若年性認知症家族会 空知ひまわり10周年記念事業「認知症フォーラム in ほくりゅう」開催

2017/07/27 2:04 に 寺内昇 が投稿   [ 2017/07/28 2:00 に更新しました ]
2017年7月27日(木)

7月22日(土)、若年性認知症家族会 空知ひまわり10周年記念事業として、「認知症フォーラム in ほくりゅう」が北竜町公民館大ホールにて16:00より開催され、150名程の聴講者が参集しました。

・共催:北竜町、若年認知症家族会空知ひまわり、エーザイ(株)
・後援:深川市医師会


若年性認知症家族会 空知ひまわり10周年記念事業 認知症フォーラムinほくりゅう 
若年性認知症家族会 空知ひまわり10周年記念事業 認知症フォーラムinほくりゅう
北竜町公民館(撮影:2017年7月22日)

フォーラム資料 
フォーラム資料

フォーラム資料 
エーザイ(株)作成資料


若年性認知症家族会 空知ひまわりのメンバーである藤崎千恵子さんの総合司会により、北竜町・佐野豊 町長による開会挨拶でスタート。


藤崎千恵子さんの総合司会 
藤崎千恵子さんの総合司会


主催者代表挨拶:北竜町・佐野豊 町長


主催者代表挨拶:北竜町・佐野豊 町長 
主催者代表挨拶:北竜町・佐野豊 町長


「北竜町は、ひまわりの町として、1980年(昭和55年)に1戸1アール運動をきっかけに、町ぐるみでひまわりに取り組んで今年で37年目を迎えます。

北竜町は、人口2,000人を切る北海道でも小さな町です。高齢化率も43%を超え、過疎化が進んでいる町ではありますが、町民の心をひとつにして、作付面積日本一のひまわりの里を中心にして、ひまわりのような明るく元気な町づくりを進めています。

本日は、空知管内はもとより町内外から沢山の方々にご出席いただき、また、エーザイ(株)の皆様にも沢山のご支援をいただいて、本日のフォーラムが開催されます。

認知症は誰にでもあり得る病気であります。最近では、新聞・テレビで取り上げられる機会も多くなっています。しかし、まだまだ社会の中では理解されない部分も多々あります。北竜町は、元町長・一関海治さんが、若年性アルツハイマー型認知症を現職中に発病し、自ら病名を公表して辞任されました。
今年、空知ひまわりが10周年を迎え、多くの皆様にご支援・ご協力をいただいて今日に至ります。改めて感謝と御礼を申し上げます。

今後、北竜町は、ひまわりの町・農業の町として、さらには福祉の町として町づくりに頑張っていきたいと思います。
本日ご参加の皆様のご健勝・ご多幸を心からご祈念申し上げますとともに、今後共尚一層のご支援・ご協力をいただきますよう、重ねてお願い申し上げて開会の挨拶とさせていただきます。
本日はどうぞよろしくお願いいたします」


会場模様 
会場模様


第1部「若年性認知症を理解し、ともに歩もう」
  講師:内海久美子先生(砂川市立病院 認知症疾患医療センターセンター長)


内海久美子先生(砂川市立病院 認知症疾患医療センターセンター長) 
内海久美子先生(砂川市立病院 認知症疾患医療センターセンター長)


内海先生が実際に診察された患者さんの事例内容を幾つか詳しくご紹介いただきました。

1.治療も介護認定も受けられなかった症例(アルツハイマー型認知症・58歳女性)
2.職場から検診命令をうけ、うつ状態を伴った症例(アルツハイマー型認知症・54歳男性)
3.診断まで8年間を要した若年性アルツハイマー型認知症(地域のボランティアに支えられ最後まで活動的だった一例)53歳でアルツハイマーと診断され69歳で逝去(北竜町空知ひまわりが支えた中村信治さんの症状経過について)
4.うつ病と誤診され、子供に禍根を残した症例(前頭側頭型認知症・59歳女性、60歳で永眠)
5.家族に見捨てられ生活保護になった症例(前頭側頭型認知症・55歳女性)
6.職場でも家庭でも多動・多弁なため、居場所がない症例(前頭側頭型認知症・ピック病・51歳男性)


会場模様 
会場模様


「こうした若年性認知症の悲劇とも言える事例を繰り返さないためには、どうしたら良いのでしょうか。なにより、認知症の診断が非常に難しいので、専門医療機関にセカンドオピニオンを求めてもいいのではないかと思います。

経済的な問題においては、就労の場を確保できるように雇用先と調整する、就労支援施設を活用する。本人の持っている力を最大限に維持しながら、具体的な支援をしていく、障害年金などの支援をしていくことが課題解決になっていくと思います。

また、介護サービスの受け入れに関しては、介護職員の教育研修の充実が必要です。

家族支援としては、認知症の方は一番のサポーターである家族会に入会し、同じ病・同じ立場に立った人々の助言や励ましが一番力になると思います。地域住民への啓発活動も必要です」と、常にご本人や家族の方々と向き合い、心を感じ取っていらっしゃる内海先生の熱いお言葉です。


会場網様 
会場網様


第2部:若年性認知症を支える農業と福祉について

活動報告として、若野達也氏(若年認知症サポートセンターきずなや ゼネラルマネージャー)に、「若年性認知症を支える農業と福祉について」と題してのお話をいただき、さらに助言者として、大辻誠司氏(砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士)、干場功氏(若年認知症家族会空知ひまわり代表)のお二人にお話いただきました。


