2026年2月18日(水)
第25回元気村・夢の農村塾 総会 2026・未来へ蒔く、感動の種「新たな挑戦」と変わらぬ「和の心」
暦の上では春とはいえ、北海道・北空知の大地は、まだ純白の雪に深く閉ざされています。吐く息も凍るような2月13日の午後。しかし、深川市にある「都市農村交流センター・アグリ工房まあぶ」の一室だけは、まるで真夏のような熱気と、陽だまりのような温かさに包まれていました。
ここには、北空知1市4町(深川市・妹背牛町・秩父別・北竜町・沼田町)から、ある共通の「志」を持った人々が集っています。それは、都会の子どもたちに「農」の営みと「食」の命、そして「故郷」の温もりを伝えるプロフェッショナル集団、「元気村・夢の農村塾」の会員の皆様です。
設立から早24年。四半世紀という大きな節目となる「第25回総会」。会場の扉を開けると、そこには久しぶりの再会を喜び合う、弾けるような笑顔と活気ある会話が溢れていました。
第1章:1万8千人の心に宿る「農村の記憶」
定刻。司会の落ち着いた声と共に、第25回総会が幕を開けました。最初にマイクを握ったのは、女性ならではのきめ細やかな視点で組織を牽引してきた、塾長の村上はるみさんです。
「足元の悪い中、今日はお集まりいただき本当にありがとうございます」。
その第一声には、仲間への深い感謝が滲んでいました。村上塾長の口から語られたのは、24年間の活動の集大成とも言える、驚くべき数字でした。
「昨年の年末時点で、なんと 18,700人 ほどの生徒さんたちを受け入れてきました」。
1万8千7百人。それは単なる数字の羅列ではありません。
泥んこになって田植えをした手、採れたてのトマトにかぶりついた笑顔、別れ際に流した涙。その一つひとつの瞬間に、会員の皆様が注いできた「愛情」の総量です。
出会いは人生の種まき
農村塾が掲げるこのスローガンが、決して綺麗事ではないことを証明する、2つの感動的なエピソードが披露されました。
一つは、7年前に台湾から訪れた高校生の物語。
彼女は、ここ北空知での体験に心を動かされ、その後、日本の大学へ留学。卒業後は台湾の旅行会社に就職し、「今度は自分が、台湾の子どもたちを日本へ送り出す仕事がしたい」と、訪日教育旅行に関わる夢を抱いているそうです。かつて蒔かれた種が、国境を越えて芽吹き、新たな架け橋となろうとしているのです。
もう一つは、さらに時を遡ること20年前。
大阪の中学生たちが、記念に用水路のコンクリートに手形を残していったことがありました。
長い時を経て、その中の一人がなんと、現在は兵庫県の中学校の校長先生になっていることが分かったのです。大人になり、教育者となった彼は、かつての思い出の地・深川を車で訪れたといいます。
「私たちが提供する農業農村生活体験は、子どもたちの心に残る体験であると確信しています。長い時を経て、その答えが出始めています」。
村上塾長のその言葉に、会場からは深く、重みのある頷きが広がりました。
私たちが手渡しているのは、単なる「野菜」や「思い出」だけではない。子どもたちが長い人生を歩む上で、ふとした時に支えとなる「心の根っこ」を手渡しているのだ。そんな誇りが、会員の皆様の表情を輝かせていました。
第2章:地域を支える「和」のスクラムと、温かなエール
「元気村・夢の農村塾」の素晴らしいところは、行政区分の壁を軽やかに飛び越えている点にあります。それぞれの町が手を取り合い、「北空知」という一つの大きな家族として活動しているのです。
2025年 地域別会員数:計 25名 深川市・会員12名、沼田町・7名、北竜町・4名、妹背牛町・2名、秩父別町・0名。
2025年 地域別受入人数:計 415名 深川市・147名、沼田町・148名、北竜町・71名、妹背牛町・49名、秩父別町・0名。
この日の総会には、各市町の役場職員の方々、そしてJA(農業協同組合)の皆様が来賓として駆けつけてくださいました。
