2018年3月9日(金)
2月28日(水)13:30〜、3町(雨竜・沼田・北竜)営農改善推進協議会(会長:北竜町佐野豊 町長)主催による「3町地域農業者研修会」が、北竜町公民館・2階大ホールにて開催されました。町内外56名の方々が参加され、熱心に耳を傾けました。
3町(雨竜・沼田・北竜)営農改善推進協議会
「北空知農業の現状と課題について~水田農業維持にかんがえるべきこと~」と題して、妹背牛町の佐藤農場・佐藤忠美 代表、そして「平成30年度農林水産関係予算と米政策について」と題して、農林水産省北海道農政事務所 旭川地域拠点・門木勉 総括農政推進官のお二方にご講演いただきました。
配布資料・黒千石茶
司会は北竜町役場産業課・有馬一志 課長。
司会:産業課・有馬一志 課長
担当町として、北竜町・高橋利昌 副町長のご挨拶。
北竜町・高橋利昌 副町長
「今年は例年になく大雪で、何かとご苦労なことも多く、この後一気に進む融雪作業が続くものと思われます。今年は水は豊富にあると思われます。皆さんのたゆまない営農努力、さらに、お天道さまのご機嫌により、昨年同様、米の品質の高く収量の多い素晴らしい年であることを期待いたします。
本日は、農林水産省・門木勉 総括農政推進官、妹背牛町より、日本農業賞大賞を受賞された佐藤忠美氏にお越しいただき、大変ありがとうございます。心から御礼申し上げます。
本日の研修会が、皆様にとりまして、有意義なものとなりますよう、また情報交換、交流の場になりますことをご祈念申し上げ、歓迎のご挨拶といたします」。
会場の様子
▶ 「北空知農業の現状と課題について~水田農業維持に考えるべきこと~」
妹背牛町 佐藤農場・佐藤忠美 代表
佐藤氏は、今年第47回日本農業賞(個人経営の部)で大賞を受賞されました。
佐藤忠美氏
「日本農業賞(個人経営の部)で大賞を受賞して実感することは、仲間意識の大事さ、継続することの大変さ、繋がりがあってこそ結果をだすことができること、農業において地域を盛り上げることの大切さです。
寒冷地における北海道の稲作においても、常に忘れてはいけないことは、先人方の絶え間ぬ努力とこれまで培ってきた歴史です。これらの想いと努力を繋いでいくための農業を行っていかなければと思います。
厄介米から脱却できた北海道ブランド米は、お米の品種改良と技術革新に支えられて、低タンパク・適正アミロ米の品種開発が行われてきました。
100年物語「歴史」稲作
▶ (株)佐藤農場の経営概要
(株)佐藤農場は、平成29年度より法人化。作付面積42ha(水稲32.92a、小麦887a、地力えん麦25a)。
家族3人経営。
佐藤農場の経営概要
昭和ひとけたの親を持ち、小学校・中学校の時から農業の手伝いをし、高校時代から青色申告の手続きをやらされ、大変苦労したことを覚えています。
直播栽培においては40年前から考えていて、30歳代の時にスタートし24年が経ちました。面積が大きいと収量が低下するなど、障害が多くて大変苦労しました。
▶ 高品質・高収量の確保を徹底追求
佐藤農場での日本農業賞応募審査事項(1)
直播栽培における目標は、高品質(低タンパク質・適正アミロ)であり、高収量を確保することを徹底して追求してきました。
オーストラリアへ研修に行き「田畑輪作、耕起法(耕種的)、堆肥だけ混ぜて肥料をまかないで栽培する方法」など、環境保全型の作物作りを学びました。
▶ 乾土効果・水管理の重要性
私の経営での日本農業賞応募審査事項(2)
直播栽培は、乾土効果が稲の生育スピードに影響します。しっかり土を乾かすと移植も良くなってきます。水回り・水管理の難しさを実感しています。
▶ 田畑輪作の実施
直播栽培・移植栽培・畑作物(小麦)を各2年 ~3年づつ組み入れた田畑輪作を実施しています。
▶ 地域の取り組みと規模拡大志向の農家経営
