認知症フォーラム in ほくりゅう 2015(北竜町)支え合うまちづくり

2015/08/17 13:31 に 寺内昇 が投稿   [ 2015/08/19 15:28 に更新しました ]
2015年8月18日(火)

8月8日(土)午後2時より、「認知症フォーラム in ほくりゅう」が北竜町公民館大ホールにて、町内外から約170名程の参加者が集まり開催されました。


認知症フォーラム in ほくりゅう@北竜町公民館  当日参加者に配布されたたフォーラム資料一式 
左:認知症フォーラム in ほくりゅう@北竜町公民館  右:当日参加者に配布されたたフォーラム資料一式


開催に先立つ2か月前の6月8日(月)、北竜町とエーザイ株式会社との間で「認知症対策・地域包括ケアの推進に関する包括的連携協定」の締結が行われました。今回のフォーラムは、その共同事業のひとつとして開催されたものです。

また、北竜町の若年認知症家族会「空知ひまわり」が、今年で設立8周年を迎えました。 8周年の8月8日という8並びの日に合わせて、「北竜町・エーザイ(株)・空知ひまわり」の3者の共催による「認知症フォーラム」となりました。
総合司会は、若年認知症家族会「空知ひまわり」会員・藤崎千恵子 様が務められました。


xxx  町内外から150名程の方が参加されました 
左:総合司会の藤崎千恵子さん  右:町内外から150名程の方が参加


第1部は、「もっと知りたい、聞きたい、認知症のこと」と題する講演。講師は、砂川市立病院 認知症疾患医療センター センター長・内海久美子 先生。

第2部では、「今、地域にもとめられている『やさしいまち』とは」と題して、株式会社大起エンゼルヘルプ取締役 地域密着・地域包括、入居・通所事業部長・和田行男 様、砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士・大辻誠司 様、若年認知症家族会「空知ひまわり」代表・干場功 様の3者の方々によるのトークショーが行われました。


若年認知症家族化「空知ひまわり」・干場功 代表よりご挨拶空知ひまわりブログ >>


若年認知症家族化空知ひまわり・干場功 代表 
若年認知症家族化「空知ひまわり」・干場功 代表


この度は、「認知症フォーラム in ほくりゅう」が、北竜町とエーザイ(株)の共催により開催できることを厚く御礼申し上げます。

平成19年11月11日、NPO法人 若年認知症サポートセンター・宮永和夫 理事長、比留間ちづ子 副理事長などの方々に来ていただき、若年認知症家族会「空知ひまわり」を立ち上げることができました。
この8年間、色々なことがありました。本日のフォーラムは、設立8周年の8月8日ということで、様々なことがこれからも広がっていくように感じています。そして「空知ひまわり」にとって、新しいスタートとしての一つの起点になると思います。

実は先月、札幌市の認知症家族会・北海道ひまわりから、「北竜町民の方から家族会についての相談を受けた」という連絡が入りました。私が7月30日に帰町した際、ご本人にお会いしじっくりとお話を伺いました。
ご本人から「診断を受けてからの2か月間、大変悩み苦しみました。しかし、なんとか気持ちが落ち着き、町の皆さんに病名を公表し、北竜町で新しい生活をスタートすることを決意いたしました」というお話でした。

ご本人の西原通宏さんは、現在44歳。
44歳で若年性認知症の診断を受けることの苦しみ、将来的なことへの悩みは大変なものだと思います。しかし、病名を公表することによって、新しい一歩を踏み出すことができます。新しい人々との出逢いによって、自分自身の新たな道を切り開くことができると確信いたしております。

いろいろな道がありますが、どの道を選択するかは自分自身です。西原さんが、北竜町で生活していく上で、様々な部分で皆様のご協力指導を賜ることを願っております。これからもどうぞ宜しくお願いいたします。


北竜町・佐野豊 町長ご挨拶参照ページ >>

北竜町・佐野豊 町長 
北竜町・佐野豊 町長


北竜町は「ひまわりの町」として昭和55年から、1戸1アール運動として町民の皆さんが心ひとつにひまわり栽培に取り組んでまいりました。今年で35年目を迎え、今日も大勢の観光客の方々で賑わっております。

高齢化・過疎化が進行する小さな町ですが、ひまわりを中心として、元気で明るいまちづくり推進していきたいと考えています。北竜町は、現在人口2,018人、高齢化率42.4%(8月1日現在)です。毎月1%ずつ高齢化が進んでおり、認知症にかかる方も、町内で少しずつ増えて来ています。

