2020年1月20日(月)
2019年10月22日(火)、公民館大ホールにて、「第4回ひまわりの里基本計画策定委員会」が実施されました。隈研吾氏をはじめ、委員の方々を中心に、傍聴者の方々も交えて、活発にディスカッションが行われました。
会議の様子
総合司会:北竜町役場産業課商工ひまわり観光林務係・吉田浩幸 係長
「北竜町の知名度の向上、通年を通して北竜町に来ていただく、さらには、販売・拡大につなげていく、そのためには、ひまわりの里を含めて、北竜町全体をどのようにしていくかを考えていきたいと思います。
北竜町の未来を考えて、中にいる人も外から来る人も皆がワクワクするような魅力的な北竜町を作っていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします」と吉田係長。
議事進行:立正大学・鈴木輝隆(すずき てるたか)特任教授
建築家・隈研吾(くま けんご)氏:ひまわりの里の方向性について
「ひまわりの里には、素晴らしい要素が沢山あります。全体的には、それらの要素を繋げていくことを考えています。繋げ方によって相乗効果が生まれます。それほどお金をかけずに、何倍にも魅力的な良いものにして、たくさんの人々に魅力を感じてもらおうということを目的としています。
1.新展望台「大きな木の展望台」:ひまわり畑のシンボルツリー
ひまわり畑のシンボルツリーとして、展望台をより高くし、魅力的にして、新しいモニュメントになるようなデザインを考えてみました。
バリアフリー対応で、エレベーターのある展望台をデザインしています。高さ9mで階段でも上れます。トップテラスは、6m×7mの広さで、シーズンオンの混雑時でも余裕をもって見学できるな構造になっています。エレベーターはシースルーにし、上っていくたびに、変化していくひまわりの里の景色を楽しめるように考えています。
メインは鉄骨の構造ですが、木を上手く利用して、まわりに馴染むような自然なデザインにしたいと思っています。高さが異なるテラスごとに景色が変化し、360°見渡せる屋根付きの眺望スペースをデザインしています。
平面計画・立面計画
・ゆとりのある眺望スペース
・エレベーター設置のバリアフリー
・高さを変えたり、360度見渡せる屋根付き眺望スペースを考えました。屋上はオープンです。
大きな木の展望台・参考イメージ
1.静岡県熱海市のカフェ「COEDA HOUSE」
8cm角の棒状のヒバ材をランダムに組み合わせて、一本の巨大な樹木のような建築物を考えます。
2.ドイツ・ミュンヘン瞑想施設「WOOD PILE」
ルードウィッヒII世のノイシュバンシュタイン城にも近い森の中に建つ、瞑想のための建築。ガラス張りの中に木が見えるような構造になっています。
2.新観光センター
新観光センターとして、レンタルサイクル・迷路受付などができる施設を考えています。
額縁(フレーム)的な考え方を取り入れたデザインです。L字の建物を建て、その建物中央の空間から、ひまわりの里が象徴的に見えるような設計を考えました。ひまわりの里が絵のように縁取られて、効果的に見えます。
ひまわり畑と交わるコの字型配置:北竜町の特別な体験ができる魅力的な場所
駐車場の所から入っていくと、吸い寄せられるように「ひまわりゲート」に向かい、ひまわりの里が見えてきます。「ひまわりゲート」は、額縁効果により、ひまわり畑が縁取りされた額縁の絵のように見え、一層素敵に鑑賞できるデザインです。
右に向かうと展望台があり、さらにいくと「ノンノの森」へと繋がっていきます。
店舗エリアの前に大きな飲食スペースを配置するのは、現在の観光センターと同じです。しかし、「ひまわり畑」が目の前に広がる部分がそれまでとは異なり、ひまわり畑を眺めながら、おしゃべりを楽しみながら、飲食ができるようになります(図面/緑:店舗エリア、黄色:飲食エリア、ピンク:広場エリア)。
北竜町だけで、北竜町の特別な体験ができる魅力的な場所になります。
ひまわりの縁側
屋根だけあって、下がデッキになっている屋外スペース。外にテーブルを置いて、飲食できるコーナーになります。
3.新観光案内所
現観光センターをスポーツセンターと観光案内所に特化した施設として改修。現在冬期のスポーツセンターとしての機能を存続させて、さらに観光案内所の機能も設置した施設として改修していくデザインです。
駐車場に面したコーナーを観光案内所・協力金受付へと改修し、その部分の外壁をガラスにすることによって、視認性の高い観光拠点とします。
中央のアリーナ部分は、通年利用できるスポーツ施設とします。夏のひまわりシーズンでもスポーツができるようになります。現在の建物は雨漏りがあるので、雨漏り用防水加工の改修を行っていく必要があります。
憩いが生まれるノンノの森
