2015年8月25日(火)
8月18日(火)、第2回地域づくりセミナー(観光振興)が、北竜町公民館大ホールにて開催されました。
講師に総務省地域力創造アドバイザーの溝畑宏様(元観光庁長官) をお迎えし、「観光振興と地方創生~地域、そして日本が元気になるために~」をテーマにご講演戴きました。町内外から約100近い方々が参加し、熱心に耳を傾けました。
・主催:北竜町
・後援:北竜町議会、北竜町ひまわり観光協会
・助成:公益財団法人 北海道市町村振興協会(サマージャンポ宝くじの収益金)
▶ 司会:北竜町役場企画振興課・高橋利昌 課長
左:北竜町役場企画振興課・高橋利昌 課長 右:会場の模様
今、全国の都道府県市町村が、地方創生として人口減少対策の検討に取り組んでいます。
北竜町では、この度、元観光庁長官で総務省地域力創造アドバイザーの溝畑宏様にご講演戴きます。
溝畑氏は昭和35年(1960年)生まれ、京都府出身。東京大学法学部卒業後、自治省(現総務省)入省。同年北海道庁に2年間出向。自治省に復帰後、1990年に大分県庁に出向。サッカーチーム・大分トリニータを立ち上げ、さらに、立命館アジア太平洋大学(別府市)設立に携わる。2004年に、(株)大分フットボールクラブ代表取締役に就任。2009年、経営不振の責任を取って辞任。2010年、国土交通省観光庁長官に就任、2年間務める。2012年には内閣官房参与、大阪府特別顧問、京都府参与に就任。2015年4月に大阪観光局理事長(大阪観光局長)に就任し、現在に至る。
現在は、地域活性化に資する観光立国の実現の為、日本全国を駆け回る。
また、2011年の東日本大震災復興にむけてレディー・ガガさんなど訪日した著名人から日本への応援メッセージを世界にアピール。2012年5月、震災復興に力を尽くされた方々への感謝をこめて、自転車で「みちのくひろし旅~出会いを求めて東北1600km」を実施。2013年10月、伊豆半島の地域活性化PRのため、自転車で伊豆半島一周300kmの「伊豆ひろし旅」を完走。現在も、精力的に様々な活動を展開していらっしゃいます。
会場の様子
▶ 溝畑宏様
▶ ご縁の深い北海道
私は6歳の頃から、父の職務により、フランス・イタリア・パリなどに渡り、帰国後京都で高校3年まで過ごしました。
社会人になると、北海道と大変ご縁が深く、約30年前に自治省入省の際、最初に北海道へ2年間出向しました。
当時道内には212市町村がありました。私は車で、稚内・羅臼・函館から全ての市町村、そしてほとんどの島を周りました。
溝畑宏様
北海道の四季の変化、バラエティに富んだフード、皆さん当たり前だと思っている所に、感動とワクワク感を与えてくれような魅力がいっぱいあります。
日本は宝の宝庫だと感じさせてくれたのは北海道です。2年間、北海道内地域をくまなく周りました。スキー・カヌー・登山・マラソンなど、楽しい思い出を生み出してくれたのが北海道です。
▶ 自治省へ戻りそして大分県庁へ
その後、自治省に戻り、地方財政における消費税導入などに関わりました。
そして1990年に大分県庁に出向となり、通算19年間大分に滞在。私は大分を「世界の大分を目指す志を持てる大分」に変えていこうと思いました。リスクを背負って、自分がやることを決意しました。
2002年に、立ち上げに関わった大分トリニータをJ1昇格へと導きました。
さらに、大学の必要性を感じました。大学設立に関わったのは、自分の留学経験から世界の人々との交流がいかに大切かを学んだからです。全国の70の大学を回って立命館に出会い、立命館アジア太平洋大学(別府市)を誘致することができました。結果的に、80か国から留学生が2,500人集まり、学生数5,000人の大学誘致に成功したのです。
溝畑宏様
さらに、14年間かかって大分トリニータは日本一になりました。大分市約47万人の都市には、2万人を超える観客が集まるようになりました。
これはすべてゼロからのスタートです。スタートはみんな反対します。「こんな田舎で無理だ」というみんなの意見。スタートしていないのに無理と考えることが嫌いな私。
何事も可能性が1%でもある時は、それにむけて死に物狂いでやっていくことが、子どもの頃から両親の教育の柱になっていました。どこ地域に行っても「現状のままでいいことは決してない。常に日本のトップ、世界のトップを目指して進んでいく」というのが私のモットーです。
