2019年11月5日(火)
令和元年10月24日(木)14:00〜、北竜町・公民館大ホールにて、「令和元年度 北空知土地改良区運営協議会研修会」が開催されました。
令和元年度北空知土地改良区運営協議会研修会(北竜町公民館大講堂2F)
北空知管内11土地改良区の各理事者の皆様、約90名の方々が集合し、盛大に行われました。
会場の様子
研修課題として、空知総合振興局産業振興部・田中伸彦 調整課長より『土地改良法の改正について』、そして、黒千石事業協同組合・高田幸男 理事長より『いのちの源・黒千石大豆』についてのご講演がありました。
配布資料
▶ 司会進行:空知土地改良区・波田野啓三 事務局長
空知土地改良区・波田野啓三 事務局長
▶ 会長挨拶:空知土地改良区・石川良樹 理事長
空知土地改良区・石川良樹 理事長
「会員の皆様には、水稲における収穫作業も一段落し、畑作においては、例年作以上の収穫が見込まれると聞いております。昨年と比べると良い出来秋であったと思います。
本日ご来賓として、北海道議会議員・植村真美様、深川農業事務所より、馬渕達也 所長様、広部 副所長様、竹矢 主任指導官様、空知総合振興局より、田中 調整課長様、山縣 指導係長様、北部耕地出張所より、伊賀 所長様、黒千石事業協同組合・高田 理事長様、それぞれの皆様におかれましては、御多忙のところご臨席いただき誠にありがとうございます。
尚、田中 調整課長様と高田 理事長様におかれましては後ほどご講演いただきますので、よろしくお願いいたします。
ここ数年、スマート農業の導入に向けて、すでに新聞・テレビなどを通じて、無人トラクターの走行の実演をご覧になった方も多いと思いますが、他にも自動水管理システムやドローンを活用した適切な栽培管理をしながら収穫まで、技術の導入により確立しようとするものであります。
本日の農業新聞にも掲載されていました、北空知農協管内におけるRTKーGPSの基地局設置で、農協営農センター、北竜、多度志と3地区に基地局を設けたというものです。私達の地元滝川市においても、本年度は農地耕作条件改善ソフト事業を活用し、RTK基地局をJA営農センター敷地内に設置し、GPSガイダンスシステム、効果検証、自動給水栓による最適水管理の検証を行っております。これからの大規模基盤整備とICT農業推進に取り組みを進めています。
本日ここ北竜町で、協議会研修会を開催させていただいておりますが、会場の設定や準備並びに設営等、早い時期から地元北竜土地改良区の近江理事長をはじめ、職員の皆様には、大変お世話になったことをこの場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
本日の研修会のお二方のご講演で、皆様が満たされることを願って開会のご挨拶とさせていただきます」。
▶ 地元理事長挨拶:北竜土地改良区・近江博信 理事長
北竜土地改良区・近江博信 理事長
「本日の研修会が北竜町での開催となり、多くの皆様にお越しいただき、心から歓迎を申し上げます。理事の皆様には、それぞれの改良区で適正なる運営や事業の推進にご尽力いただいておりますことを敬意を表したいと思います。
この研修会に、大変お忙しいところ植村真美 道議員もお越しいただき感謝申し上げます。札幌開発建設部深川農業事務所・馬渕所長様、空知北部耕地出張所・伊賀所長様、それぞれの幹部の皆様にはお忙しいところ出席いただいております。
日頃大変お世話になっておりますことをお礼申し上げます。
8月の成育農業予算(農業整備事業関係予算)が5,388億円で要求されています。昨年に対し122%の要求になっており、この後年末にかけて政府の概算が決定されます。管内の理事長さんと一体となって、予算獲得に努力させていただきたいと思います。
さらに本日講師を務めていただきます、空知振興局・田中 調整課長様、そして私達地元の黒千石事業協同組合。高田 理事長様にご講演いただきます。
本日の研修会が素晴らしい研修会でありますようご祈念申し上げて挨拶といたします。どうぞ、よろしくお願いいたします」。
▶ 来賓挨拶
▶ 北海道議会・植村真美 議員
北海道議会・植村真美 議員
「本日の北空知土地改良区運営協議会研修会にお招きいただき、心より感謝申し上げます。このように盛大に開催されましたことをお喜び、お祝い申し上げます。
