2025年9月26日(金)
太陽を宿した黄金の果実。ひまわりすいかの魂を繋ぐ物語
北海道北竜町に、一つの奇跡があります。それは、深く艶やかな緑に黒縞模様の果皮の中から、真夏の太陽を閉じ込めたような黄金色の果肉が現れる「ひまわりすいか」。一口食べれば、誰もが驚き、そして笑顔になる。そのシャキッとした食感と、上品で爽やかな甘さは、一度味わうと忘れられません。
しかし、その一玉の背景には、私たちが想像するよりもずっと深く、温かい、人と自然、そして人と人が紡ぐ「和の心」の物語が息づいています。これは、北竜町の農家たちが一年をかけて描く、壮大な叙事詩なのです。
冬、雪の下から始まる祈り:ハウスの除雪作業
ひまわりすいかの物語は、夏ではなく、すべてが雪に覆われる厳しい冬から始まります。生産者の皆さんはまだ凍てつく2月、来たるべき春のためにハウスの雪下ろしを始めます。それは、夏の輝かしい実りのために、大地を目覚めさせるための静かな祈りの儀式。この見えない努力こそが、すべての礎です。
春、命を繋ぐ神聖な儀式:接木・育苗・定植
雪が解け始めると、農作業は一気に熱を帯びます。
小さな命に未来を託す「接木」
生産者の農園では、繊細な「接木」作業が行われます。病気に強いユウガオの台木に、すいかの穂木を繋ぐ。コンマミリ単位の精度が求められるこの作業は、まさに外科手術のよう。一つひとつの苗に「元気に育て」と願いを込める、神聖な時間です。
仲間と共に育む「育苗巡回」
北竜ひまわりすいか生産組合の強さは、その「絆」にあります。組合員たちは、互いのハウスを巡回し、苗の成長を我が子のように見守ります。「順調かい?」「この苗は力強いな」。交わされる言葉は、単なる情報交換ではありません。それは、最高のすいかを作るという同じ夢に向かう、仲間たちの魂の交流なのです。
未来へ繋ぐ「定植」
暖かくなったハウスに、大切に育てた苗を植える「定植」。マルチシートが張られた温かい土のベッドに、一つひとつ丁寧に植えられていく苗。それは、数か月後の収穫という未来への希望を、大地に植えていく作業です。
夏、すいかと語らう濃密な時間:整枝・収穫
夏が近づき、つるが伸び始めると、農家の皆さんはハウスの中で過ごす時間が増加。一本のつるに最高の一玉を実らせるため、余分なつるを取り除く「整枝」。どのつるを残し、どこで実をつけさせるか。それは、すいかの声に耳を澄まし、その生命力が最大限に輝く道筋を共に見つける「対話」に他なりません。
そして、歓喜の収穫。ひまわりすいかを優しく叩き、音を聞き分け、完熟した最高の一玉を見極める。箱に詰められるすいかは、もはや単なる農作物ではなく、生産者の汗と愛情が込められた尊い「作品」の数々です。
感動を分かち合う、笑顔の輪
6月、待ちに待った初出荷。JAきたそらちから全国へ、北竜町の夏の元気が届けられます。キョクイチ青果セリ場(旭川市)での初セリで示されるご祝儀価格。それは、品質への信頼の証です。
テレビや雑誌がその魅力を伝え、直売会にできる長蛇の列。そして、今年から旭山動物園のカバさんへ大好物のひまわりが贈呈される一幕も。ひまわりすいかは、人と人、そして動物さえも笑顔で繋ぐ、幸せの架け橋となるのです。
未来へ、この魂を受け継ぐために
この感動を、一過性のものにしない。北竜町には「ひまわりすいか新規就農者研修ガイドライン」があります。匠の技、すいかへの愛情、仲間との絆。この農業が持つすべての価値を、次の世代へ繋いでいきたい。そんな「思いやりの心」が、この町には確かに根付いています。
ひまわりすいかを栽培してみたい。そう思う人がいる限り、北竜町の農家たちは、惜しみなくその全てを分かち合うでしょう。なぜなら、彼らにとって農業とは、土地を耕し食物を育てることだけでなく、人の心を耕し、未来への深い愛を育てることだからです。
さあ、この物語を味わってください。偉大なる太陽に見守られた、北竜町の温かい魂を。それはきっと、私たちが忘れかけていた、本当の心の豊かさを思い出させてくれるはずです。
Youtube動画
ひまわりすいかの再生リスト(15本)

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◇ 🖋️ コンテンツ企画・記事執筆・写真選定・動画作成:寺内郁子