人間目標をなくすことは、その時点で大敗を意味します。目標に向かって繰り返しやること、積み重ねが大事です。
▶ 「自信」「元気」「誇り」を持つ魅力ある地域
地域活性化とは、やる気のある人が頑張って夢を持つこと。
失敗してもまわりのみんながそれを支える、助ける、妬まない、頑張る人を褒める、成功したら失敗した人を称えるという文化にしていくことです。
嫌われることを覚悟で誰かがやらないといけない。自分がやるんだという決意をして、私の地域活性化の戦いが始まったのです。人間、失うものを失ってしまったら怖いものはありません。安全地帯にいたら何も生まれません。
一回きりの人生に何か残さなければ、傍観者ではなく、一人ひとりがチェレンジする、参加することが地方創生です。
魅力ある地域になるには、住んでいる一人ひとりが、地域の魅力に対して「自信」「元気」「誇り」を持つことです。自分達の町の魅力を探すことからスタートし、誇りを持って、地域の魅力を世界に認められるように発信していくこと。そうすれば、町の魅力に価値が生まれ、人とお金が集まって、経済の活性化に繋がっていきます。
溝畑宏様
▶ 「世界のトップを目指す人生」「やりたいことをやり遂げる人生」
私が幼年時代を過ごしたイタリアの町・ピサで、学校の先生の毎日の言葉は「ピサは世界で一番美しい町です。ピサを愛しましょう!この町を訪れた人々に一番美しい笑顔で挨拶をしましょう!」でした。この言葉を聞いて、ピサの子どもたちは育ちます。
京都大学理学部教授で数学者の父から学んだことは、「どんな分野でもいいから世界のトップになりなさい。人の10倍は努力しなさい。努力しなければ、結果はでない」「人生は競争。勝負して勝ったら、負けた人を守れ。負けた人が勝った人を褒めろ。負けたら、悔しいと思って人の10倍働け! 人の悪口を言ったり妬んだりするな。愚痴や泣き言を言ったら、そこで人生が終わるんや!」という教えです。
常に元気な母親は、KBC(九州朝日放送)の元アナウンサー。
「目立つ人生を歩みなさい。自分がやりたいことを徹底的に実践しなさい」と言っていました。
両親のお陰で、愚痴を言わずに独りで築き上げていく「ハングリー精神と競争心」を養うことができました。
仕送りの無かった大学時代は、苦労してバイトをしたので、人との関わりあいから「恩・義理・人情」を叩きこまれました。
溝畑宏様
「地域づくり」はひとりではできません。いかに人を巻き込んでいくかにかかっています。
人それぞれ得意分野があります。1日10人仲間を作っていく。1年間で3,000人、10年間で3万人、自分の理解者を増やしていく。地道な積み重ねよって「地域づくり」は動き出します。
大切なことは、コミュニケーション能力、人間としての魅力!
部下のために責任を背負って、人から批難されても部下を身体をはって守りぬくことを重ねていくと、部下は黙ってついてきます。人に指示する前に、自分が動くことが、最善の方法です。
そして、言いたいことは直接会って話すことです。
▶ 観光とは、幸せを人に与えること
ある大学の方から言われた「人間は能力の前には頭を下げないけれど、努力・情熱・夢の前には頭を下げる」という言葉が心に残っています。「熱意」「熱心」という情熱は、とても大事なこと。その人の言葉に「夢・情熱・熱意・努力」というものを感じた瞬間、人と人は繋がっていきます。
「なりたい町をイメージすること」が大切です。
私にとっての理想のイメージづくりは、模倣から入ります。自分が体験したこと、これまでに見たことの模倣です。自分が楽しいし、ハッピーでいいなぁと思えることが、夢に繋がっていきます。この幸せを皆さんにお裾分けしたいという気持ちがなければ、広がっていきません。
自分の町から出かけていって、できるだけたくさんの町を見てください。自分のいいなぁと思うものを見つけてください。夢をみつけたら、仲間を増やしてください。時間はかかります。
皆さん一人ひとりが、北竜町をどんな町にしたいのかを考えてください。誰かがやるのではなく、自分でやれることをコツコツと積み重ね、仲間を増やしていくことです。みなさん一人ひとりが楽しいなぁ、幸せだなぁ、ワクワクするなぁと思うことが一番大切!