第2部:若年性認知症を支える農業と福祉について 
第2部:若年性認知症を支える農業と福祉について


報告者:野達也氏(若年認知症サポートセンターきずなやゼネラルマネージャー)

若野達也さんは、奈良県出身の43歳。

・2004年 奈良県内「グループホーム古都の家学園前」設立
・2009年 認知症サポートセンター「絆(きずな)や」を設立
・2015年 奈良の農業法人組合と観光プロジェクトをスタート
・2016年 厚生労働省事業 地域部門「認知症の私が輝く大賞受賞」

若年認知症の方が集える居場所、「働く」「社会貢献できる」環境を作り、さらに、若年認知症の方の必要な情報提供や啓発活動等幅広い活動を展開されています。


野達也氏(若年認知症サポートセンターきずなやゼネラルマネージャー) 
若野達也氏(若年認知症サポートセンターきずなやゼネラルマネージャー)


「きずなや」設立の目的、活動内容、地域産業等との連携、地域の様々なNPO活動、地元の農業と行政・企業・大学・社協等との連携、さらに海外との情報交換による活動の発展・幅広い様々な展開などについて、これまでの活動を丁寧にお話されました。

「こうした農福連携の事業はすぐにできるものではなく、ここまでくるのに8年の年月を要し、これからがスタートです。厚労省など行政に訴え、干場さんにもお願いをしてやっとここまできました。地道な道のりですが、スタートし持続できれば叶えられるものです。

私達の活動は、ご本人の声から始まっています。やっていることで私が考えたことはひとつもありません。ご本人が『やりたいこと・希望すること』を一緒に応援していくことが大事だと思います。

スペシャリスト(看護者、介護士、地域のドクター)が、それぞれの境界線に壁を創らず、ご本人が行き来できる環境であってほしい思います。

認知症サポートセンター「絆(きずな)や」の活動は、啓発活動等行いながら、収益のあがるような活動が今後展開していければと思います」ご本人の声を大切にして、一歩一歩丁寧に事業を積み上げ、実現していく若野さんのお話でした。


会場模様 
会場模様


助言者・大辻誠司 氏(砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士)


大辻誠司 氏(砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士) 
大辻誠司 氏(砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士)


「干場さんは『農福連携』を北竜町でやりたいと考えていらっしゃると思います。
農福連携の形は2つあります。ひとつは、農地を借りてあるいは農地を持って農業生産、さらに加工に至る事業展開であり、もう一つは、農家や農業法人から作業を請け負って契約をして作業をしていく形です。若野さんの場合は、この2つを上手く混ぜて、若年性認知症の方々と事業を進めています。

なぜ今、農福連携が注目を浴びている理由は、高齢化で農業が衰退し、後継者が不足している現状があるからです。不足した農作業の部分を障害者の方々が農作業を手伝うことで、仕事を提供して、障害と福祉と農業が合体していくことです。

この地にも就労継続支援A型や同B型という施設がどんどん出来ています。異業種が入ってきて、障害者の方々を雇用し働いていただいています。

農福連携を進める上でお願いしたいことは、障害者の症状・病態、関わり方などをきちっと学んで関わってほしいこと、そして当事者のことを考えた事業展開をしてほしいということです。

また、地域で就労施設を作る場合には、医療と連携して欲しいと思います。人と成り、そして症状を知った上で就労に関わってほしいと思います。農業・福祉・そして医療との連携を望みます。

農福連携の最終的目標は、農業で収益を得て、就労者たちに還元していくことです。職業としての農業が、本当の意味での農福連携に繋がっていくのだと思います。


助言者:干場功氏(若年認知症家族会空知ひまわり 代表)


干場功氏(若年認知症家族会空知ひまわり代表) 
干場功氏(若年認知症家族会空知ひまわり代表)


「中村信治さんが北竜町で元気に生活できたのは、内海先生が診てくださったこと、そして北竜町に佐野町長をはじめ、地域の方々が中村さんを真から支えていただお陰だと、感謝しています。
この10周年を迎え、この日をスタートラインにして、これからの北竜町が認知症だけでなく高齢化社会に強い町になれるよう、力一杯やっていきたいと思います。今日はありがとうございました」。


閉会挨拶:宮永和夫先生(若年認知症サポートセンター 理事長)


宮永和夫先生(若年認知症サポートセンター 理事長) 
宮永和夫先生(若年認知症サポートセンター 理事長)


「最初は、医者と患者との関係として認知症に関わってきましたが、沢山の患者さんのお話を伺っている中で、様々な学びがあり感謝しています。認知症の方々には、できることをやって少しでも社会に貢献したという強い想いがあることを知りました。

この空知ひまわりが10周年を迎え、様々な方々が関わって応援できることで協力しあい、ますます色々な形で繋がり合って発展していって欲しいと思います。

北竜町で、認知症の方々とのマラソンの話が持ち上がったときも、町長をはじめ沢山の方々が協力し、温かく見守ってくださったので、ひまわりマラソンが実現しました。こうして皆で繋がり、コミュニケーションを取りながら全国に広がり発展していけえればと思います」。と、宮永先生から閉会のご挨拶の言葉をいただきました。



内海久美子先生の胸に迫るような実例のお話、そして若年認知症の方々を支え、家族の方々と共に手を取り合い発展していく若野達也氏の素晴らしい活動に、限りない愛と感謝と祈りをこめて。。。


若年性認知症家族会 空知ひまわり10周年記念事業「認知症フォーラム in ほくりゅう」ポスター 
若年性認知症家族会 空知ひまわり10周年記念事業
「認知症フォーラム in ほくりゅう」ポスター


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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子