認知症は、誰でもなり得る病気であり、最近では、テレビや新聞で毎日のように話題となっています。しかし、一方では、社会の中ではまだまだ理解されていない部分も多くあることも事実です。

元北竜町長の一関開治さんが、若年性のアルツハイマー型認知症を患い、病名を公表し辞任されたことを契機に、町民の中で認知症に対する意識が高まりました。そのような中、平成19年に、若年認知症家族会「空知ひまわり」が設立されました。

本日は、空知管内はもとより多数のご参加を戴き、エーザイ様のご支援ご協力のもと、本日のフォーラムを開催させて頂きます。地元診療所・浦本先生、砂川市立病院の内海先生、精神保健福祉士の大辻様、株式会社 大起エンゼルヘルプ取締役・和田様に参加して頂きます。

現在国においては、国家戦略として認知症に対するオレンジプランを策定して普及に努めています。今日のフォーラムが、認知症についての理解を深める契機となり、認知症になっても安全で安心して暮らせる町・地域、その実現に向けての参考になればと思います。
結びに、ご参加頂いた皆様のご健勝ご多幸、関係各位の皆様のなお一層のご協力を賜りたいと願っております。
本日は、誠におめでとうございます。


第1部 講演 「もっと知りたい、聞きたい、認知症のこと」

座長:北竜町立診療所 所長・浦本幸彦 先生

座長:北竜町立診療所・浦本幸彦 所長 
座長:北竜町立診療所 所長・浦本幸彦 先生


講師:砂川市立病院 認知症疾患医療センター センター長・内海久美子 先生センターHP >>

砂川市立病院 認知症疾患医療センターセンター長・内海久美子先生 
砂川市立病院 認知症疾患医療センター センター長・内海久美子 先生


内海久美子 先生 略歴

 ・1955年(昭和30年) 旭川市出身
 ・1988年(昭和63年) 札幌医科大学卒業後、札幌医科大学病院 精神神経科
 ・1995年(平成 7年) 砂川市立病院 精神神経科
 ・1996年(平成 8年) 医学博士修得
 ・2004年(平成16年) NPO法人「中空知・地域で認知症を支える会」設立
 ・2007年(平成19年) 砂川市立病院 精神科部長
 ・2008年(平成20年) 札幌医科大学大学院 医学研究臨床教授
 ・2010年(平成22年) 砂川市立病院 認知症疾患医療センター・センター長
 ・2013年(平成25年) NPO法人「中空知・地域で認知症を支える会」理事長

砂川市立病院物忘れ外来を中心に、地域の病院や診療所の医師・福祉関係者らが連携し、心身両面からの総合的な診断をもとに、最善の対応策を提供。認知症市民健康フォーラム開催、地域ケアスタッフ向け研修会開催、施設訪問座談会開催、認知症支援ボランティア団体の立ち上げ、中空知認知症社会資源マップのインターネットによる公開など地域活動に積極的に取り組む(配布資料「プロフィール」より転載)。

● 所属学会:日本老年精神医学会(理事・指導医・認定医)、日本神経心理学会(専門医・指導医)、日本認知症予防学会(評議員)、日本精神神経学会(指導医・専門医・精神保健指定医)、日本総合病院精神医学会、日本精神科診断学会


内海久美子 先生のお話

介護疲れと生活苦による悲惨な事件の映像(動画)の上映、道内における介護殺人などの実例についての悲惨な事件についてのお話の後、認知症に関するお話がありました。

─ < 内海先生のお話 ここから> 

高齢者の虐待は、84%が認知症疾患の方であるというデータがあります。認知症は、治る病気ではなく、進行して病気であること。物事の理解・判断ができなくて、意思疎通が困難な状態が続くことで絶望感が募ることが原因とされています。
  

介護する人もされる人もお互いに与えられるもの

介護はとても辛いことです。しかし辛いことばかりではありません。
長門裕之さん、南田洋子さんご夫婦の例です。
70歳で認知症を患った洋子さんの介護生活を綴った本の中での、長門裕之さんの言葉は、「介護される人も介護する人を支えられる。洋子が僕の世話になっているように、僕も洋子によってたくさんのものを与えられている。本当の夫婦に成れたのは、洋子が認知症になったお陰です」。
辛さのなかには、喜びや愛情がいっぱい存在していることを物語っています。


介護される人も介護する人を支えらる 
介護される人も介護する人を支えらる


長寿国日本

平均寿命は男性80歳、女性87歳。長寿が故に、老いという形で誰もがなり得るものが認知症。
「認知症になったら、恥ずかしい」という偏見をなくしてほしいのが私の願いです。


