農薬節減米「ひまわりライス」を支える農機具「無人ヘリコプター」の技能研修

2015/02/11 15:08 に 寺内昇 が投稿   [ 2015/02/12 13:53 に更新しました ]
2015年2月12日(木)

2月4日(水)、北竜町三谷地区にて、ヤンマーによる産業用無人ヘリコプターのオペレーター技能研修が開催されました。


産業用無人ヘリコプターのオペレーター養成教習
産業用無人ヘリコプターのオペレーター技能研修


 農薬節減米「ひまわりライス」を支える最新農機具「無人ヘリコプター」

北竜町産ブランド米「ひまわりライス」を栽培しているのは、150戸程の農家で構成されている北竜町ひまわりライス生産組合(佐藤稔 組合長)。

1988年(昭和63年)頃から農薬節減米栽培に取り組み始め、2005年(平成17年)には、町内の全ての水稲農家が、使用した農薬成分を北海道の慣行農業に比べて50%に削減しました。

翌年2006年(平成18年)には、生産情報公表農産物JAS規格を水稲で取得。この規格により、「ひまわりライス」のトレーサビリティが確保されました。

お米1袋毎に、ロットNo.をホームページで検索するとによって、お米の生産者・圃場・使用農薬・肥料成分を調査することができます。 100戸以上の生産組合が、お米で「生産情報公表農産物JAS規格」を取得したのは日本で初めてで、現在でも日本で唯一つの生産組合とのことです。

ひまわりライスは農薬節減米。お米栽培で使用する農薬は、北海道の慣行農業で使用している農薬の成分数22成分に対して、半分の11成分しか使いません。 使われる農薬(病害虫の駆除)の種類は厳格に守られていて、定められている種類以外の農薬を使うと「ひまわりライス」のブランドから外されます。

この農薬散布として栽培管理ビークルが使用されていますが、「無人ヘリコプター」に移行するケースが多くなってきました。 そこで、北竜町の三谷地区では、無人ヘリコプターの採用を決定し、2014年に「三谷地区防除組合(小松正美代表)」を設立。2015年4月からの活動にあたり、5名のオペレーター候補が、産業用無人ヘリコプターのオペレーター技能研修に参加しました。

今回の研修は、 農林水産航空協会の委託を受けたヤンマーが実施する「スカイスクール」。
10名が、1月23日~2月9日に参加。 北竜町からは6名が参加(三谷地区のオペレーター5名、小豆沢地区1名)しました。


小松修、高田、西野友也、後藤敦、善岡龍哉、角川
北竜町から無人ヘリコプター技能研修に参加した北竜町の6名の青年
左から:小松修さん、角川蓮さん、西野友也さん、高田俊樹さん、後藤敦さん、善岡龍哉さん


無人ヘリの導入について:三谷防除組合・小松正美 代表

三谷防除組合・小松正美 代表 「今、防除作業に使っている栽培管理ビークルでは、圃場がぬかるんだ時、車輪がはまり込んで出られなくなることがあります。ぬかるんだ状態から脱出するのに、4時間〜5時間かかることもあります。また、積載している農薬は満タンで500kgもあり、場合によっては全量廃棄のことも。防除作業は大変な作業なのです。

そこで登場してきた農機が『無人ヘリコプター』。圃場がぬかるんでいても、変形地でも素早く確実に散布できます。
『これからの時代は無人ヘリでしょ!』ということで、三谷地区の水稲栽培農家が集まって、無人ヘリを使った防除作業を行う三谷防除組合を設立しました。

ヘリの導入費用は、農林水産省『攻めの農業実践緊急対策事業』の補助金を活用しました。導入価格の1/2が、地域農業再生協議会を通じて助成されます。残りの費用はリースでの支払いとなるので、無人ヘリ導入の初期費用は不要です。リース料は、無人ヘリの利用料で賄います。
さらに、オペレーターの養成費用については、地区全体の防除作業を請け負うことを条件に、町から助成が受けられます。一人のオペレーター養成には60万円程かかりますが、50%の30万円が町からの助成金として交付されます。

運営経費を算出する基礎としては、防除面積は140ha。3回防除するので、延べ防除面積を520haとして、諸経費を計算しています。また、耐用期間は、10年、または1,000時間となっています。

様々な助成制度を活用することにより、今まで以上に効率の良い農作業を行っていくことが可能になります。これからの若者たちが積極的に取り組んでいけるよう力を尽くしていきたいと思います」

という小松正美代表のお話です。


三谷防除組合・小松正美 代表
三谷防除組合・小松正美 代表


ヤンマーヘリ&アグリ(株)北海道事務所・矢成昭輝 所長のお話

「ヤンマーヘリ&アグリは、一般社団法人 農林水産航空協会からの委託を受けて、「無人ヘリコプターオペレーター等の技能研修と認定」を行っています。

無人ヘリを製造しているメーカーは、ヤマハ発動機(株)とヤンマーヘリ&アグリ(株)の2社。北海道への導入数は、約半分づつとなっています。現在北海道では、280機の無人ヘリが導入されていて、その防除面積合計は11万4,000ha。年2.5回の使用で、延べ防除面積16万haです。

無人ヘリの用途は、水稲防除がメインですが、麦の雪ぐされ防除等にも使用されます。また帯広などの畑作エリアでも使われています」。


ヤンマーアドバンスヘリコプター AYH-3
研修に使用された「ヤンマーアドバンスヘリコプター AYH-3」・カセット式タンク


「無人ヘリコプターの操作にあたって、最も大切なことは『一にも二にも安全』です。
風速は地上 1.5mにおいて 3m/秒以下なら飛行可能。作業者と機体の距離を20m 以上とることと決められています。水稲(液剤少量散布)の場合は、高度3~4m、速度10km/h~20km/hとなっています。そして、飛行する距離は、目視できる範囲ということで150m以内です。
また、圃場でホバリングすると、防除が偏ったり稲が倒伏したりするので、ヘリの操作には充分に注意を払います。

三谷防除組合さんに導入される機種は、今回の研修で使っている機種の新型『YF390』です。
新設計の制御システムにより飛行姿勢の安定性が高まっています。また、高精度GPSが採用されていて、飛行速度も正確に把握することができるので、高精度で均一な散布が可能になっています。

2014年より規制が変わり、無人ヘリコプターの総重量が150kgに拡大しました。そこで、新型になって積載重量が増え、農薬を24リットル(12リットル☓2タンク)まで積載できます。水稲防除は、1haに約8リットルの農薬を使うので、1回の飛行で3haの防除ができます。
散布に要する時間は、1haについて約8分。1日に40haほどの防除作業が可能です。

さらに、今後『YF390』は、施肥にも使えるようになります。
無人ヘリを施肥に使うと、圃場の中で収量が異なる場所毎に、適切な施肥を実施することが可能。その結果、施肥量が減り、経費を下げて安定的な収量が得られるようになります」

など、新型機「YF390」について様々な機能・性能についてお話くださいました。


真剣に操作に取り組むオペレーター研修生たち 
真剣に操作に取り組むオペレーター研修生たち


恵岱岳へ向かって
恵岱岳へ向かって


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◆ 関連ページ

ヤンマーヘリ&アグリ株式会社・農業 ホームページ
産業無人ヘリコプター・YHF390(2015年1月発売)


◇ 撮影・編集=寺内昇  取材・文=寺内郁子