2011年3月26日(土) 道の駅「田園の里うりゅう」にある雨竜沼自然館(北海道雨竜町)では、雨竜沼湿原や北海道の自然をテーマに、毎月1回の公開湿原講座が開催されています。 3月講座「春の北海道~可憐な春植物を訪ねる~」に参加してきました。 雨竜沼自然館公開湿原講座 「春の北海道~可憐な春植物を訪ねる~」 岡本洋典氏(自然写真家・雨竜町在住) 講師は、雨竜町在住の自然写真家・岡本洋典先生。岡本先生には、2010年12月に北竜町・ひまわり大学講座にて、「身近な空知の自然」の講演会でご講演戴いています。 今回の講座は、雪解けを待ちわびていたかのように芽吹き、成長し、開花する春植物たちの魅力を感動的写真の数々とともにお話くださいました。 ◆ 春植物は「スプリング・エフェメラル(はかない命)」 春植物は、「スプリング・エフェメラル」と呼ばれています。エフェメラルとは、ギリシャ語のエフェメロス「はかない命」。 春植物は、現れては直ぐに消えていくような短命な生き方、かげろうのような生き方をする植物だからです。 それでも、発芽から開花までは、何年もの数月を費やします。カラクリで8~10年、エンレイソウで15年かかるそうです。 何年もかけて、根に充分なエネルギーを蓄えていき、数年かけて発芽、一枚葉、二枚葉がじっくりと成長していきます。 そして、一株の開花期間は一週間あまり。。。実にはかない命です。 ◆ フクジュソウ(福寿草・キンポウゲ科)は太陽を追いかけるパラボラアンテナ アイヌ語では「チライアパッポ」。イトウの花という意味。それは、淡水魚のイトウが遡上産卵する時期に咲く花だからです。 パラボラアンテナのように太陽を追いかける花。日光があたると開き、日がかけると閉じるように、太陽光に応じて開花します。 花びらは、太陽光を花の中心に集め、その熱で虫達を誘引するそうです。 ひまわりの花は咲いてからは太陽を追いませんが、フクジュソウは、開花しても太陽を追うのですね。 ◆ カタクリ(ユリ科)は下向きにうつむいて咲く花 カタクリの花は、太陽に背いて、下向きにうつむいて咲いています。それは、昆虫(蝶)が蜜を吸いやすくするためだそうです。受粉の効率を上げるために下向きに咲きます。 地面に落ちた種は、アリの餌となります。カタクリの種には、エライオソームという脂肪酸、アミノ酸、糖などを含んだ物質が含まれています。種がアリの餌となり、アリが運ぶことによって、そこに、植物と昆虫の共利共生の世界が繰り広げられているのです。このように、アリに種を運んでもらっている植物・アリ散布植物は、200種類もあるそうです。 ◆ エゾエンゴサク(ケシ科) エゾエンゴサクの学名は「Cordalis ambigua・コリダリス・アンピグア」。Cordalis(ヒバリ)には、“あいまい”という意味があります。花の色や形が地域により千差万別で、紫・青紫・白・青など様々であることから命名されたようです。 「ひとつひとつの花がそれぞれ色合いや形が違って美しいのは、効率よく子孫を残すために、昆虫との共生によって築き上げられ、選びぬかれた進化の証なのです」と岡本先生は、植物の神秘的な生態の世界をわかり易くお話してださいました。 春植物たちの逞しくも不思議な命の世界に、大変驚き感動しました。 一瞬にして華麗なる花を咲かせ燃え尽きる、 春のはかない命・スプリングエフェメラル、 昆虫たちと共利共生しながら逞しい生き抜いていく春植物たちに、 果てしない喜びと愛と感謝をこめて。。。 青いエゾエンゴサク(講演会スライドより・岡本洋典氏撮影写真) ◆ 春植物の観察・撮影上のルール ・決められた歩道・散策道以外には立ち入らない。 ※ ロープ等で明確な制限が示されている場合も同様。 ・立入り可能な場所でも大胆に踏み込まない。 ※ 私有地の場合は事前に許可を得る。 ・山菜としての採取は必要最低限に我慢する。 ・写真撮影の際に、寝そべらずにローアングルに適した撮影機材を利用する。 しっかりとルールを守って、美しい花々を愛でたいものです。 ◆ 道内各地の春植物の群落地(3月下旬~6月上旬) ・エゾエンゴサク・皆楽公園(かいらくこうえん)(月形町・つきがたちょう) ・カタクリ・晩生内神社(おそきないじんじゃ)(浦臼町・うらうすちょう) ・カタクリ・吉野公園(新十津川町・しんとつかわちょう) ・フクジュソウ・旭ヶ丘公園(芦別市・あしべつし) ・カタクリ・丸山公園(深川市・ふかがわし) ・カタクリ・突硝山(とっしょうざん・男山自然公園)(旭川市) ・カタクリ・キトウシ森林公園(東川町・ひがしかわちょう) ・ミズバショウ・旭岳山麓わさび沼散策道(東川町) ・フクジュソウ・旭岳山麓ロープウェイ乗車口下(東川町) ・カタクリとエゾエンゴサク・三笠山自然公園(和寒町・わっさむちょう) ・エゾイチゲ・エゾノリュウキンカ・ニリンソウ・エゾオオサクラソウ 暑寒別岳(しょかんべつだけ)登山口・渓流の森(増毛町・ましけちょう) ・エゾキンポウゲ・アズマイチゲ・エゾエンゴサク 幌加内町(ほろかないちょう) ・オオナバノエンレイソウ・判官館(はんかんだて)森林公園(新冠町・にいかっぷちょう) ・カタクリ・オオバナノエンレイソウ・観音山公園(様似町・さまにちょう) ・キクザキイチゲ(白・青)・滝野すずらん丘陵公園(札幌市) ・カタクリ・菩提院奥の院(黒松内町・くろまつないちょう) ◇ いくこ&のぼる ◆自然写真家 岡本洋典氏 プロフィール 岡本 洋典 (おかもと ひろのり) 1957年、北海道・新十津川町出身。動植物を含めた幅広いネイチャーフォトを実践し、北海道の自然写真に於ける代表的写真家として活躍中。代表作「雨竜沼」は学術的にも高い評価を得ている。数多くの写真展・写真集・その他の著作を通じ、北海道の大自然を表現する格調高い作品を発表し続けている。 ・ホームページ(伝説の湿原・雨竜沼) ・(社)日本写真家協会会員 ・「NPM (北海道・Nature Photo Masters)」主宰・代表 ・「北の写真家集団・DANNP」主宰 |