この度の台風19号で被災された皆様に対しまして、お見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興を願ってご尽力されていらっしゃる方々に対し、敬意を表したいと思います。
10月はじめに、北海道の団体がお見えになり、様々な要求・ご希望を聞く機会をいただきました。その中でも、土地改良区の皆様のご意見を聞かせていただき、農業農村の整備の充実の促進、スマート農業、ICTを使った水管理についての新たな推進、災害冷害における迅速な対応、多面的機能における各地方の財政措置、貿易交渉における万全な処方などについて、様々なご希望をいただいております。
今、皆様の地域を視察・見学させていただいている中で、日々ご苦労を重ね、北海道の農業を支えてくださっている基幹産業の皆様、スマート農業、パワーアップ事業などについての現状などをお聞きしています。また、新規就農者の増加に伴い、UターンIターン等の担い手の問題おけるご意見を多数伺っております。
これからも北空知の農業基盤を整備していく方向性など様々な問題解決に向けて、皆様の貴重なご意見をいただきながら進めて参りたいと熱い気持ちでおります。
北空知の皆様の農業に対する熱い想いが、さらにこの地域に反映し、地域の発展に繋がりますことをご祈念申し上げます。本日は大変おめでとうございます」。
会場の様子
▶ 国土交通省 北海道開発局 札幌開発建設部 深川農業事務所・馬渕達也 所長
深川農業事務所・馬渕達也 所長
「本日の研修会が盛大に開催されますことお祝い申し上げます。日頃より、国営土地改良事業の推進などお世話になっていることに深く感謝いたします。
重ねて、近年、気象変動等があり、台風や地震が多発しております。農家の皆様の高齢化や労働力不足等なども重なりまして、土地改良員は大変苦労されていらっしゃいます。その中で適正な維持管理をしていただいておりますことに重ねてお礼申し上げます。
深川農業事務所は、開発局の組織ということで、国営土地改良事業の実施の部分を担当しております。深川農業事務所は、平成27年に新十津川と深川を統合し設立しました。現在、月形町から幌加内町までの広い地域の市町村における、区画整理事業、用排水事業などを担当させていいただいております。
令和2年度の農業農産整備事業の概算要求についての説明です。要求額が決まっており、それに基づき概ね120%強の要求をしております。具体的には、農業の競争力強化を図るため、担い手への農地集積・集約化、農地の大区画化・凡用化の推進、農業水利施設の長寿命化などを要求しております。
私達が担当しております直轄事業の農地整備事業につきましては、114%ということで、多少少ない数値になっております。
区画整理事業は、ご要望が多い事業ということで、140%と大きな予算をとっております。また、かんぱい事業は、大きな事業が終了してきており、91%の要求となっております。
昨年の補正予算で成立いたしました、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策につきましては、今回の概算要求には含まれておりません。今後予算要求をする段階で、検討するということになっております。
地域の制度要求においては、現在実施しております、国営緊急農地再編整備事業については、令和3年度までの時限立法になっております。これに変わる再編整備事業は、装置改良、自動走行の導入に必要な重要インフラ、ICTに対応する基本的なものを要求しております。
あくまでも概算要求なので、今後どのような負担率になるかは今後の決定内容によるものと思います。
台風19号で大変な災害がおきております。国土交通省・北海道開発局においても、現在、緊急支援ということで、グループ18班(90名)が定期的に東北被災地への応急対策支援活動を行っております。その他、路面清掃車、給水車、災害対策ヘリコプター等を派遣しております。
最後に、この研修会のご盛会と北空知の農業の更なる発展をご祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。本日はおめでとうございます」。
