感しました。この「ランドスケープ」の力はもの凄くて、建築で対抗しようとしても無理。地形の美しさは圧倒的です。 ▶ 「全体の関連性」と「額縁効果」
1.テーマは「全体の関連性」
▶ 展望台そのものが北竜町を代表するシンボルマーク
3.魅力的な展望台
▶ 立正大学・鈴木輝隆 特任教授「隈さんの仕事や、建築の魅力、世界が今どんな建築を望んでいるのか、人々がワクワクドキドキして感動するような構想について、隈さんより、貴重な沢山のお話をしていただきました。
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▶ 記念撮影
▶ 写真(98枚)はこちら >>▶ 隈研吾氏・参考サイト
・<梼原町ホームページ> 梼原町 ✕ 隈研吾建築物 ▶ 北竜町ポータル・関連記事・隈研吾氏設計「北竜町立やわら保育園」の建設工事検定 実施、2020年4月開園(2019年12月27日)
◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子 |