家族経営には限界があるので、地域のまとまった取り組みの必要性があること。そして、規模が拡大する農家経営の傾向により、省力化栽培・低コスト化の必要性が求められる稲作作りの時代が訪れるのではないかと思います。
播種機などの機械は、共同購入・共同利用し、作業等はグループ単位で取り組むなどして効率化は図っていきます。
労働生産性、農業所得性、資本収益性などをどのように変化させていったら良いかをしっかりと考えていく水田農業経営を目指していく必要があると思います。
▶ 規模拡大時における目標
規模拡大時における目標
規模拡大時における目標としては、反収を落とさないよう、米の良品質・多収を目指す。適期作業の時期と工程を工夫する。労働の効率を良くすることで余裕を持たせる。結果、60kg当たりの生産コストの低減に取り組むことができ、儲かる農業と規模拡大の道が更に広がっていきます。
▶ 妹背牛町直播研究会(佐藤忠美会長)
平成6年設立、現在生産者46戸で構成。データに基づく、妹背牛町直播研究会での話し合いによる技術向上や情報の共有化促進。(参考情報「NII学術情報ナビゲータ」はこちら >>)
仲間意識・・・知恵を出し合う
妹背牛町在住の農業技術指導員(元普及員)の方に技術指導を受け、様々な試験を依頼した。その結果、各農家で生育用調査を実施し自ら動く体制を確立。
仲間同士で知恵を出し合ったり、機械の共同利用や協力体制が整う。様々な生育・収量調査を行い管理台帳を作成し、データ結果を元に普及センターの指導を受けながら分析し、成績検討会や事例発表等を実施。
会全体のレベルアップが図られ、技術向上や情報の共有が促進されました。
▶ 妹背牛町大規模農家の作付状況
移植44%、直藩24%、転作・直播による飼料米5%、転作・麦・大豆27%。
妹背牛町の大規模農家の作付状況(H29)
直播の年次別収量、苗立と収量の播種様式別比較データ(世界水準との比較など)、品質(タンパク質%)と収量データなど、様々なデータで比較分析を行っています。
▶ 直播栽培における作付者の意識改善の重要性
直播の収量が増えない根拠=作付者の意識改善
直播栽培は、土作り・肥培管理・水管理技術の追求など、個人技術の蓄積があってこそ高品質と収量の確保へと繋がります。こうした技術を学び習得するという作付者の意識改善が重要になってくると思います。
佐藤忠美氏
▶ 待望の直播専用品種「上育471号」
上育471号は、低温苗立て性が高く低コスト化が可能性(播種量を減らし、初期の落水期間を短縮)を持ち、アミロース含有量がやや低い品種として期待されます。
直播専用品種「上育471号」への期待
▶ 質疑応答
活発な意見交換が行なわれました。
質疑応答
▶ 「平成30年度農林水産関係予算と米政策について」
農林水産省北海道農政事務所 旭川地域拠点・門木勉 総括農政推進官
農林水産省北海道農政事務所 旭川地域拠点・門木勉 総括農政推進官
平成30年度農林水産関係予算総額2兆3021億円について、8項目の中から特に米に関する予算を中心にお話しいただきました。
1.担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進
2.水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施
3.強い農林水産業のための基盤づくり
4.農林水産業の輸出力強化と農林水産物・食品の高付加価値化
5.食の安全・消費者の信頼確保
6.農山漁村の活性化
7.林業の成長産業化と森林資源の適切な管理
8.漁業の成長産業化と資源管理の高度化
会場模様
規模拡大と省力化を両立していく直播栽培、
未来を担う持続的水田農業に、
限りない尊敬と感謝と祈りをこめて。。。
黒千石茶ペットボトル
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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子