▶ 空知総合振興局 産業振興部 北部耕地出張所・伊賀優 所長
空知総合振興局 産業振興部 北部耕地出張所・伊賀優 所長
「北空知土地改良区運営協議会研修会がこのように盛大に開催されることを心よりお祝い申し上げます。改良区理事長をはじめ、理事並び職員の皆様方には、日頃より北空知管内の農業農村の推進並びに道営農業農村整備事業の推進に多大なるご尽力をいただいていることに深く感謝申し上げたいと思います。
昨年は長雨や豪雨に見舞われましたが、今年は春先から好天にも恵まれまして、平均気温も高めに推移し、北空知の基幹産業である水稲・小麦・大豆など平年並みと聞いております。
近年では、日本各地・北海道においても、台風や記録的豪雨による被害が相次いでいます。当管内においても、昨年は深川市・沼田町において河川の氾濫による水害、本年1月の豪雨により、秩父別町・雨竜町・新十津川町において、道路や用排水施設および農地が被災しましたが、今月9日に災害査定が終了し、来年の営農開始前には、工事が完成する予定となっております。
この間、土地改良区・役場皆さん、深川事務所など関係者の皆さんのご尽力によりまして、長期に及ぶことなく、査定が終了したことに対して改めまして感謝申し上げます。
当地出張所において執行しております農地農村整備事業に際しまして、28年度以降は、TPP関連対策や防災対策の補正予算が措置され、執行事業費として100億円を超え、ほぼ地元の皆様の要求に応えられる事業となっております。道理事業を実施している職場では、全道で一番の事業規模となっております。
営農計画を踏まえ、計画的に事業を進めている農家の方々やその調整を行っていただいている皆様方には、大変なご苦労をおかけしています。今年度は49兆円、来年度等とも同規模の事業執行を予定しておりますので、当所予算をはじめとした、予算確保に向け取り組んで参りたいと思います。
これからの農業課題として、農業者の高齢化や農家戸数の減少による1戸あたりの経営面積の増加が想定される中、圃場の大区画化、排水性強化による生産性の向上、スマート農業の導入による省力化が重要となっており、これらの問題に応えていくためには、農業生産基盤の整備が不可欠であると考えます。
近年は、台風やゲリラ豪雨などにより、農地・農業用施設に大きな被害が発生しており、こうした自然災害によるリスクに備えていくためにも、農地の排水改善や用地施設の耐震などの防災減災対策を進めていくことが肝心な任務となっています。
このように農業農地施設の果たす役割は重要となっており、計画的な整備が必要であり、強く求められているものと認識しております。北空知管内におきましても、各関係機関と連携し、必要な基盤整備を進め、北空知農業農村の発展に繋げていきたいと考えております。
最後になりますが、新聞やテレビなどでご存知の方も多いと思いますが、当出張所が監督する工事において、土砂崩れが発生し、お二人の方がお亡くなりになるという痛ましい労災事故が発生してしまいました。亡くなられたお二方には、謹んで哀悼の意を表したいと思っております。残されたご家族の心情を考えますと、いたたまれない気持ちでございます。その他にも関係する改良区や受益者の皆様、本日ご列席の皆様に不安とご心配をおかけすることになってしまい、大変申し訳なく思っております。
道営工事の中で死亡事故が発生してしまったことは痛恨の極みでございますが、現在は建設や警察署により捜査中であります。調査については今後明らかになってくると思いますが、これを教訓とし、多くの工事が施工中でございますので、職員はもとより、関係機関と連携しながら、二度とこのような悲惨な事故が発生しないよう注意深く工事を進めていきたいと思います。
今後とも事業の推進に対しまして、皆様方の一層のご協力をお願い申し上げるとともに、土地改良区並びにご列席の皆様方の益々のご発展をご祈念申し上げましてご挨拶とさせていただきます」。
▶ 研修課題
▶ 『土地改良法の改正について』空知総合振興局 産業振興部 ・田中伸彦 調整課長
空知総合振興局産業振興部調整課・田中伸彦 課長
「本日ご列席の皆様におかれましては、日頃より農業農村整備事業の推進、とりわけ適正な土地改良区の運営に日々尽力されていることに改めて敬意を表します。