展望台と繋がる道を整備し、森で憩えるストリートファニチャーや、南方向に芝生をは拡幅し、ひまわり以外の魅力を創造します。
ノンノの森を整備します。ひまわり畑と繋がっているようにするために、遊歩道を整備します。今のコンクリートの歩道をなくして、ひまわり畑を広げ、ノンノの森に芝生を敷き、芝生からランドスケープのひまわり畑を望むようになデザインを考えています。
南側の芝生部分の様々な使い方(マルチユース)を考えていきます。
ストリートファニチャー
ストリートファニチャーとして、屋外仕様の家具や芝生を整備していきます。ストリートファニチャーの例として、フランスのパビリオン「KOMOREBI(フランス シャトー・ラ・コスト)」を紹介ます。セザンヌが愛した南仏のサント・ヴィクトワール山を望む丘の上に、樹木のような有機的なパビリオンです。
イタリアのパピリオン「CODAMA(イタリア・アルテ・セラ)」は、イタリアの環境アートの聖地、アルテ・セラの森の中で58mm厚のカラマツの無垢材を組み合わせ、金物も糊も使わずに高さ4mの球形のパビリオンです。こうした象徴的なパビリオンが設置されれば、人も集まりやすく楽しめると思います。
5.トレイラーハウス
ひまわりの開花時期に合わせ、カフェを移動させ回遊性を高めます。全体を繋げていく事によって、ラウンドスケープの価値が倍加していくようなデザインを考えます。
展望台・観光センターと意匠性の調和が取れた移動型店舗。トレーラーハウスは、庇(テント)のあるもので、暑い日も日陰となり、雨の時も休めるものを丘の中腹に設置すればと考えています。
意見交換
この後、町民との様々な視点からのディスカッションが行われました。
・店舗 側の直射日光について
・庇・ガラス等について
・展望台エレベーターについて
・通年使用できる施設について
・新しい観光資源について
・木組みのシンボルマークになる展望台について
・額縁効果のある「ひまわりゲート」について
・トイレの設置について
・夢のあるひまわりの里構想について
・ワクワクするようなプランに感動
・店舗のバックヤード、搬入通路について
隈研吾氏の締めのお言葉
「これらのものは、あくまでもイメージであって、予算など様々な問題などつめて進めていくことになります。今後、北竜町にとって最適なものを目指していきたいと思います」と隈研吾氏のご挨拶があり、飛行機の時間の関係ということで、ご退席されました。
マルシェ株式会社・谷垣雅之 取締役会長
「おむすびコンテスト」についての話
「北竜町のランドスケープは素晴らしいものですが、北竜町のひまわりライスも素晴らしい価値があると思います。ひまわりライスを加工して、北竜町の皆さんに喜ばれるようなものができないかと色々思案しました。8月25日に、サンフラワーパーク北竜温泉で『おむすびコンテスト』を実施させていただきました。
おむすびコンテストの優勝作品となったものを、9月から2か月かけて、関西の20店舗でテスト販売をしました。『チーズベーコンおむすび』と『お好み焼き風やきおむすび』の2品を合わせて、2,000人前の販売となりました。かなりの評判でスタッフも驚いていました。
このおむすびは、多くのお客様から美味しくて大好きと言われ、必ず売れると実証されました。これからは、このおむすびレシピが、北竜町を中心に北空知(空知)地区でどんどん広っていくことが私の心からの願いです。
学生応援団
私は、大阪府立大学の経営マネージメント学科の講師を務めています。その授業の最終試験に『北竜町のひまわりライスと観光のビジネスアイデア』を課題としました。
そこに在籍する80名の生徒たちの何人かが、北竜町でボランティアしたり、グリーンツーリズムの農業体験ツアーのアイディアを出させたり等、学生応援団として組織できたら面白いのではないかと考えています。
芸術的なひまわりの表現
大阪国立美術館での美術作品として『枯れたひまわり』を発見。ひまわりは咲いている時だけが価値あると思ってましたけど、『枯れたひまわり』をみて、『生と死』を感じ、これも命のひとつだと思いました。枯れたひまわりにもメッセージが含まれていることからも、芸術的な形でひまわりを表現できるのではないかと実感しています。
税理士法人JAZY会計事務所・石川直也 東京事務所所長
北竜町での新しいビジネスモデルについて
地域住民や観光客、小中学生を対象に、農業やワークショップ等様々なことを体験できる会社を提案。
観光センターの通年利用策として、定期的にマルシェを開催し、集まった方々をターゲットに、各種体験プランの案内(農業体験・ひまわり体験・蕎麦打ち体験・ワークショップ等)をすることで利用者を増やしていきます。
・農業体験事例、北海道農泊シンポジウム資料
・創業計画書事例について
