2016年3月22日(火)
3月3日(木)、NPO法人北海道有機農業研究協議会の主催(後援・北海道)による「平成27年度北海道有機農業技術交換発表大会」が、北農ビル19階会議室(札幌市)で開催されました。
平成27年度北海道有機農業技術交換発表大会・会場
特定非営利活動法人 北海道有機農業研究協議会は2011年(平成23年)に設立、1990年(平成2年)3月の創立から26周年を迎えます。環境保全と安全良質な農産物づくりのために、土づくりを基本とした有機農業の普及を目指しています。
協議会では、実証農場による実践技術の調査・研究、技術セミナー、技術交換発表大会、現地研修会等の開催を通じて、北海道有機農業の振興に努めるなど、幅広い活動を展開しています。北竜町在住の佐藤稔 氏(北竜ひまわりライス生産組合長)が協議会の常務理事を務めていらっしゃいます。
今日の大会は、「生産者と消費者を結ぶ取り組みの推進と広がりを求めて」というテーマで、5人の講師による報告と総合討論が行われました。
北竜町からは、「インターネットで想いを伝える情報発信 ~北竜町ポータル」のケース~」と題して、北竜町ポータル運営管理責任者・寺内昇 氏、「有機栽培と販売を振り返って~有機トマト栽培と販売の経緯~」と題して、(有)ファームトゥモロ代表取締役社長・土居健一 氏のお二方が登壇し報告しました。
本日の発表
総合司会は、NPO法人北海道有機農業研究協議会・山本毅 事務局長。
NPO法人北海道有機農業研究協議会・山本毅 事務局長
発表にあたり、NPO法人北海道有機農業研究協議会・桑原眞人 会長より主催者挨拶。来賓挨拶を、北海道農政部食の安全推進局・小野悟 局長、北海道農業協同組合中央会農業振興部・浅野正昭 部長より頂きました。
▶ 主催挨拶:NPO法人北海道有機農業研究協議会・桑原眞人 会長
NPO法人北海道有機農業研究協議会・桑原眞人 会長
「有機農研は、10年ほど前に北海道の補助事業として『有機農業ネットワークづくり』のお手伝いをいたしました。セミナーなど生産者と消費者の連携を目的とする活動を行いました。その中で生産者からの要望は『有機農産物がなかなか売れない。売ってくれる場所がない。行政の方でなんとかしてくれないか』というもの。また消費者から出た声としては『何処で有機農産物が売られているのかが分からない。どんな有機農産物がいいのか分からない』。そこで、国・北海道は、有機農業を消費者に知ってもらう取り組みを進めて参りました。
現在、10年前とは比較にならない程、有機農業の知名度は上がってきたと思います。しかし、有機農業の面積も有機農家数も、期待していた数とはかけ離れたものであり、まだまだ有機農業の普及には程遠い状況にあります。このような中でTPPの影響を受けるようになると、経営が難しくなくなるのではないかと心配しています。慣行栽培は、大規模化による低コスト化で生き残ろうとしています。しかし、大規模化が難しい有機農業にとっては、どうようにして生き残っていくかは大きな問題であります。
本日のテーマは『生産者と消費者を結ぶ取り組みの推進と広がりを求めて』としました。TPPが発効した場合、私達の関わっている有機農業は、そして農業をはじめとする持続型農業は、どうなっていくのか。どうしなければならないのか。それを皆で考えたいというのが、本大会の趣旨です。
有機農業ネットワークで検討した、いかに生産者と消費者が結びついていくか、有機農業の知名度が浸透してきた今、どのような方向で取り組んで行ったらいいのか考えていきたいと思います。
ヨーロッパでは、有機農産物が慣行農業の2~3倍の価格で販売される状況は無くなりつつあるようです。アメリカでは、慣行栽培と同じように、有機農産物を世界中から集めて、専門のスーパーで販売が行われています。一方では、地域支援型農業、地域と消費者の結びつきを強める取り組みが増加しています。色々な国で、有機農業を取り巻く状況が変化しています。
この大会が、有機農産物も含めて、益々安い外国農産物の増加に対して、何をなすべきかを考える切っ掛けになればと思います。本日は、生産者と消費者を新しい手段で結びつけようとしている寺内さん、自ら生産し工夫し販売している小関さんと土居さん、消費者と生産者の連携に従事しながら販売している村瀬さん、農業応援団として多彩な活動をしておられる萬谷さんにご講演をお願いしております。この会が、有意義な会に成るように、祈念したしております」。
▶ 来賓挨拶:北海道農政部食の安全推進局・小野悟 局長
北海道農政部食の安全推進局・小野悟 局長