観光とは、幸せを人に与えること。訪問した人が「来てよかったなぁ、幸せだなぁ」と思うには、まず自分自身がしあわせと感じることです。
皆さん一人ひとりが北竜町を好きになることです。みなさんが当たり前と思っている風景が、世界一素晴らしい風景であるかもしれません。北竜町の宝物を探すことです。
そして、自分の世界を広げていくには、外に出て、より多くの人々から意見やアドバイスを戴き、自分自身の地道な努力を継続していくことが大切です。
聞き入り参加者の皆さん
続いて、プロジェクターを使ってのお話です。
▶ 観光は地域の総合的戦略産業
観光は地域の総合的戦略産業
・地域の資源を、自治体、観光協会、商工会、農協、金融など、町全体がひとつになって宝物を掘り起こします。そして何より、町民が町を好きになって、町に対して誇りを持つことです
・人と人とが移動して交流することが「観光」
・町のほとんど全ての産業が絡んでいくものが「観光」
・全ての産業に付加価値をつけるのに役立つものが「観光」
・地域の資源を世界に通じるように、様々な形で情報発信していく
・溢れる多量の情報の中で、ピカっと光るもの(ちょっと尖ったこと)を打ち出していく
・世に注目を浴びるようなイメージを地元の人々で 作り上げていく
・「健康」「観光」「食文化」の中に「ひまわり」を当てはめて、「感動」「健康・癒やし」が沸き起こっていくストーリーを作り上げていく
・「北竜町」は名前がかっこいい!とてもインパクトのある名前!
北の竜、北に向かって昇っていく竜、イメージするだけでかっこいい! 竜のイメージは上昇志向です。
▶ 北竜町のポテンシャル
北竜町のポテンシャル
・お米「ひまわりライス」「ひまわりメロン・すいか」「ひまわりの里」等それぞれの価値を見出していく
・ひまわりの花を見る価値を見出す。例えば、ひまわり会員を募り、会員に自ら播種や草取りをして花を咲かせて楽しむ制度を作成し、ひまわりの里での参加を促す
・「全国の皆さんが町民とともに、日本一のひまわりを咲かせましょう」というメッセージのもと、参加型のひまわり栽培を行う
・参加した人々は、自分で種を撒いたひまわりの花を見に行きたいと思う。みんなで咲かせた、日本一のひまわり畑を目指して、みんなの想いが集まって、大きく広がっていく
・ひまわりの花に付加価値が加わり、みんなで参加することによって、北竜町の町を好きになっていく
・北竜町に女性の観光客が多いことは、女性向けの施設が充実していて、女性に優しい町と言えます
・「食文化」「健康」「温泉」「場所(札幌や旭川から近い距離)」という視点から北竜町を掘り起こす
・特に「北竜町の健康」につい徹底的に深堀りをしていく
・北竜町に来たら「健康になれて、ひまわりのように輝く」というオーラを放つ
・北竜町・旭川・札幌をぐるっとまわる観光コースを作って繋げていく
▶ 拡大するアジアの国際観光市場
市場を視野に入れると同時に、海外市場にも向けていくことによって、交流人口を拡大していくことが可能となる。交流によって町が活性化し、元気になっていく。
大切なことは、町の強い魅力を導き出して、町のファンを増やしてリピーターを獲得していくこと。
拡大するアジアの国際観光市場
▶ 地域における観光立国に向けた取組事例
少人口市町村による観光発展のための戦略を紹介。
地域における観光立国に向けた取組事例
1.ニセコ(北海道)
・ 年間100万人の観光客を取り込む(10万人が外国人)
・役場に外国人(オーストラリア人・韓国人・中国人)を採用
・高校生が英語案内版を作成、観光ガイドに積極的に取り組んだ
・町全体が外国の観光客を受け入れようと協力し合った
2.直島(香川県)
・町長の呼びかけで「現代アートの島」を町民一丸となって目指した
・世界へ羽ばたくことを目指して、最初のプロモーションを日本ではなく、パリで行った
3.佐渡(新潟県)
・伝統的な芸術や建築物を利用したインバウンドへの取り組み
4.飛騨高山(岐阜県)
・20年前から、12か国語対応のHP作成してアピールしている
・今では、民泊による観光客受け入れを行っている
▶ 活性化は「このままでは町が衰退してしまう」という「危機感」から
活性化している全ての町に共通していることは、「このままでは町が衰退してしまう」という「危機感」から立ち上がっていったこと。
そして、目線が外(海外)へ向いていること。世界へ通用するもの(事)へ繋げて、様々なチェレンジに取り組んでいる。
チェレンジしなければ何もおこらない。失敗は、成功のための大いなる教訓となる。
▶ ビザ発給要件の緩和
アジア諸国におけるピザの免除など、日本に旅行しやすい環境が整ってきている。
・タイ・マレージアは、ピザ免除
・インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどは、マルチピザの発行が可能となる
ビザ発給要件の緩和
▶ LCC及びビジネスジェットの参入促進
LCC(格安航空会社)による航空運賃の引き下げやLCC用ターミナルの整備によって、日本への移動がしやすくなってきている。
LCC及びビジネスジェットの参入促進
▶ WiFiの整備、英語版の道路標識などの必要性
WiFiの整備、英語版の道路標識の必要性、クレジットカード利用環境の充実、外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充が必要。
・海外の旅行者は、スマートフォンなどで情報収集するので、ネット環境は必須!
