(株)みずほ 密苗の旅 2026 第1便 | ななつぼし栽培記録 始動雪原に描く豊穣への第一筆

2026年3月16日(月)

3月14日(土)、北竜町の農業法人・株式会社みずほ(小松正美 代表取締役社長)の1年間にわたる水稲栽培「密苗・ななつぼし」の記録が始まりました。約100ヘクタール以上の圃場を管理する大規模経営体が挑む春の第一歩は、融雪剤の散布。佐々木康宏 町長の激励訪問で幕を開けた朝礼から、雪原をクローラーが駆ける散布作業、そして密苗技術や即応予備自衛官の採用まで、北竜町農業の未来を切り拓く挑戦に迫ります。

ななつぼし栽培記録 始動雪原に描く豊穣への第一筆

3月14日(土)、北竜町は一面の銀世界。気温は4〜5℃、まだ冬の名残が色濃く残る朝のことです。

株式会社みずほの事務所に、北竜町の佐々木康宏 町長が激励に訪れました。朝8時から始まるミーティングに合わせての訪問です。

今年、北竜町ポータルでは、株式会社みずほの水稲栽培(密苗・ななつぼし)の1年間を追いかけます。第1回となる今回は、すべての始まり、融雪剤の散布からスタートです。

株式会社みずほの概要

株式会社みずほは、北竜町を拠点とする農業法人です。旧農事組合法人みずほから、2023年1月に組織変更し、小松正美氏が代表取締役社長を務めています。

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小松正美 代表取締役社長を中心に!
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管理する農地は約100ヘクタール、3つのエリアに分かれた広大な圃場で、水稲を中心に大豆、そば、とうきびなど多品目の栽培を展開しています。事務所を拠点に、毎朝のミーティングで1日の作業を決定し、チーム一丸で農業に取り組む経営体です。

朝礼:佐々木康宏 町長の激励訪問

朝8時、事務所に集まったスタッフたち。テーブルの上には作業スケジュール表や圃場の地図が広げられ、真剣な表情で打ち合わせが進みます。

この日は特別なお客さまが。佐々木康宏 町長が、新しい農業シーズンの幕開けに合わせて激励に訪れました。

株式会社みずほの朝のミーティングに佐々木康宏町長激励訪問
株式会社みずほの朝のミーティングに佐々木康宏町長激励訪問
小松正美社長との交流。。。
小松正美社長との交流。。。
株式会社みずほ事務所全体
株式会社みずほ事務所全体

事務所は、スタッフの熱気が満ちています。1日の中でここで段取りを決めて、どこまでやるかを話し合う、それが、みずほの朝の日課です。

融雪剤散布:春を呼ぶ最初の仕事

なぜ融雪剤を撒くのか

北海道の稲作は、雪との闘いから始まります。
3月中旬、まだ田んぼは厚い雪に覆われています。しかし、春の農作業を始めるためには、少しでも早く雪を溶かさなければなりません。融雪剤は黒い粉状の資材で、雪の表面に撒くと太陽の熱を吸収し、周囲の雪より早く溶かすことができます。

広大な田んぼを前にして。。。
広大な田んぼを前にして。。。

クローラーで雪原を走る

融雪剤散布の現場では、まずフォークリフトで大袋の融雪剤をクローラー型トラクターの緑色のホッパーに投入します。ずっしりと重い融雪剤の大袋を2袋吊り上げ、ホッパーに流し込む作業。背後には、まだ雪に覆われた広大な田んぼが広がっています。

フォークリフトで大袋の融雪剤をホッパーに投入する作業
フォークリフトで大袋の融雪剤をホッパーに投入する作業

2台のクローラーが息を合わせながら、白い雪原に黒い融雪剤の筋を描いていきます。背景には暑寒別岳の山並みが白く輝き、北竜町の雄大な風景が広がります。

黒い煙を吐いて雪原を走り回るトラクター
黒い煙を吐いて雪原を走り回るトラクター

「たぶんあそこは上がれないかもしれない。後回しでいいかな?」「まだ4℃、5℃だから、溶けるまで10日近くかかるかな。いや、1週間ぐらいかな」。

スタッフ同士が現場で声を掛け合いながら、雪の状態を見極めて作業を進めていく姿。自然と対話しながらの農業が、ここにはあります。

2台のトラクターが走り回るグレーに染まる雪原
2台のトラクターが走り回るグレーに染まる雪原

自然との対話

「あっちの黒いところ(融雪が進んでいるところ)がまだ残ってるから、こっち側から入るしかないな」。

雪の状態、溶け具合、地形の起伏を見ながら、どこから散布するか、どの順番で回るか。マニュアルにはない、長年の経験と感覚が問われる仕事です。

融雪剤を撒いてから雪が溶けるまで、約1〜2週間。自然のリズムに寄り添いながら、春の到来を待ちます。

密苗(みつなえ):北竜町から未来を拓く栽培技術

密苗とは

株式会社みずほが導入している「密苗」は、従来の稲苗栽培を革新する技術です。

従来の慣行栽培(稚苗栽培)では、育苗箱1箱当たりの播種量が乾籾で120〜140g程度であるのに対し、密苗では250〜300g(催芽籾で約300〜360g)と、約2倍の種を高密度に播きます。