本日の研修会は、土地改良区の運営関係と昨年改正された土地改良法について、主旨と背景について説明させていただきます。
地改良区の運営関係と昨年改正された土地改良法について
▶ 土地改良区とは
土地改良区は、ダムや水路などの建設、管理、区画整備などの農地整備などいわゆる土地改良事業を実施することを目的とし、土地改良法に基づいて設立された農業者の組織です。
土地改良事業は、その事業の目的や性格から、公共事業とし て位置づけられ、これを実施する土地改良区も公共団体と して強い公共的権能(加入強制、費用 の強制徴収権等)が付与けられています。
▷ 3分の2の同意で事業実施
土地改良事業には、その直接的な利益は農業者の個々の 農地にもたらされるという側面もあることから、事業実施に当た って、農業者の3分の2以上の同意が条件となっています。
▷事業地区内の農業者は当然加入
土地改良事業によって利益を受ける地区内の農業者は当然に加入し、土地改良区が行う事業に要する経費を負担します。
▷費用の強制微収
土地改良区は、事業に要する経費を当てるため、利益を受ける組合委員から賦課金を徴収いています。賦課金の滞納があった場合は、行政上の強制執行により徴収します。
▷税制の優遇措置
土地改良区は公共法人と規定されており、法人税法第4条2項の規定により、法人税を収める義務がないとされています。また所得税法においても、公益法人等に分類され、土地改良区が支払いを受ける利子・配当については非課税となっています。
▷土地改良区の地区数の推移
昭和35年(1960年)頃は、全国で13,000地区ありましたが、統廃合により、平成28年(1916年)には、約3分の1の4,585地区に減少。北海道の土地改良区においては、平成元年(1989年)に土地改良区統合整備基本計画を作成し、平成元年に134の改良区が61減少し、現在では73改良区となっています。
▶ 道内土地改良区の組織状況
▷地区面積の推移
全道的には広域化傾向にありましたが、近年は、用地の転用などにより毎年減少傾向にあります。空知管内の土地改良区は、平成27年(2015年)国営事業によりダムが完成したことから新規加入がありましたが、それ以降は横ばい傾向にあります。
全道の平均の1土地改良区あたりの地区面積は、約3,500ha、空知管内は平均で4,700haとなっており、全国平均より大型化の土地改良区が多いようです。北空知11区の土地改良区の平均は、約3000haの地区面積となっています。
▷組合員数の推移
高齢化や担い手の農地の集積により、全道および空知管内においても減少傾向にあります。平成25年度(2013年)から5年間で約10%減少しており、総代会制度の見直しになるきっかけとなっています。
▶ 道内土地改良区の財務状況
▷決算額・借入金残高の推移
全道的には、事業実施地区の減少や借入金の償還ピークが過ぎたことで、減少傾向にあります。空知管内においては、決算額では全道平均の約2倍となっています。支出額が他の管内より多いと言えます。国営や道営事業による圃場の大区画化にかかる事業が空知管内では盛んに行われていることや、維持管理に経費がかかっていることが原因のようです。
償還金残高は、全道で約300億の償還残高がありますが、その7割の210億が空知管内となっています。土地改良事業の実施が空知管内で盛んに行われていることがわかります。
▶ 土地改良事業の目的
土地改良事業は、『水』と『土』を整備して、地域の共有の社会資本といて維持保全を行うものです。地域住民と一体となって、農村空間『里』を作っていくことから、『水』と『土』と『里』を繋げて、『みどり』と呼び、こうしたネットワークを形成するという想いから、愛称『水土里ネット』と言われています。
▶ 土地改良制度のしくみ
▷目的
農業生産性の向上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大、農業構造の改善が目的となっています。
▷手段
目的を達成するための手段として、農業生産基盤の整備及び開発、土地改良事業の実施があります。
▷具体的内容
土地改良法の第1章から7章に規定。配慮事項として、『環境との調和』は、平成13年(2001)に法律が改正され、追加された事項です。
