高田幸喜さんの自然栽培米(北竜町)2013

2013/10/14 14:42 に 寺内昇 が投稿   [ 2013/10/14 16:49 に更新しました ]
2013年10月1 5日(火)

北竜町では、無農薬・無肥料でお米の栽培に挑んでいらっしゃる農家があります。高田幸喜さん(38歳)の自然栽培米です。今年2013年5月の田植えから10月の収穫までを取材させていただきました。

自然栽培とは、農薬や肥料を一切使わず、自然の生態系を生かして、「太陽」「水」「土」の本来の力が発揮できるように育てていく栽培方法。現在、自然栽培には、有機JAS規格のような規格はありません。

作物は、肥料などの養分が与えられなくても、様々な生物が共存共栄してバランスを保ちながら育っていきます。
ゆっくりと自然本来の姿で成長していくので、最初は小さくて弱く、完全に成熟する割合も低く、収穫も大幅に減少します。

しかし、自然栽培を続けていくと、作物は、病害虫に対する免疫力がついてきます。そして、土に過剰養分がないので、作物には、害虫がつきにくくなり、害虫被害が少なくなってくると言われています。


自然米の田植え
自然栽培米の田植え(撮影:2013年6月7日)


高田幸喜さんが、そんな自然栽培米の取り組むきっかけとなったのは、奥村大亮さん(有限会社 MOKU 代表)のご紹介による『奇跡のりんご』の著者・木村秋則さんとの出会いでした。
奥村大亮さんとは、幸喜さんのお父様である高田幸男さん(黒千石事業協同組合 理事長)が、「黒千石大豆」のお仕事のご縁でつながりがあったそうです。

5年前、お父様(高田幸男さん)の65歳の定年を機に、すべての水田と畑を引き継ぐこととなった幸喜さん。稲作、黒千石、なたね、大豆、そば、麦など80町(ha)以上の圃場で、幅広く農業を行っていらっしゃいます。
そうした中、木村秋則さんの「自然栽培米」のご指導を受けられたのが2010年。自然米の栽培を始めて、今年で4年目を迎えます。

木村秋則さんのご指導の中で、
「田んぼの草と仲良くなれ。
草とは闘わない!全部草をとるのは無理!
身体を壊してまでやるのは、意味のないことだから」

という木村さんから戴いたお言葉。

この木村さんの言葉を受け取って 、「気が楽になりました」と幸喜さん。


田植え〜夏
自然栽培米の苗は背が低いものの根は長い。稲穂の色は、科学肥料を使った稲より薄く、畦の雑草と似た色。
 田植から夏にかけて(撮影:2013年6月7日〜8月29日)


自然栽培米の最大の特徴は、無農薬、無化学肥料、無肥料で栽培すること。そのために一番大変な作業が、8月に行う草取りです。

真夏の太陽がジリジリと照り返す真っ只中、続けられる草取りは、チェーン除草機を使用。トラクターに取り付けたチェーン機具を引く作業です(チェーンはタイヤチェーンを利用)。
草(ヒエ、コナギなど)はチェーンに絡まって根っこから引き抜かれていきます。稲苗も倒されますが、2~3日で立ち上がり元に戻っていくというのです。それはまさに「踏まれたことで強くなる」という、力強い生命力を稲苗が宿している証。

現在、自然栽培は、農業経験2年目を迎えた佐々木進一さん(27歳)と幸喜さん二人で行っています。炎天下、皮膚が真っ赤に日焼けし、意識が朦朧として倒れそうになっても頑張り続ける新米のシンちゃん。

「苦しいからこそ、楽しんでやればいいんだよ。この後のビールがうまいぞぉー!」と、苦しそうなシンちゃんに明るく声をかけるコウキさん。

こんな二人の頑張りをじっと見守り続ける稲さんたち。その二人の努力にしっかりと応えるかのように立ち上がり、力強く成長していく稲さんたちです。ガンバレ~コウキくん、ガンバレ~シンちゃん、ボクたちもがんばるぞぉ~~~!

そして、害虫対策として、油を田んぼに流す方法があります。
キャップ2杯ほどの天ぷら油を流すことによって、水面に張った油の膜で、泥おい虫の幼虫が水面に出られなくなるという方法です。今年は、幸運にも虫の発生が少なかったので、この作業は省かれたとのこと。
お天道様も見方してくださったのですね。よかったぁ~ ♬ ありがとうございます。


草取り  チェーンに絡みついた草を取る  場所によっては手で除草 
左:チェーンを引いて除草  中:チェーンに絡みついた草を取る  右:残った部分を手で除草


9月の激しい雨にうたれながらも、ふっくらたわわに、見事な黄金の実をつけた稲穂たち。


黄金色の田んぼ  トンボが一休み  青々と茂る畦の草 
左:黄金色の自然栽培米 中:羽を休めるトンボ 右:青々と茂る畦の草
(撮影:2013年10月2日)


そして10月に入り、いよいよ収穫の時、逞しく成長した稲たちの旅立ちの時です。
雨が多かった秋、ぬかるみが残る圃場で、慎重に慎重にコンバインを進めていきます。立派に成熟した稲たちを少しでも傷つけぬよう大切に大切に刈り取る幸喜さんと進一さん。
二人の運転は真剣そのもの。一瞬たりとも気を抜くことはできません。1町(1ha = 100a)程の田んぼの稲刈りは、1時間後に見事に無事完了。

まだまだ稲の収量は少ないけれども、去年の反収3俵(※)より今年はずっと良さそう。そして、今年よりも来年。年を重ねるごとに少しづつ少しづつ増加し、ゆっくりとゆっくりと偉大なる成長を遂げていくことでしょう(※ 10 a 辺りの収量、玄米1俵=60kg)。


収穫
収穫(撮影:2013年8月29日〜10月7日)


自然栽培という偉大なるチャレンジは、始まったばかり。
チャレンジは、失敗と成功、苦しみと喜びの繰り返し。

そして常に一歩前へ。
困難に出会った時こそ、
乗り越えた先の喜びを心に抱いて前進!


命を循環させ、共生共存していくすべての生き物、

「土」と「太陽」と「水」の偉大なる大自然の恵みに、

そして、いかなることにも立ち向かっていく若者たちのチャレンジ魂に

大いなる尊敬と感謝と祈りをこめて。。。


コンバインによる収穫    自然米の栽培者の皆さん
左:息の合った収穫の様子
右:高田幸喜さん(左)、佐々木進一さん(中)、お母さんの高田教子さん(右)
(撮影:2013年10月7日)


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・コウキさんの栽培した自然米を食べることのできるお店
      Cafe HIH"INO 日びの(ひびの)
・コウキさんの栽培した自然米「北竜町のコウキなお米 玄米」を売っているお店
      米屋 Bey-Bey 米・米(べいべい)
・お店はいずれも、白いおしゃれな2階建ての「AGT(アジト)」
  北海道札幌市中央区南16条西4丁目1-10
  Tel:011-522-2714

町歩(Wikipedia)(1町≒1ha=100a)


◇ 撮影・編集=寺内昇  取材・文=寺内郁子