この技術により、10アール当たりに必要な育苗箱数が、慣行の15〜18箱から5〜8箱程度にまで激減。育苗にかかる労力、ハウスのスペース、培土や資材のコストを大幅に削減できるのです。

密苗のメリット

  • 労働負荷の劇的削減:
    育苗箱の数が3分の1に。運搬総重量と反復回数が大幅に減り、春の農繁期における従業員の腰痛や疲労蓄積といった労働安全衛生上の課題を根本から解決します
  • 設備投資の抑制:
    育苗箱の数が減ることで、既存のハウス面積のままで約3倍の面積分の苗を育成可能に。新たな育苗ハウスの建設が不要になるという、極めて強力な財務的メリットがあります
  • 移植作業の効率化:
    田植機への苗継ぎ(苗箱の補給)回数が約3分の1に圧縮。1ヘクタールの大区画圃場で途中の苗補給なしに植え切ることが可能になるケースも多く、作業効率が飛躍的に向上します

みずほにおける「ななつぼし」密苗栽培

みずほが水稲栽培の主力としているのが、北海道を代表する良食味米品種「ななつぼし」です。粘り、甘み、ツヤのバランスが絶妙で、冷めても美味しさが長持ちすることから、全国の消費者や中食・外食産業から極めて高い評価を得ています。日本穀物検定協会の食味ランキングでは長年にわたり特Aを獲得し続けるブランド米です。

「ななつぼし」は耐冷性に優れる一方で、極端な密播状態では初期の葉色の抜け(肥料切れ)が目立ちやすいという品種特性があります。みずほでは、この特性に対応するため、育苗培土の肥料設計を見直し、密苗専用の肥効コントロールが行える資材を採用。

さらに、北海道特有の低温・過湿による病害リスクに対しては、ハウス内の微気象(温度・湿度)のモニタリングと、物理的な換気管理の徹底、そして土壌のpH管理を極限まで精度高く行うことで、化学農薬に頼りすぎない健全な密苗の育成を実現しています。

密苗導入の投資と効果

小松社長は語ります。

小松正美社長
小松正美社長

「密苗はもう5年やって、今年で6年目ですね、本格的には。なんでこんな楽なこと、みんなやらないんだろうと思いますよ(笑)」。

この言葉に、密苗技術への確かな手応えと、もっと広まってほしいという願いがにじみます。

しかし、密苗への移行には、その地の気象条件の適合、田植え機・育苗箱・播種機などの設備更新が必要です。

「全部設備を入れ替えるとなると、田植え機、箱、播種機、一式揃えないといけないからね」と小松社長。ポット苗だと1枚500〜600円ほどかかる育苗箱も、密苗用なら300円程度。一気にやり替えると負担は大きいものの、箱数が3分の1で済むことを考えれば、長期的な経営メリットは明らかです。

収量面でも手応えは十分。慣行栽培と比べても大きな成果が出ています。

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即応予備自衛官:農業と国防を結ぶ新しい働き方

即応予備自衛官制度とは

株式会社みずほのもうひとつの特徴的な取り組みが、「即応予備自衛官」の雇用です。

「即応予備自衛官」とは、普段は民間企業で社会人として働きながら、有事の際には現職自衛官とともに第一線部隊の一員として直接的な作戦任務に就く制度です。年間30日間の訓練参加が義務付けられており、高度な練度を維持しています。

即応予備自衛官の令和4年度末(令和5年3月31日現在)の所属人数は7,981人。その運用は陸上自衛隊のみに限定されています。

農業法人と即応予備自衛官の相性

農業法人が即応予備自衛官を雇用するメリットは、意外なほど大きいものがあります。

  • 農閑期と訓練期間の一致:
    即応予備自衛官の訓練の多くは、農閑期にあたる11月〜翌年2月の冬季に集中して実施されます。北海道の農業法人にとって、冬季は農作業がほぼ停止する時期。この農閑期を訓練に充てることで、農繁期の人手確保と訓練参加を両立させることが可能です
  • 経済的メリット:
    雇用企業には防衛省から協力報奨金として、即応予備自衛官1人あたり年額42,500円が支給されます。訓練参加中の従業員に対しては、日額16,000円(最低保障額10,400円)の訓練招集手当が防衛省から直接支給されるため、企業の人件費負担が大幅に軽減されます
  • 人材の質:
    即応予備自衛官は、自衛隊での厳しい訓練を経験しており、体力、規律、チームワーク、危機管理能力に優れた人材です。農業法人にとって、こうした資質を持つ人材は極めて貴重です
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R8作業スケジュール:1年間の農業カレンダー