認知症とは

 ・大脳の中の認知機能、記憶、判断力等が低下していく状態が認知症
 ・自分が認知症かどうか確認(内海先生のリードによって、長谷川式認知症検査を会場の参加者が簡単に実施して、
  自分の状態を確認「自分の年齢、今日の日付・場所、3つの事の記憶、数字を暗記し逆に読むなど」)


認知症を呈する疾患:治る認知症、治らない認知症

 ・アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症は完治はしない病
 ・しかし、良い薬ができたので、早期発見早期治療が可能であり、進行を遅らせることができる
 ・周囲のひとによる本人に対する気づきが大切

認知症を呈する疾患:治る認知症、治らない認知症 
認知症を呈する疾患:治る認知症、治らない認知症


アルツハイマー型認知症の症状

 ・軽症:一緒に生活している人にしか認識できない(日々の暮らしの中での気づき)
 ・中症:生活上でのミスが目立つ(予約を忘れる、同じものを買う、失敗を繰り返す)
 ・重症:人の助けがなければ生活できない状態(言葉を理解することが難しい)


アルツハイマー病の脳の状態

 ・脳萎縮:萎縮がはじまり、血流が低下していく

アルツハイマー病の脳の状態(萎縮がはじまり、血流が悪くなっていく) 
アルツハイマー病の脳の状態(萎縮がはじまり、血流が低下していく)


MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像) 
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)


SPECT(Single Photon Emission Computerd Tomography:単光子放射線コンピュータ断層撮影)

・SPECT(スペクト)による相対的血流低下画像(赤い部分が血流が低下している)


SPECT(Single Photon Emission Computerd Tomography:単光子放射線コンピュータ断層撮影)による相対的血流低下画像 
SPECT(単光子放射線コンピュータ断層撮影)による相対的血流低下画像


アルツハイマー病の治療薬

 ・アリセプト
 ・レミニール
 ・イクセロンパッチ・リバスタッチ

・3つの薬の内、症状に合わせて一つの薬を使う


アルツハイマー病の治療薬 
アルツハイマー病の治療薬


 ・64歳男性の場合
 ・脳は萎縮していないが、頭頂葉に血流低下がみられる
 ・記憶力の検査(リバーミード行動記憶検査)が低い点数となっていた
 ・アリセプトを投与後、リバーミードの点数が高くなった

 ◎ 早期発見で、アリセプトの早期投与によって症状進行(症状の悪化)を防ぐことができる


アリセプト5mg投与1年後の変化

アリセプト5mg投与1年後の変化 
アリセプト5mg投与1年後の変化


アルツハイマー病の保護要因

 ・野菜や魚、果物を取ること:和食が最良(サプリメントは不可)
 ・運動:歩くこと(脳に刺激を与える)
 ・知的活動や社交活動(人の中に入って会話を楽しむ)

アルツハイマー病の保護要因 
アルツハイマー病の保護要因


北竜町に移住した若年性アルツハイマー病患者の事例

北竜町に移住した若年性アルツハイマー病患者:男性・66歳(47歳に発病)。

 ・中村信治さんは、北竜町「空知ひまわり」の会員の皆さんに支えられ、様々な活動を継続している
 ・発病から19年経過しているが、症状は大変緩やかに低下し、現在でも、自力歩行、自力摂取可能
 ・家族会「空知ひまわり」の皆さんの活動は世界に誇れる素晴らしい活動


北竜町に移住した若年性アルツハイマー病患者 
北竜町に移住した若年性アルツハイマー病患者


レビー小体型認知症について

<症状>
 ・日本の小阪憲司 医師が1976年に世界で初めて発見
 ・幻視が特徴
 ・パーキンソン症状がある
 ・レム睡眠時に行動障害がある
 ・自律神経症状(脳だけでなく、神経細胞の部分など身体全身に関わっている症状)
 ・脳血流スペクト検査
 ・後頭葉の血流低下がみられる
 ・心臓にある自律神経の神経細胞の部分に異常が見られる
 ・ドーパミンを分泌する神経細胞に異常

