80年の時を超え出会いが生んだ音楽彫刻・山本徹淨ご住職(常楽寺・北海道秩父別町)と南部白雲師(井波彫刻・富山県南砺市井波町)

2011/04/20 19:07 に 寺内昇 が投稿   [ 2014/03/10 18:04 に更新しました ]
2010年7月2日(土)

山本徹(やまもとてつじょう)先生がご住職をされている隣町の秩父別町(ちっぷべつちょう)の常楽寺(じょうらくじ)を訪れました。
常楽寺は一般公開されておりませんが、今回は特別に拝観させていただきました。心から感謝いたします。


常楽寺(山本徹淨住職)常に音楽のある北の音楽寺(北海道秩父別町)


山本徹先生は、大学で音楽を専攻されたのち、道内の小中学校・高校の先生を経て、現在は、浄土真宗本願寺派秩父別町常楽寺のご住職。そして、女性コーラスグループ「北竜町・ひまわりコーラス」のご指導など、地域に密着した音楽活動を活発に行っていらっしゃいます。

常楽寺は、今から100年以上前の1907年(明治40年)創設。1924年(大正13年)に第四世住職・山本教信師、1961年(昭和36年)に第五世住職・山本常信師がご就任。

そして1998年(平成10年)に第六世住職・山本徹淨師が就任され、開教100年を記念した法要が執り行われました。


常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町
指揮をとる童子@常楽寺(山本徹淨住職・北海道秩父別町)


お寺の前には川が流れ、小さな赤い橋が架けられています。
まず、目に飛び込んできたのが、常楽寺と書かれた巨石。それはまさに、常楽寺の偉大さを象徴するかのように鎮座する石造門柱。。。日高産、重さ25トン。紫の混じった渋い赤色の大きな石門柱です。

親鸞聖人御像の見守る中、本堂は、開教100年記念事業として新築されました。1917年(大正6年)に創建された時のお堂を、そのまま残して覆うようにして建築されたという見事な建物。

本堂の入り口を入ると、そこに迎えてくださったのが巨大な「大黒天」の木像。四国の楠で作られたという見事な一木(いちぼく)造り。一本の巨木から削り出されています。威厳ある笑顔、そして大きなお腹の大黒さま。。。どことなく山本徹先生のお姿と。。。


常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町    常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町

常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町    常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町


本堂の内陣には、御本尊・阿弥陀如来様、親鸞聖人様が鎮座されています。見上げた欄間(らんま)には、豪華絢爛な透かし彫り装飾である仏教彫刻の数々。

天地一切のものを支配する畏敬なる守護神・神龍。
 生きとし生けるすべてのものを包み込む眼光鋭い獅子。
  そして、琵琶や笛等の和楽を奏でながら天空を舞う天女たち。

これらの木彫御荘厳(きぼりおしょうごん)は、すべて白木彫りに統一されています。

私達は、この彫刻たちが、80年の時を超えた希有な出会いを生んだことに驚き、そして新たに生まれた創造作品に魂を揺さぶられたのです。

その彫刻は、初代南部白雲師(なんぶはくうんし)の初期の頃の代表作品。80年後、1998年(平成10年)に3代目南部白雲師が常楽寺を訪問されて、本堂の欄間が初代白雲師、つまり祖父の作品であることが判明したのです。

南部白雲師の流派は、富山県南砺市井波町の井波彫刻。 井波彫刻は、1390年(明徳3年)、井波の地に建立された瑞泉寺の再建に関わったことが始まりとされています。

この井波彫刻を伝承するのは、南部白雲木彫刻工房
創設者の南部白雲(勘太郎)師は、端泉寺太子堂再建に大きく貢献しました。二代目白雲(保之)師は、社寺彫刻から発展した住宅欄間を確立。

そして今、三代目白雲(秀水)師は、伝統技術継承の熱い想いとともに、発展的な新しい発想をもって活躍し続けていらっしゃいます。

1998年(平成10年)、この年は、常楽寺開教100年目であり、しかも、第六世住職・山本徹師への継職法要が行われました。

そして同年は、南部白雲工房創立100年の年でもあり、三代目南部白雲(秀水)師が襲名されたのです。この驚くべき不思議な重なりは必然だったのでしょう。

常楽寺と南部白雲師との深いご縁が解き明かされました。


常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町    常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町

常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町    常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町


1999年(平成11年)、常楽寺本堂新築において、本堂外陣の欄間には、三代目白雲師の手による彫像が施されることとなりました。

初代白雲師の木彫が和楽を奏でながら天空を舞う天女。
三代目白雲師の木彫は、笛や弦楽器を奏でながら雲を自由に飛び回る童子たち。
それは、音楽という響きで繋がり合う和洋の調和であり、脈々と受け継がれて行く新旧の熱い魂の技でもあります。

その名前が示すが如く、常楽寺は、天女や童子たちが雲を舞い、常に音楽が流れ、和洋折衷の楽器が奏でる楽しい音に満ちあふれ、心癒されるお寺なのです。

この後、私達夫婦は山本徹先生とともに、秩父別町の可愛いログハウス風レストラン「キッチンハウス小島」にて美味しいランチをご一緒させていただきました。「小島」のご主人と山本先生は、ボーイスカウトつながりのお仲間です。

山本先生は、雲を飛び回る童子達の音楽の指揮者の如く、すべてを見守り包み菩薩さまのような御心で、壮大なる夢を語ってくださいました。


「常楽寺が、常に楽しい音楽の音色で繋がっているように、音楽で結び合う、地域の人々との繋がりを大切にしてきたい。

たとえば、近隣の三つの町を結ぶトライアングルパワー!!!
『秩父別町は薔薇の花』、『沼田町はツツジの花』、『北竜町はひまわりの花』。

ひとつひとつの町がそれぞれの特徴を生かしながら、音楽という音を通してひとつになり、響き合う。地域の人々が一致団結し、一丸となってひとつのことを築きあげていく。そんな地域参加型フェスティバル!

いつの日か、ひまわりの花をバックに、1000人が奏でる第九合唱コンサートをやってみたいんだよ!!!」


私達も山本先生の想いが実現することを心から願い、精一杯応援したいと思います。


楽しく天空を舞う天女や童子達の、
音による心の響き合いに

無限の愛と感謝と笑顔をこめて。。。


常楽寺(山本徹浄住職)北海道秩父別町
薔薇@常楽寺(薔薇の香りがさわやかな町・北海道秩父別町)


 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子