ミーティングルームの壁には、令和8年(2026年)の年間作業スケジュールが掲示されていました。水稲、大豆、そば、とうきびの4品目について、月ごとの作業が色分けされた一覧表です。

年間作業スケジュール
年間作業スケジュール

水稲の1年

  • 3月:融雪剤散布(今回の取材)
  • 4月:ロータリー(耕起)、元肥施用
  • 4月下旬〜5月:代搔き、ラジヘリによる初期剤散布、播種
  • 5月:田植え
  • 6月:溝切り、ラジヘリによる中期剤散布
  • 6月下旬〜7月:ドロイ(排水管理)、ラジヘリによる後期剤散布
  • 7月〜8月:基幹防除(3回)
  • 9月〜10月上旬:稲刈り

融雪剤散布から稲刈りまで、約7か月にわたる長い道のり。今回はその最初の一歩を踏み出したところです。

多品目経営の全体像

水稲だけではありません。大豆は5月下旬のディスク作業から10月の収穫まで、そばは7月の播種から8月下旬のそば刈りまで、とうきびは4月の播種から7月上旬の収穫まで。4品目がそれぞれの時期に重なり合いながら、1年間の農業が営まれていきます。

この多品目の作業をチームで切り盛りしていくからこそ、毎朝のミーティングが欠かせないのです。

密苗の育苗管理:科学と経験の融合

密苗の育苗では、従来以上に繊細な管理が求められます。1箱に300gもの種子を播種するということは、約1万粒以上の種子が狭小な空間で競合することを意味します。

3つの管理の柱

  1. 徹底した温度・換気管理:
    発芽が揃い、緑化が完了した後の硬化期においては、ハウス内の温度を慣行よりも低めに維持することが鉄則。日中はこまめにハウスのサイドビニールを巻き上げ、新鮮な空気を入れて過湿を防ぎ、夜間も極端な保温を避けます。ずんぐりとした充実した苗(ズングリ苗)に仕上げることが目標です。
  2. 灌水(水やり)の制限:
    水分を与えすぎると軟弱徒長を助長し、根マットの形成も甘くなります。朝にたっぷりと灌水した後は、夕方には培土の表面が乾いて白っぽくなる程度まで水を絞る「床土の乾湿のメリハリ」が、強固な根を張らせるための絶対条件です。
  3. 土壌pH管理:
    病害を予防するため、種子消毒を徹底することはもちろん、使用する培土のpHを4.5〜5.0程度の弱酸性に厳密に保つことで、病原菌の活動を抑制します。

これらの繊細なマネジメント手法が現場の生産者に広く共有・確立されたことこそが、過去の省力化技術(乳苗など)とは異なり、密苗が実用的な技術として広く受け入れられている最大の理由です。

みずほの圃場:約100ヘクタールの全体像

ライフセンターの壁には、株式会社みずほが管理する全圃場の航空写真地図が掲示されています。3つのエリアに分かれ、それぞれの圃場に番号が振られた精密な管理体制が一目でわかります。

  • 第1エリア:圃場番号1〜32、303〜306:合計約32.8ヘクタール
  • 第2エリア:圃場番号55〜150:合計約31.8ヘクタール
  • 第3エリア:圃場番号169〜259:合計約37.3ヘクタール

3エリア合計で約100ヘクタール。青色で示された水田区画が大部分を占め、黄色やオレンジ色で示された区画が大豆やとうきびなどの畑作区画です。この広大な農地のすべてに、今日この日から融雪剤が撒かれ、春の準備が始まったのです。

1年間の航海スタート

一面の雪原に、赤いクローラーが黒い融雪剤の筋を描いていく。その光景は、まるで白いキャンバスに豊穣への第一筆を描くかのようです。

株式会社みずほの小松正美 社長は「密苗技術への確信」を語り、「即応予備自衛官の雇用」という新しい働き方にも積極的に取り組んでいます。

北竜町の農業は、ただ米を作るだけではありません。自然と対話し、新しい技術に挑戦し、多様な人材とともに歩む。そこには、この町に脈々と受け継がれてきた「和の心」が息づいています。

これから1年間、融雪剤散布に始まり、育苗、田植え、生育管理、そして秋の収穫まで。株式会社みずほの「ななつぼし」密苗栽培の全記録をお届けしてまいります。

次回は、育苗の準備をお届けする予定です。どうぞお楽しみに。

春作業が可動したグレーに染まる田んぼ
春作業が可動したグレーに染まる田んぼ

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