・町に住む留学生の参画
▶ 近郊の町を巡る観光ルートの作成
近郊の町を巡る、特定のテーマに沿った観光ルートを作成すると良い。
「ひまわり」「温泉」「健康」をテーマにしたルートを札幌や旭川の都市と結びつけたルートを考える。
▶ 今後の目標となるワールドイベント
・2018年 オリンピック冬季競技大会
・2019年 IRBラグビーワールドカップ
・2020年 東京オリンピック競技大会
韓国などで開催が予定されている冬季オリンピックを目指し、練習スキー場、キャンプ場の施設の整備を近隣都市と連携することを視野にいれる。各町で役割分担をしていく。
▶ 日本の魅力のひとつとしてのスポーツ
私は、日本の特徴は次のように考えている。
1. 豊かな四季の変化
2.安心安全清潔な環境
3.美しい自然景観
4.時間を守る、ルールを守る国民性
5.健康長寿
6.豊かな食文化
7.伝統工芸・文化
8.スポーツ
そこで、スポーツの観点から考えてみる。
・日本は四季折々のスポーツを楽しめる
・風景を見ながらのスポーツを楽しむことができる
・町で楽しめる四季折々のスポーツ(参加型マラソン、交流、リピーターを増やす)を考える
・観るスポーツ、するスポーツ、支えるスポーツの視点で考える
・マラソン、サイクリングは人気が高まっている
▶ 「愛媛マルゴト自転車道作戦」進行中!
「愛媛マルゴト自転車道作戦」進行中!
▶ シビルマリッジ(市民結婚式)
・医療・健康・セラピーなどの充実
・夜を楽しむコースを作る
・洞爺湖温泉街のコスプレイベント
・恋人の聖地づくり
・ふるさとウェデイング(地域のイメージを上げていく)
北竜町ならではの結婚式を考える
シビルマリッジ(市民結婚式)
▶ ペットツーリズム
ペットツーリズムの聖地(ペットと一緒に宿泊、食事、ペットの病院、ペットのお葬式)の可能性を探る。
ペットツーリズム
▶ 情報発信(Lady Gagaのメッセージ)
世界への情報発信。例えば、有名人へのアプローチで、日本をアピール。
情報発信(Lady Gagaのメッセージ)
▶ 【参考】“東北観光博応援企画” みちのくひろし旅~出会いを求めて東北1,800キロ~
自転車で「みちのくひろし旅~出会いを求めて東北1,800km」を実施。東北復興へのアピールとなった。
【参考】“東北観光博応援企画”みちのくひろし旅~出会いを求めて東北1,800キロ~
◎ 何事もアクション(行動)、現場主義、スピード、タイミングをつかむことが大切!
◎ 自分のミッションは、観光を通じて日本の魅力を世界へ発信していくこと!
「北の竜」である北竜町は、北海道のなかでも「昇竜」として、2,000人の町を世界に誇れる町になれるよう頑張っていただきたいと思います。
皆さん一人ひとりがハッピーになってください。自分自身が明るく楽しくなければ、まわりも楽しくなれません。
この度、北竜町の「ひまわり観光大使」を仰せつかったので、「ひまわりボーイ」になって、皆さんと一緒に北竜町を世界に発信していきたいと思います。
今日は、どうもありありがとうございました。
▶ 質疑応答
この後、質疑応答で5人の方々が熱い感想を述べられました。
質疑応答の模様
▶ 「ひまわり観光大使」の委嘱
続いて、佐野豊町長より、溝畑宏氏へ「ひまわり観光大使」の委嘱状が授与されました。
「ひまわり観光大使」の委嘱
▶ 応援メッセージ
北海道庁から、北海道経済部・神姿子 観光振興監、北海道経済部国際観光担当局・新出哲也 局長が来町され、溝畑氏のご講演を拝聴して応援メッセージを述べられました。
北海道経済部・神姿子 観光振興監(左)、北海道経済部国際観光担当局・新出哲也 局長(右)
魅力ある町づくりについて、沢山の素晴らしいお話をありがとうございました。
一人ひとりの町への熱い想いが結集し、町としての力が高まり、そして世界へ発信するという、総合的な町づくりの大切さを実感いたしました。
愛する地域に対する「自信」「元気」「誇り」、
情熱と努力と楽しむ心を抱き続け、
世界を目指した魅力探訪の町づくりに、
大いなる愛と感謝と祈りをこめて。。。
北竜町眺望の丘からの景色(撮影:2015年7月17日)
・写真(102枚)はこちら >>
◆ 関連ページ
・溝畑宏オフィシャルWebサイト
・地域力創造のための起業者定住促進モデル事業・地域人材ネット・総務省地域力創造アドバイザー
◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子