<治療>
 ・治療は電気治療などがある
 ・アリセプト投与で改善

 ◎正しい診断、早期発見がとても大切

レビー小体型認知症 
レビー小体型認知症


暴言・暴力への対応

 ・まず介護者が落ち着くことが大切
 ・「困ったことがあれば、相談に乗るから、助けるから教えて」と根気強くゆっくりと穏やかな口調で話かける
 ・同じ目の高さでアイコンタクトする関わりを持つ
 ・本人の嫌がることを無理強いしないで、意向や希望を確認する
 ・徘徊に対しては、「わかったよ。今は夜なので、明日帰ろうね」と話かけるど否定しない
 ・その場限りの優しい嘘をついてください。時間がたてば、言ったことを忘れてしまいます


暴言・暴力への対応 
暴言・暴力への対応


認知症患者の心情

 ・分からないことの連続、思い出そうとしても思い出せない。不安の連続
 ・様々な失敗をして、自尊心が著しく傷つけられる
 ・現実の世界についていけない
 ・自分自身が壊れていく、自分が自分でなくなっていく、これほど恐ろしいことはない
 ・自分らしくありたい


認知症の人とのコミュニケーションのコツ

 ・声掛け誘導はゆっくりと、笑顔で
 ・声量は低く、柔らかく、優しい声で
 ・言葉は理解できなくても、感情的な表現(しぐさ、眼差し)は感じ取っている
 ・相槌を打ちながら、相手の言葉を繰り返す
 ・相手が自分の味方であることを実感させ、安心させる
 ・記憶が衰えても、感情機能は衰えていません


認知症の人とのコミュニケーションのコツ 
認知症の人とのコミュニケーションのコツ


秘められている様々な可能性

 ・五感は鋭く残っている
 ・情緒は豊かに残っている
 ・昔の記憶は宝物
 ・身体で覚えた記憶力の威力
 ・最後まで残るのが「触覚」、触れられていると一番安心する

「どうか、優しく触れてあげてください」


秘められている様々な可能性 
秘められている様々な可能性


─────────── < 内海先生のお話 ここまで> ─────────────────────────────


アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症等について、基本的な知識や最新医療について幅広くお話くださいました。先生の体験に基づく、認知症の方々への対応やコミュニケーションのコツなど貴重なお話を沢山戴きありがとうございました。
   

質疑応答

「本人が病院での受診を拒否した場合の対処法を教えてください」」という質問に対して、
「砂川市の認知症疾患医療センターでは、本人と信頼関係のあるかかりつけの先生に受診を薦めてもらったり、各自治体の認知症初期支援チームに依頼して、スタッフあるいは医師が直接自宅へ出向いてお話を聞き診察して医療機関へ誘導します。また、「脳の健康診断」という形で病院での受診を促しています」と内海先生。

もうひとつの発言として、今年7月に砂川市立病院 認知症疾患医療センターで受診し、内海先生より「若年性アルツハイマー病」と診断された西原通宏さんが挙手され、「身体が動く限り、まわりの人々に理解して頂いた上で、自分のできる仕事をやっていきたい」と率直な意見を述べられました。


西原通宏さん(北竜町在住) 
質疑応答・西原通宏さん(北竜町在住)
<※ ご本人とご家族の許諾を得て公開させていただいています>


第2部・トークショー:今、地域にもとめられている「やさしいまち」

 ・(株)大起エンゼルヘルプ取締役:地域密着・地域包括、入居・通所事業部長・和田行男 様
 ・砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士・大辻誠司 様
 ・コーディネーター:若年認知症家族会「空知ひまわり」代表・干場功 様 

2つの地域での活動紹介

1.砂川市立病院 認知症疾患医療センター

大辻 様よりプロジェクターを使って説明されました。

 ・認知症疾患医療センターとは、「診断と治療」「普及啓発」「連携」の3つの仕事を行う
 ・認知症疾患医療センターは、北海道に18ヶ所(8圏域)、全国では302か所に設立されている
 ・砂川市立病院で診断 → 地域の診療所で治療 → 連携による情報交換
 ・家族で支えていくのは限界があるので、医療・介護サービス・保健所などと協力し合う

砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保険福祉士・大辻誠司 様 
砂川市立病院 認知症疾患医療センター 精神保健福祉士・大辻誠司 様

地域で認知症を支える仕組み 
地域で認知症を支える仕組み


診断と治療・物忘れ専門外のカンファレンス

・3人の医師の診断「精神科・神経内科・脳外科」
・専門外のスタッフが集まって、MRI、SPECTなど検査画像検討する。
 スタッフ一同議論を重ねるカンファレンスを開いて一件一件診断していく。
 → 診断結果をレポートにまとめて地元の診療所に送る。更にご家族にも診断結果を説明する