▶ 土地改良長期計画における土地改良区がはたすべき役割の拡大
長期計画は、法に基づき5年計画で策定されています。現在の計画は平成28年(2016年)〜32年度(令和2年・2020年)の5年間の計画となっています。この長期計画における政策課題を達成するために、土地改良区が担う役割を拡大しています。
合併等による組織運営基盤の強化、維持管理体制の再編整備、意思決定過程への女性の参画、役員等のマネジメント能力の向上等により一層大体制強化をはかる必要があります。
▶土地改良制度の基本原則
▷土地改良事業の施行にかかる一定地域と3分の2の同意
実際の運用にあたっては、ほぼ100%の同意率のものが、全体の73%をしめており、高い同利率のもとで事業を実施しています。
▷同意主義の例外
『施設更新』の事業で一定の条件を満たせば、同意なしに事業を実施することができるという場合もあります。
▶ 土地改良事業の参加資格
参加資格においては、土地改良法の第3条に規定されており、一般的には3条資格者と言われています。
▷3条資格の内容
1.土地改良事業の開始・変更等の賛否を表示する
2.土地改良区の組合員になる
3.国営・都道府県営事業の申請人となり、事業にかかる費用の一部を負担する
4.自ら一人でまたは他の資格者と共同して事業の施行者となる
▶ 土地改良事業の事業主体
土地改良事業の主体は、国、都道府県、農業協同組合、農地中間管理機構など団体が主に行っています。
▶ 土地改良区の設立手続き
北海道においては、平成14年度(2002年)に上川管内にある『てしおがわ土地改良区』が誕生。
▷手続き
一定地域を決定し、3分の2以上の同意を微集するなど国営・道営事業とほぼ同様の手続きとされています。
▶ 土地改良区の組織
組合員がいて、その代表者が総代、執行機関として役員、補助機関として運営委員会、事務を行う事務局があります。総会は、総組合員で構成する最高議決機関であり、組合員100人を超える場合に総代会を設置することが可能。法改正により、これまで組合員200人以上から100人に暖和され、一律30人以上の総代定数に変更されています。
▶ 土地改良区の組合員
土地改良区の地区内の3条資格者は、すべて土地改良区の組合員となります。全国の組合員数は、昭和35年(1960年)から比べると3分の2になっています。地区当たりの組合員数は倍になっています。離農などにより、農家件数は減少していますが、合併などによって、ひとつの土地改良区当たりの組合員数が増加していることがわかります。
▶ 土地改良区の業務
土地改良区が行う事業は、それぞれの定款第4条において定められています。事業態様は、70%が維持管理主体で、工事と管理の両方の事業を実施するものが19%で、約9割の土地改良区が維持管理を主体としています。北海道においても73土地改良区すべてが、維持管理を目的に設立されています。
▶ 土地改良区が行う施設管理
▷施設管理の体系
土地改良施設の管理は、造成した土地改良区等が維持管理を行います。国営・都道府県営土地改良区事業で造成した施設は、大部分が都道府県・市町村の土地改良区に対し管理委託又は条件付き譲与をし、それぞれの主体が維持管理を行います。
▶ 土地改良区の総代会
総代会は、土地改良区の意思決定を行う最高の議決機関です。総代会は、法第25条により、理事は、毎事業年度1回『通常』総代会を招集しなければなりません。必要なら、いつでも「臨時」総代会を招集できます。
議決事項は、法第30条により定められており、今回の法改正により、利水調整規程の設定や貸借対照表などが追加されています。
▶ 土地改良区の役員
役員は、5人以上、監事は2人以上。理事のうち、3/5以上は耕作者組合員、監事のうち1人以上は員外監事。
▷組合員と役員の関係
民法第644条により、土地改良区と役員個人とは委託類似の関係にあり、役員個人は土地改良区にたいして善管注意義務を負う。役員は、法令、行政処分、定款、規約、管理規程並びに総会の決議を遵守し忠実に職務を遂行しなければなりません。
▷兼職禁止
理事と監事、役員と職員は兼ねることはできません。
▶ 理事の職務
▷土地改良区の代表