「食の安心安全への関心が高まっている中、どのように消費者ニーズに対応していくのか、有機農研のみならず農業全般の問題であります。本日は地域で有機農業に取り組まれている方々の貴重な報告をいただいて、意見交換・情報交換される貴重な機会です。
ところで、道の取り組みとしましては、有機農業推進計画に基づき、有機農業に関する様々な試作を続けております。現在の計画は、平成24年度からの第2期計画です。平成29年度からは、新しい第3期計画をスタートする予定です。平成28年度中に、新しい策を確定するとしておりまして、今まさに、其の計画の検討に着手した所です。
有機農業の普及には大変なご苦労があったというお話しを桑原会長からございましたが、2020年の東京オリンピックに向けて、食材の供給においてその調達をどうするのかということで論議がかわされています。
今後、こういったことを念頭におきながら、幅広く皆さんのご意見をお聞きしながら、新しい計画の検討を進めていきたいと思います。計画に関するご理解、ご協力を宜しく願いします。
最後に、生産者と消費者の結びつきをより一層高めるきっかけとなり、さらに発展されるようご祈念申し上げてご挨拶とさせていただきます」。
▶ 来賓挨拶:北海道農業協同組合中央会農業振興部・浅野正昭 部長
北海道農業協同組合中央会農業振興部・浅野正昭 部長
「TPP問題は、北海道にとって、大きな課題になることは間違いないと思います。JAグループの取り組みということで、農協を始め農業団体での改革が問われている所です。
昨年2015年11月、3年に1度のJA北海道大会を開催し、3年間の基本方針を提示しました。今回の大会では、550万人の道民の皆様とともに農業と農村を作っていくのだということを基本テーマとして決議させていただきました。
大きな柱は、農業の生産面では農業所得の2割向上、新規の担い手を倍増していくという目標を入れて農業の振興に取り組んでいくこと。更に、550万人の道民の皆様と農業・農協との繋がりを作っていく『550万サポーター作り』を掲げさせていただいております。食と農業に関して、様々な立場で応援をして頂きたいというものです。
ひとつの取り組みとしましては、若い世代の携帯の6割がスマートフォンをもっているということで、スマートフォンのアプリを開発する方向です。連動した情報に様々にアクセスをしていただき、身近に農業の現場を知って戴きたい。
さらに、新しいものと同時に、従来のように地元で作られたものを買って食べて頂きたい。例えば直売所で、地元の農産物を地元で消費し、買って食べて頂くことの取り組みも広がってきつつあります。北海道の農業は、カロリーベースで言いますと、200%普及率ということでありますので、半分は道外で消費して戴いているという日本の食料基地と言われている所以です。基本的な農産物の流通大筋は今後も変わっていかないと思われます。
一方で、地元の住民の方、また海外のお客様も増えていることもあり、訪問してくださる方をいままで以上に大事にしていく視点を持つことが決議の中で捉えられていることです。
有機農業の皆様には、『YESクリーン』の農産物の対応をさせて戴いておりますが、今まで以上に中身のはっきりしたものを位置づけて買って頂くことに力を注いで参りたいと思っています。
本日の大会が、今後有意義なものになりますようと祈念申し上げ、さらにお集まりの皆様のご健勝をお祈り申し上げお祝いの言葉といたします。本日はおめでとうございます」。
▶ 報告・座長:一般社団法人 北海道地域農業研究所・飯澤理一郎 所長(研究所HP >>)
座長:一般社団法人 北海道地域農業研究所・飯澤理一郎 所長
「本大会のテーマは、有機農研が創立以来追求してきた、生産者と消費者の連携という課題を、今の時点で大きく取り上げて行きましょうというものです。近年、TPPの問題が取り上げられていますが、TPPは、外国の農産物・畜産物を買いなさいという義務的なものではありません。我が国に入ってくる制度として、数量制限なしに自由に入ってくるようにしようというもの。消費者の皆さんが買わなければ、入ってきません。
本日のテーマを多面的に展開しながら、生産者と消費者の距離を縮め、お互いに日本農業の育成に対して想いを馳せることが大事だと思います」。
▶ 1.インターネットで想いを伝える情報発信~「北竜町ポータル」のケース~
北竜町ポータル運営管理者・寺内昇氏(北竜町集落支援員)
1996年(財)日本船舶振興会ホームページを開設。広報部長、情報システム統括グループ長などを歴任。20年間に亘りネットでの情報発信に従事中。
北竜町ポータル運営管理者・寺内昇 氏
1.自己紹介
2.本日の発表の目的
(1)これからウェブサイトを作りたい方 :開設の参考に
(2)既にウェブサイト・ブログをお持ちの方:情報発信内容の参考に