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 建築研究本部 企画調整部企画課・佐々木優二 氏
ひまわりまつりのアンケート結果について
ひまわりまつりの来場者を対象に調査を行い、1,500件ほどのアンケート分析を実施。
・子育て世帯や若年層が多く、リピーターは4割
・来客の多くが札幌から車できて、滞在時間は平均1.7時間
・口コミでひまわりまつりを知って、来場した人が多い
・食事したものやお土産に対する評価・満足度は高い
・次回のひまわりまつりへの参加意向、ひまわりまつりに対する評価は総じて高い
課題として
・滞在時間2時間の中で、食事をした人数は約41%。食べものの評価は平均4.6点となっている
・お土産を購入した人は14%で、お土産の満足度は平均4.6点。お土産であるといいものについては、ひまわり関連の食べものが多い
・北竜町のイメージは、「ひまわり」が強くて、「お米」のイメージが弱い。今後、北竜町産米をアピールする必要です。お土産にしやすい2合米のパッケージで販売など工夫が必要になってくると思います
将来的に検討の必要のある「まちづくりの視点」として
・移住者・起業者の呼び込みによる北竜町の「新たな価値」づくり
・北竜町の価値やまちづくりに共感し、応援してくれる人の募集
・他の市町村がやってない、まちづくりの新たな視点が必要。
デザイナー・梅原真氏のご意見
「『ひまわりサブレ』についての提案についてですが、ひまわりの形そのままを使うのではなく、デザインの一部にひまわりのシンボル的なところを何気なく組み込まれているものの方がインパクトが高いものになります。
ひまわりサブレが1枚200円だとしても、お土産になります。お金をもらいながら、北竜町を宣伝するプロパガンダとなります。お土産として家庭に持ち帰ると家族みんなが、友達みんなが、北竜町を知ることになります。買ってもらったパッケージに北竜町のマークがあり、それが広く浸透していきます。
島根県隠岐諸島の離島『海士町』で、約20年前ごろ、海士では当たり前のように獲れる『さざえ』を主な具材としたさざえカレーが発売。そのパッケージタイトルに「島じゃ常識 さざえカレー」とし、デザインしました。
その島では、常識的なものでも、小さい町だからこそできるものがあります。その島のロゴマークに『ないものはない(なくてよい。大事なことはすべてここにある)』という言葉を作成しました。今年(2019年)の海士町町制施行50周年記念にこの言葉に対して表彰されました。
今回の委員会での意見の中で、ワンチームでフルセットとして取り組んでいく話から、商品の案までできています。つまり、意思をもって何かをすることが、世の中に受け入れられるということです。
今後、『ひまわりサブレ』が、この北竜町の町で誕生すればいいなと思います」と梅原氏。
鈴木輝隆氏の締めのお言葉
「今後『明るい農法』が、世界を明るく豊かに幸せにすることがあるかもしれません。北竜町民の意思・志が、いかに発揮されるかが今後の北竜町の発展に繋がっていくと思います。
私達は、前向きに進んでいくことが大切です。今日は、隈研吾氏をはじめ関係者の皆さんの意見も多数取り入れ、まとめて、今後も皆さんのお力になっていきたいと思います。ありがとうございました」と鈴木氏のお言葉でした。
今後、第5回ひまわりの里 基本計画策定委員会は、令和2年(2020年)2月末に開催となる予定とのことです。
北竜町民も観光客もみんなの心がワクワクするような、魅力的で夢のあるひまわりの里構想に、限りない愛と感謝と祈りをこめて。。。
その他の写真
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・梅原真氏デザイン「あかるい農法 北海道ひまわりの北竜町」北竜町ロゴマーク&ふるさと納税用米袋 町民発表会(2018年3月28日)
隈研吾氏・参考サイト
・隈研吾建築都市設計事務所(Kengo Kuma and Associates)ホームページ
・<高木学園附属幼稚園創園園舎(神奈川県横浜市)>園舎の設計・デザイン
・<梼原町ホームページ> 梼原町 ✕ 隈研吾建築物
・<ハースト婦人画報社> 建築家・隈 研吾さんにインタビュー「つみき遊びが僕の原点」
・<公益財団法人ニッポンドットコム> 新国立競技場に込められたメッセージ 建築家・隈研吾さん
・<ファッションプレス> 隈研吾の手掛ける新国立競技場「杜のスタジアム」
荒井建設株式会社・ブログ
・「やわら保育園建設工事」の社長現場パトロールを実施しました(2019年10月15日)
◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子