身心の健康に大切な「油」、でも意外と知らない「油」のこと。分かり易くお伝えできればと思います。
植物油と栄養【No.02】
▶ 1.植物油と栄養
日本は、いま世界一の長寿国とされています。厚生労働省「平成24年簡易生命表」では、女性は世界で最も長寿の座を取り戻し、男性はわずかな差で5位でした。平均寿命(現在0歳の子供が保つと想定される平均的な余命)は女性が86.41歳、男性が79.94歳でした。戦後間もない昭和22年(1947年)には女性が53.96歳、男性が54.66歳でしたから、驚異的な伸びであると言えるでしょう。
平均寿命が大幅に伸びた理由として、医療の進歩、生活環境の改善と並んで、食生活の向上による栄養摂取の改善が大きく貢献したと考えられています。食生活の向上については、特に食肉類、乳・乳製品類、油脂類の摂取量の増加が特徴的で、このうち脂質の摂取についてはこれまで緩やかに増加してきましたが、この数年は除々に減少する傾向にあります。過剰摂取の懸念があるとの風潮という要素に加え、高齢化の進行が脂
質摂取に抑制的にはたらいているものと考えられます。
実はこのことは重要な問題を含んでおります。というのも近年、高齢者の栄養不足についての懸念が高まっていることがあります。「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の脂質摂取に関する特徴として、2005年版ではそれまで摂取エネルギー比率を15~20%としてきた70歳以上年齢層の摂取目標量を、20~25%に引き上げたことが挙げられます。簡単に言うと、高齢になっても健康な体調維持のため良質の脂質
をとりましょう、っていうことですね。
▶ 2.日本人の脂質摂取の現状
現在の日本人の脂質摂取は下表の通りです(一日当たり)。この数値を見られてびっくりされる方が多いかもしれません。
男性の「58.3g」、女性の「50.3g」って大さじでいうと、油は実に4杯前後の量になります。ほとんどの方は「私はそんなに多くの脂質は取っていない!」って思われているかも?
1日に摂取される脂質のうち植物油、バター、マーガリンなど明らかに脂質(油脂)と分かる食品から摂取される脂質は20%程度(図1)で、80%は他の食品から摂取されています。これを「見えないあぶら」と称しています。脂質の摂取管理は、この「見えないあぶら」を含めて行わなければなりません。
厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成23年度)によれば、一人1日当たりの脂質摂取量は54gで、そのうち42.7gが見えない油となっています。
次回は(No.03・7月予定)、「バランスの取れた食生活」についてのお話しです。
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