(3)組織としての情報発信をご検討の方 :ポータルサイト構築の参考に
3.インターネットで情報発信するということは
(1)ネット上に存在することは「ある」ということ
(2)ネット上に存在しないとマスメディアの取材対象「まな板」に乗らない
(3)同じ想いの人々と共鳴し、広がり、共に前進できる
4.北竜町ポータルの目的
・「町民が元気で輝く北竜町であり続ける」ことを、情報発信で支援
町民にとって当たり前なことに感動という光を当て、北竜町の価値を全世界に伝える
5.北竜町ポータルのパーツ
(1)本体:Google Sites(グーグル サイト)
① 利用料:無料 ② 容量:100MB ③ 有料の場合は容量30GB(年間6,000円)
(2)写真保管場所:Google Photos(グーグル フォト)
① 利用料:無料 ② 容量:無制限(1枚の画像サイズの上限16MP)
(3)動画保存場所:Youtube(ユーチューブ)
① 利用料:無料 ② 容量:無制限(1本の動画の上限128GB)
(4)アクセス分析ソフト:Google Analytics(グーグルアナリティクス)
① 利用料:無料
(5)アスセス結果表示ソフト:SeeTheStats(シーザステイツ)
① 利用料:$39.9/年
(6)ドメイン登録料:$10.0/年
6.消費者として知りたいことを取材・発信
(1)コンテンツ内容
① どんな人が? :氏名、年齢、写真、人柄はどう?
② どのような想いで:栽培する「熱い想い」を知りたい!
③ どうやって栽培?:どんな環境で、どのように工夫してこだわって栽培しているの?
④ 農産物の特徴は?:その農産物ってどんな特徴があるの? 美味しいレシピは?
⑤ どこで買えるの?:買える場所、どのように売っているの?
(2)表現
① 感動を「主婦目線」の文章で表現:専門用語は少なく、分かり易い文章で
② 全体と詳細の両面から写真を撮影:笑顔がいっぱいの温かい写真を目指す
③ 播種から収穫までをスライドショーの形で動画を作成:3分程度にまとめて見易く編集
7.ポータルサイトの力 = 総合力の力
(1)ポータル(Portal)とは、玄関、入り口の意味。北竜町ポータルとは、北竜町の入り口
(2)役場HP新着情報、町の団体HP新着情報など、関連団体のブログなどの町の情報へ誘導
(3)トップページは、毎朝8時ごろまでに更新。毎日、写真を変えて町の日々を伝える
(4)複数サイトにも簡略版記事をアップし、異なる読者層にアピールし、ポータルへ誘導する
① 道新ブログ(北海道新聞社) ② 北海道・北の道の駅(北海道地区「道の駅」連絡会)
③ じゃらん「サンフラワーパークホテル」(リクルート)
(5)画像利用は無料。ウェブで利用する場合は、クレジットとリンク設定を条件にしている
(6)ポータルサイトに掲載した記事数:3,100記事、紹介した記事タイトル:2,000件
8.アクセス状況(2011年5月~2016年1月末まで)
(1)累計ユーザー数 :59 万人
(2)累計閲覧ページ数:204 万ページ
(3)昨年8月の1日あたり訪問者数:平均 1,800人、最大 4,200人 閲覧ページ数:平均 6,200頁、最大 11,000頁
(4)今年1月の1日あたり訪問者数:平均 340人、最大 520人 閲覧ページ数:平均 1,030頁、最大 2,500頁
(5)2016年1年間は、2015年1年間に比べて、ユーザー数、ページ数共に50%増
(6)マスメディア(新聞・TV・書籍)に、北竜町ポータルの情報・写真が参照・採用される
9.プライベートサイト「エンジョイ!北海道」で有機農業の皆様のご紹介を予定しています
・今回のご縁に感謝して「エンジョイ!北海道」の「魅力的な人々」コーナーで、道内の有機 農業の皆様の地域にお伺いして、月1回を目処にご紹介させていただきたいと存じます。 「取材OK!」の方がいらっしゃいましたら、メールで
ご連絡いただければ幸いです。
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▶ 2.有機トマトジュースの現状と今後の商品展開
(株)谷口農場(旭川市)営業部長・小関拓哉 氏(農場HP >>)
兵庫県生まれ、酪農大学学園卒業。(株)谷口農場入社13年目。現在は営業中心。
(株)谷口農場(旭川市)営業部長・小関拓哉氏
▷ 株式会社谷口農場の概要、組織内容、栽培作物、経営基本姿勢さらに有機トマトジュースのの現状について
▷ ジュース・ゼリーの販売実績
トレンドに左右されない、自社独自の製品を地道に進めていく
▷ 加工品事業のあしあとについて
1987年:トマトジュース販売に着手