スタッフ一同議論を重ねてカンファレンス 
スタッフ一同議論を重ねるカンファレンス


普及啓発活動

 ・講演会やフォーラムを開催
 ・家族教室(内海先生講師)を開催し、介護している方々へアドバイスする
 ・基礎講座開催
 ・支え合い連携手帳(ご本人の気持ちや症状など様々な情報を記載)
  → 地域のケアマネやかかりつけの医師に見せる


支えあい連携手帳 
支え合い連携手帳


その他地域で支え合う様々な取り組みについての説明がありました。


「連携」:空知全体の連携

 ・病院の専門の医師と地元診療所の医師との連携
 ・地域包括支援センター、ボランティアグループ「ぽっけ」、54か所のご本人かかりつけの診療所など、
  様々な形で関連する人々と繋がりを持つことで、ご本人・ご家族を支えることを目指している
 ・今年で、連携してご家族を支えて12年目となります


1.北竜町・若年認知症家族会「空知ひまわり」

北竜町・若年認知症家族会「空知ひまわり」の活動が、事務局・中村道人 様(北竜町役場住民課課長)よりプロジェクターを使って説明されました。


北竜町・若年認知症家族会「空知ひまわり」 
北竜町・若年認知症家族会「空知ひまわり」事務局・中村道人 様


「若年性アルツハイマー病」と診断され、平成19年8月に東京から北竜町へ移住した中村信治さんを若年認知症家族会「空知ひまわり」の会員の方々が見守り支援する日々の活動についてのお話です。

平成19年11月11日、若年認知症家族会「空知ひまわり設立。会員は、サポーター23名と1組の家族でした。
月1回の例会、初めての取り組みで試行錯誤を繰り返し、失敗の中から様々なことを学びながら活動を継続しています。
笑顔を絶やさず、無理のないサポート体制で取り組んでいます。現在は、卓球、陶芸、太鼓、キャッチボール、ウォーキングなど。過去にはパークゴルフ、ダンス、カラオケなどを元気に楽しんでいました。新しいことを覚えることが難しい状況の中、「陶芸」は北竜で初めて覚えたものです。出来上がった陶芸作品は、11月開催の町民文化祭に出品しています。
また、町民体育大会への参加、さらには5年前からサポーターの皆さんの伴走のもと、北商ロードレースへの参加も果たしています。
北竜町での生活は8年が経過し、信治さん自身できないことも多くなってきていますが、症状の進行は驚くほどに緩やかです。「繰り返し活動することで、残存機能のある脳細胞への学習能力を活性化させ、脳細胞は減少しますが、少なくなった脳細胞同士がお互いにネットワークを形成し、病気の進行を遅らせていると考えられます」という内海先生からお言葉を頂きました。

現在会員は44名(内ご本人家族4組)で、これからの会の活動は安心安全な環境づくり・声掛け・見守り等を無理のない形で行っていこうと考えています。
昨年は、第37回道新ボランティ奨励賞受賞、今年6月には、北竜町とエーザイ(株)との「対策・地域包括ケアの推進に関する包括的連携」の締結が行われました。


若年認知症家族会「空知ひまわり」の活動模様  若年認知症家族会「空知ひまわり」の活動模様 

若年認知症家族会「空知ひまわり」の活動模様  若年認知症家族会「空知ひまわり」の活動模様 
若年認知症家族会「空知ひまわり」の活動模様


コーディネーター・干場功さんのお話です。
「これら2つの認知症支援活動は全国的にも珍しい取組みです。医療と地域の連携による協力体制がもたらす影響力の大きさを実感しているところです。 そして、東京の「彩星の会(ほしのかい)」でも深く関わって頂いている和田行男 様にお話を伺います」。


和田行男 様のお話:共に生きていく社会

和田行男氏 
和田行男 様

「私は、名古屋市在住で、東京のグループホーム10か所、その他30か所ほどの事業所や施設を統括させて頂いています。名古屋では、(株)波の女(グループホームと小規模多機能型居宅介護の複合施設)を運営しています」と和田さん。

施設に入居されている、感情の起伏の激しい利用者の様々な行動についてのお話をされました。
その中で和田さん自身が感じていらっしゃることは、

「市民の感覚は、医療現場にいる介護職員よりもよっぽど高くてすごいなと思います。
僕は28年この現場にいますが、市民の方々は、ご本人の方の状態が昔だったら考えられないレベルであっても、今では、当たり前のように受け止め、ご本人に接していらっしゃいます。今まで施設を運営していて、ご本人の様々な非常識な行動が発生しても、町の方々から一度も苦情がでたことがありません。

