身心の健康に大切な「油」、でも意外と知らない「油」のこと。分かり易くお伝えできればと思います。 

植物油の生産【No.05】

 1.経済情勢に左右される油糧種子の生産

主な油糧種子の世界の生産量は、人口増加等による油脂需要の増加を追いかけるように増加しています。
油糧種子の生産は、天候の変動と生産農家の播種意向によって左右されます。

特に、油糧種子の生産に適する地域は他の農産物にとっても生産に適した地域となることから、生産農家は、限りある耕地をどのような作物に配分して利用すると経営として最も効率的であ るかを考慮して、生産の意思決定を行います。

農家は、播種の数か月前に市場価格などの指標によって他の農産物との経済性の優劣比較を行い、自らが有する農業機械や労働力の配分を考慮して作物を選択、そして現実の播種時期におけ る気温と土壌水分という天候条件を考慮して、最終的な作物別の播種面積を決定します。

一旦播種しても、天候条件が不良で発芽しないような場合には、急いで別の作物に切り替えることもあ ります。播種が終了すると、その後は生育中の気温、日照、水分が生産量と品質を決定する要因になります。

2008年にリーマンショックの後、世界的な信用不安から投機資金が農産物市場に流入したこともあって、とうもろこし、小麦、油糧種子などの農産物の国際価格が高騰して史上最高値を記 録し、その後急落するという激しい変動がありました。

農産物価格は、天候の他、需要の増減を背景に、生産量の過半数を占める大豆の価格変動につれて他の種子の価格が並行的に動くことが一般的です。


資料:一般社団法人 日本植物油協会HP
資料:一般社団法人 日本植物油協会HP


上記の図1にあるように、実はひまわりは世界で4番目に生産の多い油糧種子なのです。
しかし、食用油として国内ではあまり目にすることが少ないですよね。その理由は後程、詳しくご説明させていただきます。

油糧種子の生産量とそこから発生する植物油の生産量は同じ比率ではありません。なぜなら含まれる油分が植物ごとに異なるからです。また、必ずしも種子から油を生産するとは限らない(種子のまま利用など)こともあります。

例えば、下記表にありますようにトウモロコシは油脂関連では、世界で大量に生産される穀物の一つですが、とうもろこし油となると、その原料の胚芽部分は全体重量の数十分の一、かつ含まれる油分は約40%となるため、トウモロコシの生産量は多くてもその油は少なくなってしまいます。油をとるための原料というよりは、トウモロコシという穀物の副産物ということですね。表にはありませんが、国産原料である米油も同じです。(下表:ウィキペディア)


資料:ウィキペディア
資料:ウィキペディア


 2.植物油の生産量(出典:日本植物油協会HP)

そこでここでは、「植物油の生産量」について数字を見てみましょう。
世界の植物油生産や貿易量に関しては、前述の10油糧種子から得られる油に、果肉から抽出するパーム油とオリーブ油、副産物利用のとうもろこし油を加えた13種の植物油の統計が整理されています。


資料:一般社団法人 日本植物油協会HP
資料:一般社団法人 日本植物油協会HP


図1と図6を比べると面白いことが分かります。図1には出てこない「パーム」が、図6では油最大の生産量として登場しています。

これは原料のパームが種子では無く、果肉から生産されるためです。
よって、世界で一番生産される植物油は「パーム油」ということになります。パーム油は他の原料に比して非常に特徴があります。

 ① 単位面積当たり収穫油量が多い(大豆の約8倍。年に数回結実する)
 ② 日本では、家庭用では殆ど使用されていない(常温で固形のため業務用が多い)
 ③ コストが比較的安いため、食用以外の用途にも使用が増えている(BDFなど)

2013年・2014年の植物油の生産量は全体で1億7,413万トン、このうちパーム油が5,936万トン、大豆油が4,444万トンでこの2つの油種が世界の植物油市場を主導しています。
日本で最も多く生産・消費されている菜種油は、世界では第3番目に多い植物油となっています。


次回は(No.06・10月予定)、「植物油の流通」についてのお話しです。


東郷さんの油の話 


東郷さんの油の話