1988年:らでいっしゅぼーやのOEM取引において、お客様宅で製品事故が発生・製造中止。
1992年:自社果汁製造工場を新築。主力商品「ゆうきくん」製造販売
2008年:トマトゼリー製造販売
2013年:3種の野菜ジュースの製造販売(旭川・富良野・美瑛の特産野菜を活用)
2015年:野菜ジュースVegeMixの製造販売(飲み安した開発商品)
2015年:トマトジュース「ゆうきくん」で瓶の破片の混入により全量回収
事故が発生した際は、対応の速さが大切(参考として、当時の報告書を参加者に回覧)。
クレームの対処法などにおける情報交換などができればいいと思います。
農協などと連携して、地域にしかない地域独自の加工品の協同開発に努めています(ジュースやジェリー)。
野菜ジュース・ベジミックス
▷ 加工事業のメリット・デメリット
<メリット>
・規格外品を有効活用する。青果販売はいいもののみを販売できるので、品質向上へと繋がる
・トマトジュースの販売により、冬期間でも売上が見込める
・生のトマトを買ってくださるお客様が、生で美味しいからこのトマトジュースも美味しいよねと、
買ってくださるようになり、販売増加へと繋がる
<デメリット>
・専門スタッフを配置する必要があり、教育・知識など人への投資が必要になってくる
・冬季間の雇用問題
・機械などへの設備投資が必要になってくる
▷ 今後の取り組み
・お客さんの声をもっと聞いて商品づくりに反映させる
・地元農産物を使った美味しい加工品の共同開発・販売
・北海道産有機農産物を使用した美味しい加工品の開発
・露地トマトを使った美味しい加工品の開発
・生産履歴の見える加工品の表示・写真等の活用
・フェイスブック、インスタグラム、ラインなどのSNSの活用
▷ 年間イベントカレンダーの紹介
・味噌づくり体験・ピザつくり体験
▶ 3.有機栽培と販売を振り返って~有機トマト栽培と販売の経緯~
(有)ファームトゥモロ代表取締役社長・土居健一 (北竜町)(参考ページ >>)
(公財)北海道農業公社・北海道農業担い手育成センター・就農アドバイザー
(有)ファームトゥモロ(北竜町)代表取締役社長・土居健一 氏
▷ 農業への参入
・20歳代食品会社に10年勤務、30歳代に自営業(食品販売)の10年を経て、40歳代になり新たな方向として農業への参入を決意。農業を選ぶきっかけになったのが、北海道への旅行。こんな素晴らしい所で、農業をしてみたいと思い、1993年(41歳)に北竜町で研修に入り、2年間の研修を終え就農(43歳)。今でも規制概念にとらわれない農業をおこなっています。
▷ 就農、有機栽培への取り組み
・就農時は米作に取り組む。食糧管理制度は変わったが、米の新たな栽培・販売への参入は難しいとの思いに至る
・独自の生産・販売として、地元の生産者が取り組んでいない作物であるトマトを選択
・多くのトマト産地のなかで生き残っていくために有機栽培を選択
▷ 有機トマト栽培と販売の経緯
(1)初期(小規模段階)
・1999年(平成11年)よりトマトの自主販売を開始
・始めは規模が小さいため、近郊の直売所での販売
・最初は袋詰をしていたが、トマトをアピールする方法としてオリジナルシールを貼付、
するとお客様から「シールの貼ってあるトマトが欲しい」と要望が出始める
・固定客が増加していったので、個人でもブランド化できるのではないかと自信がつき、
栽培も拡大し収量も増加、有機栽培において重要なことは、収量・品質・美味しさ、そして販路拡大
(2)中期(中規模段階)
・規模拡大につれ、地元だけでは捌ききれなくなり、町外の量販店に販売を始める
・初期は飛び込みで販路を確保していたが、それだけでは捌ききれず、有機栽培に理解がある卸業者と知り合い
販路を拡大
・その過程で単にシールを貼って出荷するだけでなく、売り場の立場や流通の立場も考えたパッケージを提案する
重要性を認識する。常にまわりの状況や環境を把握し、それぞれの立場に応じた対応を変化させていくことが、
販売に結びつく大切なポイントになる
・今では、スーパー、量販店、中央市場へ置いてもらえるようになった
(3)後期(現在)
・ハウス規模を21棟に拡大する過程で取引先、量販店との信頼関係ができ、数社の大手量販店の定番商品として
安定した販売が出来るようになった
・量販店に流通する中で、パッケージだけでなく、遠方へのデリバリーに適した梱包へと改善することにより、
新たな得意先を開拓できりょうになった
▷ 農業のライフスタイル
・農業で面白いこと、他にはない経営形態が確立できること。たとえば、年の4か月を休みとし、夏は仕事、
冬は遊びとして、仕事と遊びを確実に分けたライフスタイルを構築できる