来賓ご挨拶としてマイクの前に立たれた深川市・田中昌幸 市長。
そのスピーチは、形式的な祝辞ではなく、農村塾の歴史と意義を深く理解し、心からの敬意を表する素晴らしいものでした。
深川市・田中昌幸 市長ご祝辞
「田中でございます。元気村・夢の農村塾、第25回の総会ということで。平成14年から始まっているという、はや四半世紀。この総会に会員の皆さんとしてご尽力いただいての総会、ならびに『出会いは人生の種まき』ということで、誠におめでとうございます。
都市と農村の子どもたちに農業体験をしてもらって、農業を通して、その『心』や『人を思いやる気持ち』を伝える活動をしたいと。また今、塾長さんの方からもお話がありましたけど、この活動が積もり積もって1万8千人というこれまでの受け入れをして、そして昨年も400人を超える受け入れをして、この活動の意義というものを見出していただいているんじゃないかなと思います。
また一昨年は、『わが村は美しく-北海道』運動の第11回コンクールで優秀賞に輝き、素晴らしい活動を続けているという評価をいただいています。
それぞれの、あるいは農業法人さんの会員の方も、かつては50人以上いたというふうに(会員数は)減少はしていますが、活動そのものが弱まっているわけではなく、むしろ重要なものになっていると思います。
なかなか市の方の支援ということも、胸を張って言えるような状況ではないのですが、今の会員の皆様の活動や取り組みに対する支援も、できる限りさせていただければと思います。
また、今日講演される野谷さん。私はおじい様と昔お話をさせていただいたことがありました。『孫が北海道大学に入学したんだ』って喜んでいたのを、私もすごく覚えております。そういった人とのつながりを大切にして。これからもますますご発展いただくことを心からご祈念して、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
本日は誠におめでとうございます」と力強い田中市長のご挨拶でした。
こうした力強いお言葉に、会員たちからは大きな拍手が送られました。行政からの支援はもちろん重要ですが、それ以上に、こうした「現場へのリスペクト」と「精神的な支え」こそが、活動を継続するエネルギーとなります。
来賓ご紹介
また、来賓紹介の場面では、「深川市の農政課農政係 柿木莉絵子主事 」「沼田町の農業推進課 神薮太 参事」「妹背牛町の農政課 清水野勇 課長」「秩父別町の農政課 清水野勇 課長」、そして我らが「北竜町産業課の井口純一課長」と、一人ひとりのお名前が呼ばれるたびに、会場からは温かい拍手が送られました。
JA北空知の岩田清正 代表理事組合長、JA北いぶきの田洋一 代表理事組合長をはじめ、青年部の代表者など、農業の最前線を走るリーダーたちも顔を揃えます。
立場や所属は違えど、全員が「この地域の農業を守りたい」「子どもたちに食の大切さを伝えたい」という同じ方向を向いています。
- 講師:馬事考坊・野谷夏海 様
- 拓殖大学北海道短期大学・橋本信 名誉教授
- 深川市 ・田中昌幸 市長
- 深川市 ・農政課農政係 柿木莉絵子 主事
- 妹背牛町・農政課 清水野勇 課長
- 秩父別町・産業課 大山達美 課長
- 北竜町 ・産業課 井口純一 課長
- 沼田町 ・農業推進課 神薮太 参事
- JAきたそらち・岩田清正 代表理事組合長
- JAきたそらち・農業振興部 後藤圭一 部長
- JA北いぶき・黒田洋一 代表理事組合長
- JA北いぶき・営農推進事業部 澤田和博 部長
- JA北いぶき・青年部 堀祐介 部長
- アグリ工房まあぶ・秋澤憲明 支配人
- そらちDEい〜ね・安田光則 事務局長
- カラフルのたね・Webデザイナー 高根麻衣 様
第3章:逆風を「希望の風」に変える、百姓魂の挑戦
総会は、和やかな雰囲気の中にも、真剣に未来を見据える「議事」へと進みます。
- 議案第1号:令和7年ど活動報告並びに決算、体験料金、監査報告について