知事の代表権は、土地改良区の行為能力の範囲内の一切の事務とします。理事が土地改良区のために行う一切の行為は原則といて土地改良区の行為となります。理事が複数人いる場合には、理事それぞれが単独で代表します。
▷土地改良区の事務の執行
理事は、毎年1回の通常総会の招集、法、定款及び規約等による事務の執行が義務付けられています。
▶ 監事の職務
土地改良区の財産及び理事の業務執行状況を監査します。法令もしくは定款に違反している場合は、総会または知事に報告することが規程されています。
▶ 役員の職責
役員の責任は、債務不履行上の責任と不法行為の責任の2つがあります。債務不履行上の責任は、理事会において法律や総代会の議決に違反したことにより、土地改良区に損害を与える場合。
▶ 役員の第三者に対する責任
役員が職務を行うにつき、故意または過失により他人の身体や財産を侵害し損害を与える行為があった場合は、損害賠償の責任を負うことになります。役員がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったとき、その役員は、第三者に対して連帯してその損害賠償の責任を負うことになっています。
理事は、区の経営上の責任を負うことを常に認識し、経営の実態を把握しておく必要があります。
▶ 年度別不祥事の件数
平成19年(2007年)から28年度(2017年)までの合計が、横領事件が34件で全体の46%を占めています(横領事件、不正経理事件の実例説明)。
▶ 不祥事を起こさないために
・内部牽制機能の充実:会計事務に複数の職員や役員を配置する
・外部監査を導入する
・役員による会計経理の手続きの適正化:銀行印の管理などで、適切な処理・厳重な保管が行われているかを検証します
・会計の複式簿記方式への移行
会場の様子
▶ 土地改良区の運営体制の変更
平成31年(2019年)4月1日より、土地改良法の一部が改正され、土地改良区の組合員資格や体制の改善に関する措置が講じられました。
▷准組合員制度の導入
・組合員でない耕作者又は農地所有者が准組合委員となり、総会の出席や賦課金・夫役の一部を負担することができます
・水路等の維持に取り組んでいる地域の活動団体が、施設管理准組合員となり、総会への出席や施設の維持管理に参加することができます
▷役員の資格要件の見直し
・理事のうち、5分の3は耕作者たる組合員であることが必要です
・監事のうち、1人以上は員外監事であることが必要です
▷総代会制度の見直し
・総代会の設置要件人数が今まで201人以上だったのが、101人以上となります
・総代定数の下限が、今までは組合員数に応じてのに人数が規程されていましたが、一律30人以上となります
・総代選挙を土地改良区の管理により実施することとなります
・総代が総代会に出席できない場合も、書面や代理人による議決が可能となります
▷利水調整ルールを明確化
総会の議決を経て利水調整規程を策定することで、利水調整ルールの決定方法(プロセス)を明確化することが可能になります。
▷貸借対照表の作成・公表が必要
複式簿記を導入し決算関係書類(貸借対照表等)を作成・公表することにより、財務状況の明確化や将来の施設更新に備えた計画的な積立手て等が可能となります。令和4事業年度から貸借対照表の作成が義務化とされました。
▷国による支援
・地方連合会による巡回指導を受けることができます
・税理士等の指導・助言を受けることができます
・複式簿記導入促進特別研修を受講することができます
・小規模土地改良区向け簡易な会計ソフトが開発・販売されます
・会計事務を合同で行うための土地改良区連合を設立できます。また、設立のための話し合いや事務機器の整備のための経費についての補助を受けることができます
・施設の資産評価に関して、地方連合会の支援をけることができます」。
以上、『土地改良法の改正について』の田中調整課長のお話が終了し、15分間に休憩後、『いのちの源 黒千石大豆』の高田理事長のお話へと続きます。
▶ 『いのちの源 黒千石大豆』黒千石事業協同組合・高田幸男 理事長
黒千石事業協同組合・高田幸男 理事長
「まず、黒千石大豆(くろせんごくだいず)そのものを知っていただくために、黒千石大豆をフリーズドライにした『そのままカリッと黒豆のお菓子』と『黒千石茶ペットボトル』を持ってきました。黒千石大豆商品は、限りなく添加物ゼロで作っています。栄養価も高く、健康的で美味しい黒千石を是非、味わってみていただきたいと思います。
