今年2015年の3月末まで、北竜町の保健師として健康増進に関する仕事をしてきましたが、めでたく(?)退職。
北竜ポータル管理者の寺内ご夫妻からお誘いをいただき、今までの経験を活かして健康に関するコラムを書かせていただくことに
なりました。これからは、北竜町に住む「由美子さん」が日々のよもやま話から健康についての考えや情報を皆様にお伝えしたいと
思います。
いやぁ、そんなこと言っていつまで続けられるか不安いっぱいですが、気負わずやってみようと思ので。
暇なとき、ちょっと読んでやって下さいませ。
ジッタン先生のこと【No.12】
2016年9月
短期間に台風が連続してやってきました。今回の台風10号では大変な被害が出てしまいました。被災された方々へ心からお見舞い申し上げます。
北竜町も決して他人ごとではありません。
どんなに開発が進み文明が発達しても、自然の力には贖えないという謙虚な気持ちと、少しでもライフラインを守るために、自分の町の暮らしている地区の防災について考える機会です。
我が家も避難時持ち出し物品の確認をしなければいけないなと思っているところです。
そうそう、北竜町にも「防災計画」やハザードマップ等の災害対策があるのです。
役場職員の皆さんにとっては、身近にあるものですが、住民である私たちも一度確認しておく必要がありますね。
さて、今回のお話しへ。
「ジッタン先生」は、小児科のお医者さん。私の子供のころのかかりつけの医師でした。
私は小柄、小食、すぐ病気になる子どもで、共稼ぎの両親には本当に悩みの種でした。
そして大の病院嫌いで、注射となると看護師さん4人がかりで取り押さえられなければならないほどのモンスターでした(苦笑)。ギャーギャー泣き叫ぶ私を苦笑しながら「大丈夫、すぐ終わるよー」と見守っていた先生を思い出します。
こんなことがありました。
小学2年生の頃、私は学校でいじめられるようになりました。
朝になると「おなかが痛い」「頭が痛い」状態になりました。学校を数日休みましたが、ついに母は病院で仮病であることを明らかにしようと決断し、ジッタン先生のところへ私を連れて行きました。
いつものように先生の前に座って、「頭と、お腹と、足も手も痛いの」と、言ったのでした。
すると、先生は母とまったく違う事を言いました。
「学校でなにかいやな事あったのかな?」
私がどういう風に話したのかは覚えていませんが、ペラペラ話すこと「立て板に水」のごとくだったと後で母が言っていました。
私の話を聞き、動揺した母が「なんでもっと早くお母さんに言わないの!」と、声を荒げたそうです。
すると先生は「今、やっと話せたんだからこれでいいんだよ。そういうことだよお母さん」。
と言ったそうです。
母はジッタン先生のアドバイスで、担任の先生と相談して対応することができたそうです。
それでなければ、どう対処したらよいか判らなかったと話していました。
少し大きくなってから、泣かないで注射できるようになった時、先生が褒めてくれたことを思い出します。「粉薬は嫌いだから、錠剤にしてほしい」というわがまま(笑)にも対応してくれましたっけ。
大人になってからは、仕事でジッタン先生と一緒でした。
先生は、北竜町に乳幼児健診のためにやってきました。
年に4回の健診。乳児から3歳児までいろいろな子どもがいますが、診察の時に発達に合わせて様々なアドバイスをしてくれます。先生お気に入りの伸長20センチほどのキューピーちゃんを使って、子どもの注意を惹き、様々な反射・反応から発達を確認します。
「このキューピー、なかなか手に入らないんだよ。
子供の注意を惹くのに大きさがちょうどいいんだよね~」。
健診が終わり、送りの車内によく置き忘れていましたっけ・・・。
こんなことがありました。
下の子の健診のために2歳のお兄ちゃんを連れてきたお母さん。
ちょろちょろ動き回るお兄ちゃんに「だめよ、だめだめ(古い?)」連発。
私にも心当たりあります。
2歳児は「ギャングエイジ」といわれ、親は振り回されて疲労困憊する時期なのです。
大人が想像できないようないたずらしたり、気が付いたらお友達を泣かせていたり、いなくなっていたり・・・。
一日中怒ってばかり。怒っているのでものすごく疲れる。
「ああ、今日はダメダメしか言ってない・・・」そんな日々です。
ジッタン先生は、「怒るんでなくて叱るんだよ」と、言っていました。
怒るというのは、自分の感情を相手にぶつける。
叱るというのは、相手のことを考え呼びかけることだと。
ちいさな子どもはお母さんの怒りを受け止めるほどの度量はまだない。
でも、自分のことを思って話してくれていることは理解できるのだと。
小さな子どもを相手にしていると、つい忘れることもありましたが、思春期の子どもと関わる今になって、ジッタン先生のこの話が本当に身に沁みます。
思春期ともなると、成長するにつれ感情的になっている親と冷静な親との見極めは早いです。
でも成熟した大人ではないので、前者だと激しく拒絶されます(笑)。
ある日、ジッタン先生は長年続けてきた病院を閉院することにしました。
最後の北竜町での乳幼児健診もいつものようにキューピーちゃんと終えて、
「子どもたちのことで困ったことがあったら、いつでも相談に来なさいね」と、
私たちに言ってくれました。どんなに心強かったことか!
先日、ジッタン先生は天国に逝かれたと聞きました。
きっと今もこの地域の子供たちを見守ってくれていることでしょう。
ところで、何故「ジッタン先生」なのかといいますと、私の息子がそう呼んでいたのです。
私がお世話になっていた頃は、決してジッタン先生ではありませんでしたよ。
先生、あしからず。
そして、ありがとうございました。
デザイン・作:高橋由美子さん
|
|