・農業は、自分にライフスタイルに合わせたビジネスチャンスを持てることが魅力な仕事だと考えている
▷ パッケージの形態
・以前、トマト販売で、美味しいトマトに緑のリボンをつけた。次に赤いリボン、そして黄色いリボンをつけた。
この赤・緑・黄色は、信号の色であることに気づいた
・パックの形態を考える上でも、コンビニ、スーパー、デパートなどあらゆる場所を回って、パック詰めにされたもの
を見て回った。まずは、多く販売されている商品のパック形態の真似をしてみる
様々なパッケージ
▷ビジネスチャンスは、「観察力の鋭さ」がキーポイント
・世の中で云われている「運のいい人・悪い人」、「ビジネスチャンスのある人、ない人」がいる
・アメリカにおける研究で、運の良い人と悪い人を分けて、検査を行った。2つのグループに分け、
それぞれのチームに新聞を読ませ、新聞の中の写真の枚数を当てさせた。その結果、運の良い人の答えはほぼ正解。
その新聞には、文章で写真が何枚使用されているかが記載してあった
・運のいい人は、新聞の全体を把握し、文章で数字を頭に入れていた。運の悪い人は、なんとなく全体を見渡していた
ので、数字に意識がいかなかった
・こうして、ビジネスチャンスがある人は、「観察力の鋭さ」にあるといえる。常に、観察する視点をもって、
あらゆる方向に意識をむけて、新しい情報をチャッチしていくことが大切だと感じている
自分の作った良いものを、良い形でお客様に届けたいという想いを、世の中の様々な仕組みを利用して、発展させていくことが大切なのでは無いかと思います。
▶ 4.HAL財団が行う産地と消費地の連携流通強化事業
一般財団法人 北海道農業企業化研究所流通開発部・アシスタントジェネラルマネージャー 村瀬愼治 氏(財団HP >>)
一般財団法人 北海道農業企業化研究所流通開発部・アシスタントジェネラル・マネージャー 村瀬愼治 氏
▷「HAL財団とは
・農業経営に企業的観点を取り入れて経営改善・向上に取り組む北海道農業者のサポート活動を行う一般財団法人
(非営利型)です。
・平成15年スタート、流通会開発部が平成18年にでき、ソフト事業で農業支援として農業試験場で品種改良など
様々な開発を行っています
・HAL財団の事業概要、HAL認証農産物(特別栽培)と流通販売方針(直接販売)、GLOBAL GAP認証と
ハラル認証、実需及び消費者から求めるものとは(日常業務の中で感じる事)などについての説明
▷ 個人経営300社の事務局のお手伝いをしています
・その中で、自分たちの作った農産物を生産者の顔の見える形で流通を発信していきたいという希望から、
HAL財団で、流通事業の支援ができないでかというお話を受けて、流通開発部が設立。
40名の生産農家さんの野菜を中心に、売り先をイオンにとし「グリーンアイ商品」である
(農薬3割、慣行肥料5割減の減農薬化学肥料)商品を流通しています
▷「北海道農業元気プロジェクト」立ち上げる
・10年経過 野菜関係100戸の生産農家、穀物・麦トータル200件登録
・生産地・農業経営に軸足を置いて、できるだけ消費者に近い形で販売するというやり方ですすめている
(財団から直接イオンに収める方法)
▷「HAL認証農産物」認証基準(特別栽培)
・基本は特別栽培農産物であり、更にHAL財団の独自の基準も設けてあります。全部で30項目(農薬基準、
施肥基準、環境保全基準、消費者交流基準)あり、それぞれの基準をクリアしたものを認証にしています。
▷ HAL財団 GLOBAL GAP(青果物規格)国内最大規模のグループ認証、現在メンバー50名
▷ 最近感じること
・国産農産物のニーズが増加していること。特にレストランのチェーン店、コンビニ、(そば、うどんのチェーン店、
国産のみの原料に変える)
・消費者の方々が草取りを体験し、農家の人々の大変さを知った上で、身体に良い安心安全な農産物を求めていること
を実感しています
・オーストラリアの有機米が美味しかった(減農薬、無化学肥料、美味しい)
・消費者は、生産者との「信頼関係」を求めている
・信頼をどうやって得るのか、地域独特の方法を取っていく
・コミュニケーションをどれだけ取っていくかを考えていく
・「人と人との繋がり・紹介」で情報が広がっていく
・産地の信頼を得るために、HAL認証している
・消費者の立場で選ぶ場合の視点は、地元に近い産地、安全なもの、生産者の顔がみえる商品、家族数に合った個数
が梱包されたもの、今季の中で最安値と表示されたもの
・トレース、産地、生産者、食味品質、安心安全なものを証明できるものが信頼を頂ける産地の条件
▷ 有機農産物に対する素朴な疑問
・生産サイドの経済的理由?