専門職の方よりも意識が高い国民の方々は、認知症になったら閉じ込めておくという考えはなく、面倒くさいことも嫌なこともおこるけれども「いつか私もね」とおしゃるのです。

昔は認知症になると縛り付けられたり、部屋に鍵をかけられたり、薬を飲まされていたりしました。しかし、今では、認知症になっても、いろんな事が起きるかもしれないけれども、みんなで手を繋いで暮らしていこうという時代に社会がシフトしてきているように思います。
人口200万人の名古屋市でさえ、時の流れのなかで、様々な人々の実践の賜物で、共に生きていく社会になってきたのかなぁ、と実感しています」。


比留間ちづ子 様のお話:お互いに支えあう地域の活動

NPO法人若年認知症サポートセンター副理事長・ 比留間 ちづ子 様(若年認知症社会参加支援センター「ジョイント」所長)からお話をいただきました。(センターHPはこちら >>

「北竜町の空知ひまわりのサポート活動は、全国でも大変珍しいケースです。
空知ひまわりのサポーターは、認知症の人を支えながらも『支えられている人から与えられていることが多い』という力で繋がっている会です。実に素晴らしいサポート体制だと思います。

今後、空知ひまわりにとって、意見を出しあい、若年認知症の方でも就労できるような新しい事業を立ち上げるなどが、これからの方向性なのかなと思います」。

NPO法人若年認知症サポートセンター・比留間 ちづ子 副理事長 
NPO法人若年認知症サポートセンター副理事長・比留間 ちづ子 様


和田行男 様のお話:最後までできることをしていこう

「これまで様々な利用者さんと出会って最も感じたことは『認知症になられた方が、こんなにも沢山できることがあるのに、もったいないなぁ』ということです。

最近の動きとして、認知症の方々が生活し自立できるような就労の場所をつくろうという流れがあります。また、デイサービスで、働ける環境を作りだす仕組みができないだろうかとも考えています。

『認知症になっても、最後までできることをしていこう』という意思がある方々を、私達は今後も支えていきたいと思います」。

和田さんのお話 
和田様のお話


大辻誠司 様のお話:理解の広がりとアイデア

大辻誠司 様のお話 
大辻 様のお話

「皆さんのお話を聞いて感じたことは、『認知症に対する理解の広がり』『アイデア』という2つの言葉です。

北竜町の空知ひまわりは、『認知症に対する理解の広がり』があってこその活動です。
また西原さんの働きたいという意思に対して『アイデア』を出し合って、いかに就労の場を作っていけるかということ、この2つがキーワードになるのではないかと思います。

 『アイデア』が浮かんで実際に実行してみても、なかなか前に進まないのが現実です。
それでもやり続けます。やり続けて、一度始めたら止めないことを信念に実行しています。

北竜町の「空知ひまわり」は、ブログを5年間毎日更新し続けています。見ている人は見ているし、活動や活躍ぶりを応援している人はたくさんいます。止めないことが基本だと思います。

和田さんが、平成15年に書かれた本が『大逆転痴呆ケア』です。翌年の平成16年に行政用語で『痴呆』は使われなくなり『認知症』という言葉に変わりました。 この本は大変貴重で、熟読しています。

著者の和田さんを砂川にお呼びして、お話を聞きたいなぁとずっと思っていたのですが、今、横にいらっしゃることが私の驚きです。いつか砂川にお呼びして、和田さんに思いっきりお話していただける事を願っています」。


最後に、コーディネーターの干場功 様から「これからの北竜町が、様々なアイデアを出し合って、認知症を更に理解して欲しいと思います。そして、本人や家族が安心して暮らせるまちづくりを目指して進んでいただければと思います。
時間の限られた中ではありましたが、トークショーの終了と致します。本日は、ありがとうございました」
との言葉で幕が降ろされました。


一心に耳を傾ける参加者 
一心に耳を傾ける参加者


脳の機能が低下し、記憶が無くなっても、消えることのない心 。。。
地域の理解と相互支援により、さらに繋がり合っていく人々の心 。。。

身体の衰えと同時に、いつか自分の身に訪れるかもしれない認知症に、
大いなる愛と感謝と祈りをこめて。。。


北竜町の穏やかな景色 
北竜町の穏やかな景色(撮影:2015年8月11日)


写真(49枚)はこちら >>


◆ 関連記事・ページ

(お知らせ)8月8日(土)認知症フォーラム in ほくりゅう 開催!(2015年6月29日)
・厚生労働省「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)


◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子