認知症サポーター養成講座の内容を私なりにわかりやすくお伝えしたいと思います。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。
幻覚 ~100人のこども~【05】
2016年8月15日(月)
《北竜町はひまわり一色》
8月に入り、まさに夏本番といった感じです。
北竜町は先月より、第30回ひまわり祭りを開催しています(8月21日まで)。
ひまわりの里は150万本のひまわりが咲き、その風景はまさに絶景です。
数々のイベントが開催されております。ひまわりは例年、8月中旬までご覧になれます。
ぜひ、北竜町まで足を伸ばして素敵な夏を満喫していただけたらと思います。
最終日の8月21日(日)に「北商ロードレース大会」というマラソン大会に私も10㎞にエントリーすることにしました。ひまわりの里や田園風景を眺めながらのランニング、爽快に駆け抜けたいものですが、運動が苦手な私にもはやそんな余裕はありません。自分のペースでなんとか完走することを目標に準備をすすめているところです。
≪幻覚 ~100人のこども~≫
私が若い頃に、介護の仕事で体験した話になります。
その日は夜勤でした。
深夜帯、利用者様の安否や睡眠状況を部屋を巡回して確認します。
巡回では、なかなか寝付けない方がいたり、お部屋がわからない方や、体調が急変する方もいます。身の引き締まる思いで、暗がりの中、注意深く、おひとりおひとりの様子を観察します。
巡回中、お部屋に入ると「ちょっと」と、Aさん(女性利用者・100歳・アルツハイマー型認知症)が私の姿をみかけて声をかけました。
Aさんは、読書好きで、マイペースで、穏やかで、普段会話していても聡明な感じが伝わってくるような人でした。生活をみていると、自分の事はなんでも自分でやるという気構えというのでしょうか、確固たる信念みたいなものがAさんにはあったように思います。
「ちょっと、あんたきなさい」と私を手招きして呼びました。夜中にAさんがこういう風に起きて呼ぶことはなかったので、ちょっと不安な気持ちを持ちながらそばにいきました。
Aさんは、「ねえ、わたしの寝床の周りに100人くらいいるでしょ。こどもが」と私の足元を指さして笑ったのでした。私は、その言葉と笑顔が怖くて足がすくみました。Aさんに「誰もいませんよ」といい恐怖心でその場を立ち去ってしまいました。
Aさんは「ほらそこにもいるし、こっちにきなさい」と喜びながら、なにもない空間に手招きをつづけました。
これは「幻覚」「幻視」といわれるBPSD(周辺症状)です。Aさんにしか、みえないものがみえていたのです。
こういう時、どういった対応をすればよいのでしょう?
これはケースバイケースですから、その人それぞれ、ちがいはありますが
① 否定したり・怒ったりしてしまうと本人を余計混乱させてしまいます。
「だれもいません」と頭ごなしに否定しない。まず、話をよくきき心情を理解することが大切です。 「お子さんがたくさんきていますね」と時には共感することで、本人が安心してくれるケースもあります。
突拍子もない話に聞こえることが多いのですが、本人はいたって真剣です。話を理解した上で、本人を安心させてあげるような返答がのぞましいと思います。
②体調を確認する。熱がないか、水分不足で脱水症状になっていないかチェックする。高齢になると、なかなか水分をとることが難しくなります。脱水になると、意識がもうろうとしたりすることがあります。
接し方でBPSDは改善することがあります。
Aさんに上にある対応をあてはめて説明しますと…。
①まず「Aさん、どうしましたか?」と本人のそばにいき話を伺います。
Aさん「ベッドのまわりに、こどもたちたくさんいるでしょう。みんなよくきてくれたわね」と喜ばれています。Aさんは床を見ながら手招きしたり、あたまをなでる動作をしており、私もAさんと一緒に喜んでみる。Aさんも満足した様子。
②Aさんに夜も遅いことを説明する。
Aさん「なんだかにぎやかだったわね。楽しかった」。
「そうね、もう遅いからきょうはやすむわね」と私の顔をみつめいいました。
さきほどまでいた子どもたちの姿はもうみえなくなったようです。
「お身体の具合はどうですか?」とたずねると、「喉が渇いたみたい」と言葉がかえってきました。飲み物をのんでいただき、そのあとAさんは、眠りました。
100人もベッドの周りにこどもがいるって今考えても、不思議な世界です。
≪錯覚≫
壁の「シミ」が光の当たり方によって、なにかの顔のようなものに見えたり、私たちにも見間違うことはあります。いわゆる錯覚ですが、視力が低下したり、思考力や判断力が低下していることから、「シミ」とうまく識別することが難しい場合があります。「シミ」を隠したりする配慮や、照明、物の配置といった部分で環境をみなおすといったことも症状の改善につながることがあります。
≪レビー小体型認知症≫
レビー小体型認知症の症状として、リアリティのある幻覚や幻視が特徴です。
実際にはないものが「ありありとみえる」「はっきりとみえる」という感じで見え始めます。
『あの窓の外に中年の男がじっと立ってみている』。
対応例としては、
・否定したりせずに、まずは話をききましょう
・普段座るソファの位置を窓側にむけない。カーテンをしめる
・実際にその場所(中年の男が立っている)にいき、触ったりしながらなにも危害がないことを見てもらい大丈夫であることを伝え、安心してもらう
『壁にたくさんの蟻がのぼってきてる』
・否定したりせずに、まずは話をききましょう。
・壁に蟻が実際にいるかのように、ホウキではいて落としてチリトリできれいにしたようにみせてみましょう。「窓があいていたから、はいってきたんです。もういなくなりましたから大丈夫ですよ」と伝えてみるのもよいかと思います。
《まとめ》
○ 幻覚や幻視が見られた際は、不安感を募っている場合が多いので、まずは本人の話を聞きましょう
○ 本人の話を、否定しない。怒って否定すると余計に混乱を招きます。共感の姿勢で
○ 熱や脱水などおきていないか、体調の確認をしましょう
《ネコ好きのおばあさん》
10年以上前の話です。
施設で暮らしているBさんは、
朝から玄関にある椅子に腰掛けて
過ごすことが好きな方でした。 Bさんは、アルツハイマー型認知症でした。
施設の入り口である玄関には、様々な方が行き来しますから、社交的で、愛嬌のあるBさんは、いつもニコニコと挨拶を交わしていました。 施設のまわりには、野良猫がいるようでBさんは、玄関から見えるネコが気になっていました。
Bさんにねこのことを聞いてみると
『ねこ、すきだよ。うちで飼ってたからね…。』
話の途中で、玄関にねこの姿をみかけると
『ミーちゃん、ほらきた!おいでおいで!』と嬉しそうに満面の笑みでねこに声をかけていました。
ミーちゃんはしだいにBさんになつくようになりました。
それから半年くらい経ちました。
玄関には、お気に入りのねこのミーちゃんがいつでもいるようになりました。 Bさんは、じぶんの食事をエプロンや袋につめてネコに持っていくことが習慣になっていました。最初のうちは、おすそわけ程度の量だったのが、しだいにネコにもっていく量が増えてエスカレートしていきました。
Bさんは喜んで玄関前に、じぶんのご飯をもっていきました。ミーちゃんも食べきれない量でした。玄関前は毎日、掃除をしなくてはならないようになり、同時にBさんの食事を食べる量も減っていきました。
だいぶ長くなりましたので、ミーちゃんのつづきの話は次回掲載したいとおもいます。
北竜町ひまわりの里(撮影:香味尚之)
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