2025年12月1日(月)
1600人の北竜町民が守り抜く「新嘗祭」に見る「感謝」と「共生」
11月24日(祝)、勤労感謝の日。まだ雪が残る真竜神社の境内には、凛とした静寂とともに、どこか懐かしく温かい空気が流れていました。今日は「新嘗祭(にいなめさい)」。その年に収穫された新穀を神様にお供えし、その恵みに感謝して、神様と共にいただく。日本で古くから続く、最も大切なお祭りの一つです。
物質的な豊かさに溢れた現代において、私たちは時に「食べること」の意味や、自然への畏敬の念を忘れかけてはいないでしょうか。この小さな町で守り抜かれている儀式は、そんな私たちに静かに問いかけてきます。

歴史が語る「守り抜く」という意志
明治26年(1893年)の創建以来、真竜神社は北竜町の人々の心の支えであり続けてきました。社殿に掲げられた由緒書きには、先人たちがどのような想いでこの地を開拓し、神様を迎え、そして心の拠り所として守り抜いてきたかが刻まれています。それは単なる建物の歴史ではなく、この土地で生きた人々の「魂の記録」でもあります。

「食はいのち」神と人が向き合う
拝殿では、厳粛な神事が執り行われました。祭壇に捧げられたのは、北竜の大地と、農家の方々の汗と愛情が育んだ新米や野菜たち。神職が祝詞(のりと)を奏上し、参列者が深く頭を垂れるその背中には、言葉を超えた「感謝」が滲み出ています。

大幣(おおぬさ)で祓い清められ、玉串を捧げる。その一つひとつの所作は、私たちが自然の一部であり、大いなる循環の中で生かされていることを確認する儀式です。「今年も無事に収穫できました。ありがとうございます」その謙虚な祈りこそが、この町の平穏を支える見えない柱なのかもしれません。
大幣祓い

祝詞奏上

玉串奉納

深川大國神社(深川市一己町)の大西康太 宮司様のお話

「新嘗祭とは、新穀や昔は濁酒などをお供えさせていただく祭りです。神社では、本殿の扉を開けるお祭りが三つございます。春の祈年祭、九月の例大祭、そして今日の新嘗祭が大祭です。
新嘗祭は、全国的に11月23日、それに準ずる前後の日に行われます。11月23日、天皇陛下が日が昇る前の深夜に、宮中の神嘉殿において、陛下恩自ら育てました御初穂を初めてお供えするお祭りがございます。それに準じまして、全国の神社がそれに習い、今年初めて採れました御初穂をお供えさせていただくお祭りが今日のお祭りです。
2月の祈年祭に、今年の一年の五穀豊穣をはじめ、氏子区域の商業工業の発展をご祈念すると同時に家内安全をさせていただきました。1年間お守りいただきましたことを謹んで感謝申し上げ今年の初穂を献上させていただきました。
お陰様を持ちまして、今年の新嘗祭開催におきましては滞りなくご奉仕させていただきました。
今年はお宮の屋根の修繕において、地域の皆様にご厚情いただきまして滞りなく完成いたしました。役員さんにおかれましては、大変お忙しい中賜りましたことを、深く御礼申し上げます。
令和7年も残り1か月となりましたが、神社も残りの祭事12月28日の大祓い式のみとなりました。
令和8年が清々しく迎えられまし、ご参列いただいた皆様をはじめ、氏子区域の皆様の安寧を心よりお祈り申し上げます。本日はご参拝いただきまして誠にありがとうございました」
御神酒をいただく「直会(なおらい)」
神様へのお供えを通じて神様の力を体内に取り込み、人と人との絆を深め、健康や繁栄を願う大切な儀式。

御神酒を酌み交わし、笑顔で語り合う人々。そこには、肩書きも立場も超えた、一人の人間としての温かい交流があります。この「直会」の風景にこそ、北竜町民が大切にしてきた「和の心」と「思いやり」が凝縮されています。互いを労い、喜びを分かち合う。このシンプルな営みこそが、世界が探している「平和」の雛形なのではないでしょうか。
本当の豊かさとは
新嘗祭は、単なる伝統行事ではありません。それは、「足るを知り、感謝し、分かち合う」という、人間として最も大切な在り方を思い出すための神聖な祭事です。
北竜町の真竜神社から発信されるこの祈りの物語が、世界中の人々の心に届き、「豊かさ」の意味を問い直すきっかけとなることを願ってやみません。
命宿る五穀豊穣に感謝し、北竜町民の皆様のご健勝と安寧を心よりご祈念申し上げます。

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