・地球的食料不足状況下での数量的確保はどうする?
・慣行栽培の農産物は安全・安心ではないのか?
・ある生産者から、次のような言葉を聞いた
「特別栽培だから高く売れる時代は終わった。しかし、特栽を続けるよ。特栽の土地を俺の代で終わらせて、
息子に引き継ぐわけにはいかない。特栽の土地は良くなっているので、栽培を続けて、いずれは息子に
受け渡していく」という生産者の言葉は、有機農産物の本質をついているように思いました。
有機農産物は、高く売る為に栽培するのではなく、安全な食べものを次の世代に受け渡していくために
やっていくものだと感じています
・日本国内での有機農産物の伸び悩みは何故?
諸外国(タイ・ハワイなど)には、オーガニック専門のスーパーや特設コーナーが存在するが、
人気があるのは何故?
▷ 食育の重要性
・HALのチアーズクラブ収穫体験会開催、生協での商品学習会、直接店頭に赴き、消費者
・積極的な食育の活動が、5年後10年後に大きな影響を及ぼし、最終的に消費者が、農業の応援団になって
いただけると思います
▶ 5.農の共感力~いま、求められているもの~
北海道6次産業化プランナー・シニア野菜ソムリエ 萬谷利久子氏(参考ページ >>)
1960年(昭和45年)、帯広生まれ。フリーアナウンサーとして情報番組のリポーター、ラジオ番組のパーソナリティを務める。シニア野菜ソムリエ、フードコーディネーター、北海道フードマイスターの資格取得。
シニア野菜ソムリエ 萬谷利久子氏
「北海道6次産業化プランナーとして、生産者の方と商品を作る、お店を開く、野菜を販売、販売促進、農産物のブランディングの仕事をしています。農業に近い仕事をしていることが、毎日の誇りであり、喜びです。今日は、有機農業者の方々や消費者の方々の沢山の生の声をお伝えいたします」と語る萬谷さん。
▷ 今、一番売れている女性誌『 VERY(ベリー)』の編集長の言葉
・主婦に視点をあてて、同じ高さで作っているのが特徴とした月刊誌
・雑誌に掲載する写真は、「写真に、撮影者の溢れんばかりの想いがあることが大切」という編集長の言葉
・編集長の視点は、リアルなヒアリング。町に出て行って、日々行動してヒヤリングをしている
・「プロフェッショナルとは」の質問に「これで良いと思ったらおしまい。美しいものを作ろうと思ったらおしまい。
一番大切なことは、情熱の持続です」と答えた編集長
・「心が揺れる、心が動く」ことがあってこそ、商品が売れる!!!
・消費者心理に注目して、心理をつかむことが大切
・「商品が飽和状態である今、物を売るには、経済力ではなく、心理学である」
(セブン-イレブンの鈴木 敏文さんの言葉)
▷ リアルヒアリングの大切さ
・「有機農産物」と聞いて、印象に残った言葉は「神話」
(なんとなく良い物だと理解できるのだけど、実際どういうものかが理解できない)
・どんな時に買うか、それぞれの日々の心理状態やニーズに応じて変化している
<買う場合の例>
・自分のためではなく、友人や家族の為に料理する時に買う
・自分はトマトが好きなので、トマトだけは有機農産物のものを買う
・買わない時の心理は、手にとって埃っぽい時(ビニール袋の質を変える、キラキラしたものに変えると良い)
・女子大生の声:身体に良い物。バラなら買う、わざわざ遠くに足お運んで買いに行く
・主婦の声:有機葉物はしおれたイメージがある。サラダは有機を買う
▷ 販売者からのリクエスト
・見た目(ビジュアル)重視、大きさを揃える
・旬の1品目を山盛りで入口入ってすぐの場所に陳列。その一品から料理にイメージを広げてもらう
・夕食のイメージが湧いてくるような展示のアレンジを工夫する
・スーパーなどの販売者は、買い物客の持つ様々なストレスを解消する意識 を持つのが大切
(夕食のメニューを考えるのが主婦のストレスになっている)
・有機農産物コーナーには、鮮度が大切、鮮度を感じて買う
・「みずみずしい野菜たちの顔」に、消費者は感動して手にとる、消費者は、野菜の生命力を感じ取っている
・新鮮な味を知り、試食し、美味しさを自覚して売ることが大切
▷実例として
・徳島県上勝町「葉っぱビジネス」・株式会社いろどりのスピード感が素晴らしい!