配布資料
黒千石茶ペットボトルを配布
▶ 黒千石大豆とは
黒千石は、極小粒の大豆で、種皮は光沢のある黒色、子葉(種皮を剥いた子実)は緑色。大豆の中で、実が緑である大豆は、この黒千石だけです。昔は、空知管内では、軍用馬の飼料として与えられて、十勝では緑肥として扱われていました。
黒千石大豆とは
▷栽培時は、普通の大豆に比べて葉数が多く、
積算温度(播種から成熟までの毎日の平均気温を足した温度)が高く、通常の豆が2300度に対して黒千石は2700度が必要となります。この400度の差は、太陽の光を目一杯浴びて育つことを意味しています。
積算温度が高い黒千石大豆
この極小黒大豆「黒千石は、北海道の大自然の中で、太陽の力を沢山いただいている偉大なる豆だと確信しています。
▶ 歴史
黒千石は、北海道の在来種で、原種は蔓状になっていたものを、品種改良を重ね、栽培しやすい豆になってきました。1970年頃は、家畜もいなくなり、化学肥料の発達などにより、一旦栽培が途絶えました。
2001年に、森町で豆の研究を重ねていた農業研究家・田中淳さんが、収集してい豆の中から極小黒大豆である黒千石を発見。道南の江差町で、種を撒き、50粒のうち28粒の発芽に成功しました。
最初、寒い北海道では栽培は難しいということで、岩手県での栽培がはじまりました。当時、岩手県花巻市の栽培農家の視察に出かけ、世界的な豆の研究者である独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構の大豆300A研究センター・有原丈二 リーダーより黒千石栽培のご指導を受けました。
2005年、黒千石は北海道の原種であり、北海道での栽培を願う想いがつのり、黒千石は里帰りすることになりました。北竜町、滝川市、乙部町の24戸で黒千石栽培がスタート。
2007年3月に、黒千石事業協同組合を設立しました。
2007年3月・黒千石事業協同組合設立
▶ 栽培の苦労
積算温度が高く、葉も多いので、収穫時期が普通の大豆より遅いこともあり、収穫前に雪が降り、雪に埋もれてしまったこともありました。
▶ 窮地を救った生産者の真心
取引を行っていた中間業者の倒産や、雪に埋もれて収穫不能などで、生産者への支払いができなくなったとき、困難な状況に耐え、待ち続け、共に苦しみを乗り越えてくれた生産者の方々がいました。
当時100名ほどの生産者が二十数名にも減少しましたが、黒千石の力を信じ、協力し、栽培し続けてくださった生産者、応援してくださった消費者に方々のあたたかい想いのお陰で、今の黒千石が存在することを心から感謝しています。
▶ 早熟・耐倒伏性強、安定多収を目指して品種改良へ
三分一先生による品種改良「竜系3号」
2008年に、拓殖大学北海道短期大学・三分一教授に、極晩生かつ耐倒伏性弱の「黒千石」の品種改良を依頼。
2014年には、町長を代表とする『北竜町コンソーシアム』が農林水産省の補助金(3か年)を受けて、規模拡大、現地調査、子実成分分析、加工適正性試験の実施など強化がはかられました。約10年の歳月を費やして研究を重ね、品種改良を繰り返し、新品種『竜系3号』が誕生。
2018年より黒千石事業協同組合が生産する『黒千石大豆』の50%以上が『竜系3号』に置き換わる体制へ移行しています。『竜系3号』は、これまでの黒千石より成熟期が1週間〜2週間ほど早く、長茎、多収、耐倒伏性で、かつ、莢の着く位置が非常に高いため、コンバインによる収穫ロスが減ることで、実質的な収量の増加が見込まれます。
▶ 販売促進活動で生産者自ら積極的に黒千石をアピール
販売促進活動で生産者自ら積極的に黒千石をアピール
・「北のめぐみ愛食フェア」@道庁赤レンガ前(2008年から10年間出展)
・空知フェア@札幌どさんこプラザ
・「旭川駅マルシェ」@旭川駅構内(2011年から出展し8年目)
・さっぽろオータムフェスト@札幌大通公園(20??年から出展
・台湾高級スーパーマーケット「裕毛屋(ゆうもうや)@台中市(2017年から参加し3年目)
『有害添加物の無添加(農薬・放射能・添加物無し)』を宣言する店において、黒千石大豆が大人気!