- 議案第2号:令和8年度活動計画(案)並びに収支予算(案)について
- 議案第3号:令和8年度活動計画(案)について
- 議案第4号:役員改選
- 議案第5号:その他
ここで共有されたのは、決して楽観視できない「現実」でした。
近年、インバウンド(訪日外国人)の急増により、北海道内のバス代やホテル代が高騰。その影響で、これまで北海道を選んでいた本州の学校が、修学旅行の行き先を沖縄や海外へ変更するケースが増えているというのです。
さらに、受け入れ側である農家も、高齢化により会員数が減少傾向にある地域も少なくありません。令和8年度の受け入れ予定数は、現時点で「7回」。かつての賑わいを知る会員からは、寂しさと危機感が滲みます。しかし、ここで終わらないのが「元気村」の魂、「百姓魂」です。
村上塾長の声に、力がこもります。
「待っているだけでは、回数は減る一方です。だからこそ、今年度は『攻め』に出ます!」。
発表された活動計画には、逆風を跳ね返すための、ワクワクするような新たな挑戦が掲げられていました。
- 独自企画「日帰り農業体験」の実施:
旅行会社からの依頼を待つのではなく、自分たちで企画し、一般参加者を募集するイベントを8月に開催。「自分たちでお客さんを呼ぶ」という、自立への第一歩です。 - 「発信力」の強化:
これまで以上にホームページやSNS(Instagramなど)を活用。プロのデザイナーである「カラフルのたね」高根舞さんの協力のもと、リクルート用ポスターを一新し、QRコードで「農村塾の魅力」へダイレクトに繋げます。 - 会員用ロゴ入りグッズの作成:
お揃いのウェアやグッズを作ることで、会員の結束力(チームビルディング)を高め、対外的にもブランド力をアピールします。
ピンチはチャンス
農業は、天候という抗えない自然相手の仕事です。だからこそ、農家の皆様は「変化に対応する力」と「しなやかな強さ(レジリエンス)」を持っています。
修学旅行が減るなら、個人客を呼べばいい。知られていないなら、自分たちで叫べばいい。そんな前向きなエネルギーが、会場の空気をガラリと変えていきました。
第4章:デザイナー・高根麻衣さんが描く「未来への扉」
議事の中で特に注目を集めたのが、ウェブデザイナー・高根麻衣さんによるプレゼンテーションです。彼女が提案したのは、新しい会員を募集するためのポスター案。
「ただ情報を載せるのではなく、『私もこのメンバーになりたい!』と思ってもらえるような、ワクワクするデザインを目指しました」。
提示されたA、B、Cの3つのデザイン案
そこには、農家の皆様の弾けるような笑顔や、北空知の美しい風景が切り取られていました。
さらにユニークなのは、QRコードのリンク先。いきなり申し込み画面に行くのではなく、「あなたが農村塾に向いているか?」を診断するアンケートフォームなどが用意され、楽しみながら興味を持ってもらう仕掛けが施されているのです。
「へぇ〜、面白いねぇ」。「スマホで見るとまた印象が違うな」。
会場では、さっそくスマートフォンを取り出し、画面に見入る会員の姿も。
アナログな温かさと、デジタルの利便性。この2つを融合させ、農村塾は「令和の時代」にふさわしい姿へと進化しようとしています。若い感性を取り入れ、変化を恐れないベテランたちの姿勢に、組織の若々しさを感じずにはいられませんでした。
第5章:バトンの継承、そして永遠の青春
議案第4号:役員改選 (敬称略)
| 令和6〜7年 | 令和8〜9年 | |
|---|---|---|
| 塾長 | 村上 はるみ | 村上 はるみ |
| 副塾長 | 渡邊 滋典 | 加藤 宰 |
| 事務局長 | 植木 千鶴 | 鶴山 八千子 |
| 会計 | 橋向 美月 | 橋向 美月 |
| 監事 | 小松 由美 | 白岡 紀美 |
| 監事 | 鶴山 八千子 | 寺木 佳奈 |
新旧役員挨拶