「流通システム・スピード感・モチベーションの高さ」が成功の元
・キョーエイ(KYOEI)徳島の食品スーパー(地域密着のローカルスーパー)
小ロットの袋詰が人気。生産者と消費者の交流の場をスーパーが提供しているのが特徴
※ 生命を育む有機野菜に「20%オフ」の表示は違和感を感じる(マイナスイメージ)
▷ ニオイの同じ所へ売る
・三石昆布のパッケージを変える事によって、食料品が、花屋にも雑貨屋でも販売できるようになる
今まではありえなかった発想が展開する。花を買ったときに何気に手にとる
・有機野菜と同じニオイ、ライフスタイルの顧客のきそうな場所が、天然酵母のパン屋さん
・リノベーションのカフェ (有機栽培を好む人の同じニオイを感じる)
・長崎県雲仙市:有機生産者のマーケットの広げ方として、「自分がときめく場所」「音楽など好きなもの」が
存在する場所、同じ感覚を持った人々が集まる場所にセッティングする。
自分のライフスタイル・生き方など感性で共感する世界感がある
・感性がフィットする、心がフィットする、自分がワクワクする場所が大切
▷成功事例
・赤井川村・どさんこ農産センター:「都会のふるさと」の意識
・名古屋市・オアシス21オーガニックファーマーズ朝市
「時間軸」の大切さ。オーガニックがフィットする時間帯がある(休みの日の午前中ゆっくりした時間)
・石川県・金沢大地(有機栽培農家 麦・米・大豆)
消費者同士が集う、情報交換の場がある。生産者さんと一緒に豆腐作り。コミュニティーの場がある。
自家菜園で栽培した農産物の販売
・ママさんの手作りケーキ販売
・農を育み抱きしめるコミュニティー「あぐり.ハグハグ」:自分の心に近い距離感をもつ生産者を実感できる
コニュミティー
▷ 東欧ベルリンで人気の食料品店:ライフスタイル提案型
・ライフスタイルや食べ方提案の中に有機野菜を持ってくる。
食のシーンが描けて、その中に入っていけるような提案をしていく
・有機栽培に対して海外ではおしゃれなイメージですが、日本ではなんとなく「有機栽培がまとっている空気感が
重い」。重い空気感を軽くすることによって、今もっているイメージが変化してくる
・「楽しく、軽やかな有機栽培のイメージ」を作り上げていくことが大切
▷ 時代の雰囲気をいつも感じて!
・日々の消費者の要望に答える企画を考える。時間軸を考える
・消費者が求める味の変化をキャッチしながら、日々進化していく
・大人気のカフェ、デパ地下に足を運んで、世の中の流れの感覚を直に感じて欲しい。自分で味を確認することが大切
・今日がゼロであり、今日が明日へ向かう新しい瞬間!!!
・365日、楽しんで生産者のために頑張りたいと思っています
・生産者の方が、毎朝しあわせな朝を迎えられることを心から願っております
▶ 総合討論・意見交換:座長・飯澤理一郎氏
(注)報告者の土居健一氏は所用により総合討議を欠席。
総合討論・意見交換
▷ 質問:情報発信をする上で、どのような努力をすればよいか?
・寺内氏:ブログ発信などでは「日々の継続」が大切。ポータルサイト構築の場合は、総合的な組み立ての構築が大切。
▷ 質問:生食用と加工用のトマトの区分をどのようにしているか?
・小関氏:ハウス栽培の中で、生食用は、青いものからピンクのものまで熟成の段階に応じて収穫。
ジュース用は、真っ赤に熟したものを収穫し、区別してます。
▷ 質問:有機野菜の売れ筋をどう考えているか?
・萬谷氏:野菜それぞれの 品種、見た目、形、素敵さ価値、その時の晴れ気分によって、お財布の緩み方が違う
▷ 質問:ファッション化の方向に向きつつある有機農業をどのように感じているか?