消費者に生産者自ら売り込む
『2019よい仕事おこしフェア』@東京国際フォーラム」
全国229信用金庫が協賛のイベントで、国内521の企業・団体が出展。北海道からは6店舗が出展。
2019よい仕事おこしフェア(東京国際フォーラム)
▶ ネットショップ開設
直営・黒千石事業協同組合ネットショップをリニューアル開設(2016年〜)。
黒千石事業協同組合・直営ネットショップ
▶ 受賞
・2010年 第6回HAL農業賞『チェレンジ賞』受賞
様々な賞を受賞
・2014年:平成25年度きたしん「ふるさと振興基金・きたしん産業技術奨励賞」受賞:発芽黒千石納豆の開発に対して産業技術奨励賞
・2016年:高田理事長が公益財団法人日本特産農産物協会・地域特産物マイスターに認定
公益財団法人日本特産農産物協会・地域特産物マイスターに認定
2018年:内閣官房及び農林水産省が主催する「第5回ディスカバー農村漁村(むら)の宝」の優良事例に認定。全国からの応募数1015団体から優良事例32団体が選定(北海道からは98応募団体から3団体が優良事例に認定)。2018年11月22日に、首相官邸にて受賞式が執り行われました。
首相官邸にて受賞式「第5回ディスカバー農村漁村(むら)の宝」の優良事例に認定
2019年3月 北海道農政事務所主催の『受け継ぎたい北海道の食・動画コンテスト』で動画『元気の源・黒千石大豆』が優良賞受賞。
「受け継ぎたい北海道の食・動画コンテスト」優良賞受賞
2019年6月には、ディスカバー農村漁村(むら)の宝・第1回サミットが東京ミッドタウンにて開催され、第1回から第5回までの選定地区(143地区)を招待したサミットで、優良事例に選定された14地区が全国から参加集合。黒千石事業協同組合がサミット&マルシェに参加しました。
ディスカバー農村漁村(むら)の宝・第1回サミット(東京ミッドタウン)
▶ 数々の加工商品
黒千石ドン、黒千石きなこ、黒千石フレーク、黒千石フリーズドライ、豆ごはんセット、黒千石ペットボトル。
商品化がすすむ黒千石大豆
「発芽黒千石納豆」は、㈱豆蔵が開発販売した「なんとみごとな発芽黒千石納豆」が、北海道新技術 新製品開発賞食品部門優秀賞受賞(2016年10月)。豆蔵の社長曰く「発芽黒千石納豆は添加物無しの日本でNo1の商品だ!」というお言葉を信念にし、無添加の黒千石加工商品の販売しています。
「黒千石ドライパック」は千歳市にある『田中製餡株式会社」が製造。添加物なしで、黒千石を柔らかく蒸してドライパックにしたもの。
発芽黒千石納豆
▶ 黒千石事業協同組合の推移
生産者数の推移(現在51名の生産者)。
黒千石事業協同組合の推移
収穫量の推移(現在およそ200トンの安定した生産量での取引が続いています)。
収量の推移
▶ 展望
・生産者が喜んで意欲的に黒千石を栽培していただたいと思っています
・発芽を中心とした機能性の高い黒千石商品に取り組んでいきたい
発芽時に、酵素の働きにより胚芽中のギャバ(アミノ酸の一種)が増加。ギャバは、血圧上昇を抑える作用、脳の代謝を促す神経伝達物質として注目されています。
・黒千石の本来の味わい・風味をそこなうことなく、無添加のままで、消費者にお届けし、味わい喜んでいただき、ずっと「おかわり」をしていただけるよう真心こめて取り組んでいきたいと思います
・ネットショップを使って、日本全国の消費者の皆さんに黒千石大豆を知っていただき、美味しさを精一杯お届けいていきたいと思います。
展望
添加物の無い栄養価の高い黒千石大豆を食べて、健康的に元気に、これからの人生を楽しんでいっていただきたと思います。ご静聴、ありがとうございました!
動画「命の源・黒千石大豆」
▶ 閉会:芦別市土地改良区・中住昭 理事長(運営協議会副会長)
「本日は、ご多忙の中、多数のご出席をいただき誠にありがとうございます。ご来賓の深川農業事務所・馬渕 所長様、空知振興局・伊賀 所長様におかれましても、お忙しい中お越しいただき感謝申し上げます。
今日の研修の講師をしていただきました、空知総合振興局産業振興部・田中伸彦 調整課長、黒千石事業協同組合・高田幸男 理事長におかれましても、限られた時間の中で、興味深いお話をいただき、誠にありがとうございます。
今月に入り、本州では台風19号により大変な被害を受け、北海道においても被害を受けた地区に対し、心よりお見舞い申し上げます。来年に向けて、希望をもって取り組んで参りたいと思います。
これをもちまして、令和元年度北空知土地改良区運営協議会研修会を終了といたします。本日は、ありがとうございました」。
芦別市土地改良区・中住昭 理事長(運営協議会副会長)
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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子