総会の終盤、会場は感動的な空気に包まれました。長年、役員として、そして会員として活動を支えてこられた方々の退任挨拶です。
マイクを握った前副塾長・渡邊滋典 氏が、しみじみと語り始めました。
「25年前、私がこの活動を始めた頃は、私もまだ若かったもんです(笑)。当時は元気なおじいちゃん、おばあちゃんたちが率先して受け入れてくれていました」。
会場から、温かい笑いが漏れます。
「あれから25年。気づけば、私がその『おじいちゃんクラス』に昇進してしまいました」。
ユーモアを交えたその言葉の裏には、四半世紀という歳月を、農村塾と共に歩んできたという深い愛着と誇りが詰まっていました。自分の青春を、そして人生の一部を捧げてきた場所。
そこを去る寂しさは当然あるでしょう。しかし、それ以上に彼らの表情を晴れやかにしていたのは、「次世代への信頼」でした。
「若い塾生さんが増え、特に女性の塾生さんが仲間に入ってくれた。それが何より嬉しい。私たちは退任しますが、心はいつも農村塾と共にあります。どうぞ、私たちのことを忘れないでください」と想いを込めて挨拶された渡邊氏。
深々と頭を下げる退任者の皆様に、会場からは割れんばかりの拍手が送られました。それは、単なる儀礼的な拍手ではありません。
「長い間、本当にお疲れ様でした」「土台を作ってくれてありがとう」「あとは任せてください」、そんな、言葉にならない万感の思いが込められた、愛と感謝の拍手でした。
そして、新役員として前に並んだ方々の、少し緊張した、しかし希望に満ちた表情。バトンは、確かに受け継がれました。
人が変わり、時代が変わっても、この「北空知の魂」は決して色褪せることなく、次の世代へと燃え移っていくのです。
第6章:学びと宴、明日への活力
総会終了後は、馬事考房の野谷夏海 氏による講演会が行われました。
「世話になるなら近くの人」というテーマで語られる、馬と共に生きる野谷さんの哲学。命あるものと向き合う厳しさと優しさは、農業に携わる会員の皆様の心にも深く響いたことでしょう。
そして、お待ちかねの懇親会。先ほどまでの真剣な表情とは打って変わり、会場は笑顔の花満開です。
「今年の雪はどうだい?」。
「あの独自企画、こんなことやってみないか?」。
「孫がさぁ……」。
グラスを片手に語り合う、仲間たちの楽しげな声。北竜町の会員も、深川や沼田の仲間と和気藹々会話が弾み、冗談を言い合っています。
ここでは、町の境界線など存在しません。あるのは、「北空知の農業を盛り上げたい」「子どもたちの笑顔が見たい」という共通の想いだけ。
美味しい料理と美酒、そして何よりの肴(さかな)である「仲間との会話」に酔いしれながら、北空知の夜は更けていきました。
(詳細は、講演会記事、懇親会記事に続きます)
エピローグ:愛と感謝と祈りを込めて
25年。生まれたばかりの赤ん坊が、社会人として立派に働き出すまでの歳月です。
その長い間、「元気村・夢の農村塾」の皆様は、変わらぬ笑顔で、変わらぬ大地で、子どもたちを待ち続けてきました。
総会の中で語られた「出会いは人生の種まき」という言葉。これは、子どもたちにとっての種まきであると同時に、受け入れる農家の皆様にとっても、自らの心に「喜び」という種をまく行為だったのかもしれません。
子どもたちの「美味しかった!」「楽しかった!」「また来るね!」という声が、水となり、光となり、農家の皆様の心を豊かに育ててきたのです。
時代は変わります。修学旅行の形も、情報発信の方法も変わっていくでしょう。けれど、ここにある「人の温かさ」「土の匂い」「分かち合う喜び」という本質は、決して変わることはありません。
最後に、長きにわたり活動を支えてこられた退任者の皆様に心からの敬意を表するとともに、新たな船出を迎えた「元気村・夢の農村塾」の未来が、黄金色の稲穂のように実り多きものとなりますよう、限りない愛と感謝と祈りを込めて。。。
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