・萬谷氏:ファッション化に向かうことは考えてなく、色んな方法があります。一番は自分の顧客をしっかりともって、
有機栽培の価値を共有できたり、自分のことを信頼して頂ける生産者さんの所を訪れることが堅実な
スタイルだと思っています。生産者さんにとって、自分の価値を本当に理解してくださる消費者の皆さんへ
届けることが、自分にとっても嬉しいことだし、野菜たちにとっても嬉しいことだと思います。
200件程の質問をしてきた中で、生産者の感じている「しあわせ感」を感じるとることができます。
皆さんの意見を沢山聞くのは、ファッションや流行のためではなく、求めているものの価値観や
「しあわせ感」を知り、実感していくためです。
その場の空気感によっては、「オーガニックカフェ」のような素敵な空気感を纏っていることもあります。
▷ 質問:信頼・安心のような心理的なものを、どのように勝ち取っていくのでしょうか?
信頼を得る為に、努力していることはどんなことでしょうか?
・寺内氏:記事を書く上で、責任をもって実名で署名をする。また、完成した記事内容については、関係者の方々に
内容確認をして戴いた上で、ネットにアップする。また、アップした後も、間違いなどあれば、
すぐに訂正しています。こうした積み重ねが、記載の間違いを防ぎ、読者に安心感を与えることの源になり、
信頼関係が築き上げられていくと思います。
・小関氏:商品説明に写真などを使い、簡潔にわかりやすい説明で表現できるように務めています。
・村瀬氏:産地の信頼度アップは、各種認証をとっていくことです。第三者認証を取っていくことで信頼度を高めて
います。積み上げたものをいつでも公開できるようにしています。食育の活動が信頼に繋がるひとつ。
食品流通に関わっている方々、加工メーカーさん、バイヤー、営業マンさんに情報を伝えていくことが
信頼を得る方法のひとつになっていきます。実需の方々に情報を伝えることによって、安心や信頼が
広がっていくと思います。
・萬谷氏:表面をどんなにお洒落にしても、基本的な所がきちっと誠実なものでないと、消費者の方はすぐに
感じ取ってしまいます。信頼を得るには、買って下さる人や、自分に関わる方々の幸せをいつも考えている
ことが大事だと思います。そして発信するときは、生産者の笑顔、喜びの表現などのビジュアルが大切。
読むことより、感じることのスピード感は、何倍も早いです。
▷ 質問:是非伝えたいこと・想いについて
・寺内氏:地道に情報発信を重ねてから6年間が経過しました。その間北海道のあちこちをまわり、17万km
走りました。今回のご縁に感謝して、有機農家の方々の熱い想いを世界中にお伝えしていきたいと思います。
どこにでもお伺いいたしますので、ご連絡いただければ幸いです。
・小関氏:地元の原料を使って、そこでしかないものを作っていくこと、北海道の素材の力でアピールをしていきたいと
思います。情報交換などありましたら、どうぞ宜しくお願いします。
・村瀬氏:今年は有機大豆を使った商品を開発する計画が進んでいます。特別栽培の大豆が足りなくて探しています。
その関連の情報があれば宜しくお願いします。ごぼう・蕎麦も不足です。パクチーについても北海道での栽培を
お願いします。
・萬谷氏:去年6次産業アドバイザーとして、富良野の蕎麦栽培に関わっていましたが、生産者の方が必死で頑張って
いらっしゃる生産者の方々のお役に少しでも立てることは、とても嬉しいことであり喜びでもあります。
消費者の感覚をいつも失わずにと思っています。
▶ 挨拶:NPO法人北海道有機農業研究協議会・國廣泰史 副会長
NPO法人北海道有機農業研究協議会・國廣泰史 副会長
「今日のお話は、生産者の方々が有機農産物を販売する上で、たくさんのヒントがあったと思います。一つでも参考にして、有効活用されることを願っています。ありがとうございました」との國廣副会長のご挨拶で閉会となりました。
会場模様
四半世紀の時を越え、
時代の変化に伴って、新しく進化し続ける有機農研の活動、
そして、生命育む魂が宿る有機農産物の広がりと発展に、
大いなる尊敬と感謝と祈りをこめて。。。
北竜町 日の出(撮影:2016年3月13日)
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▶特定非営利活動法人 北海道有機農業研究協議会 <ホームページ>
・札幌市中央区北2条西1丁目10番地 ピア2・1 5階
・011-210-6768
・詳細情報はこちらから検索(内閣府NPOデータベースより)
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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子