2024年6月21日(金)
6月16日(日)、農林水産省農産局・平形雄策 局長をはじめ、農水本省、北海道農政事務所の方々が、北竜町を視察訪問され、「農事組合法人ほのか」の組合員の方々との意見交換が実施されました。
- 1 ようこそ北竜町へ 平形雄策 局長を歓迎!(北竜町役場・液晶ディスプレイ)
- 2 農事組合法人ほのかの事務所(美葉牛)
- 2.1 平形雄策 局長のご挨拶
- 2.2 農事組合法人ほのかとの意見交換
- 2.3 JAきたそらち・永井稔 北竜地区代表理事北竜町米「ひまわりライス」について説明
- 2.4 意見交換:スマート農業におけるGPSの活用状況
- 2.5 農事組合法人ほのか・事業概要について:山田敏光 代表説明 & 当日配布資料より
- 2.6 意見交換
- 3 この後、ひまわりの里へと移動し視察!
- 4 Youtube動画
- 5 その他の写真
- 6 関連記事・サイト
ようこそ北竜町へ 平形雄策 局長を歓迎!
(北竜町役場・液晶ディスプレイ)
ご訪問いただいた皆様
- 農林水産省農産局・平形雄策 局長
- 農林水産省農産局企画課土地利用型農業調整班・浅見武人 課長補佐
- 北海道農政事務所・福島一 所長
- 北海道農政事務所生産支援課・角公孝 課長補佐
平形 雄策(ひらかた ゆうさく)氏プロフィール
平形雄策氏は、1964年4月13日生まれ(60歳)、群馬県吾妻郡高山村の農家の出身(高山村:人口3,167人・2024年5月1日現在)、慶應義塾大学法学部卒業後、農林水産省入省(1989年4月)、農林水産省農産局長(2021年7月1日)に就任されました。
- 1989年(平成元年) 3月 – 慶應義塾大学法学部卒業
- 1989年(平成元年) 4月 – 農林水産省入省
- 2005年(平成17年) 4月 – 農林水産省大臣官房企画評価課調査官
- 2006年(平成18年) 8月 – 農林水産省大臣官房企画評価課調査官兼内閣事務官
- 2008年(平成20年) 8月 – 農林水産省大臣官房政策課調査官兼内閣事務官
- 2009年(平成21年) 1月 – 農林水産省大臣官房参事官
- 2009年(平成21年)10月 – 農林水産省経営局協同組織課長
- 2012年(平成24年) 6月 – 農林水産省経営局経営政策課長
- 2015年(平成27年)10月 – 農林水産省食料産業局総務課長
- 2017年(平成29年) 7月 – 農林水産省大臣官房予算課長
- 2018年(平成30年) 7月 – 農林水産省生産局農産部長兼政策統括官付
- 2021年(令和 3年) 7月 – 農林水産省農産局長
農事組合法人ほのかの事務所(美葉牛)
北竜町役場から農事組合法人ほのかの事務所(美葉牛)へと移動し、意見交換が実施されました。
平形雄策 局長のご挨拶
「佐々木町長さんをはじめ皆様方、私達を呼んでいただきありがとうございます。
昨日から北海道にいて、食料・農業・農村基本法改正法、水田政策について懇談させていただきました。その中で特に、北竜町の農事組合法人ほのかさんを訪問されると良いと勧められ、今回休日にも関わらずお邪魔させていただくこととなりました。
今回、食料安全保障の確保ということが食料・農業・農村基本法改正法の中にも書かれることとなりました。まさに、お米をはじめとして、いろいろな穀物・野菜等栽培において北海道は一大拠点だと思っております。
日本有数の良質米を生産する地域の方々に頑張って作っていただいて、日本の国民を飢えさせないようにすることが非常に大事なことだと思います。
私達としては応援したいと思っております。皆さんの活躍を期待しています。今日はどうぞ宜しくお願いします」と、平形局長。
農事組合法人ほのかとの意見交換
北海道北竜町の概要
- 位置 :札幌より北へ約100km、旭川より西へ約50km
- 人口 :1,612人 785世帯(2024年6月1日現在)
- 農家戸数:約140戸(2024年4月1日現在)
- 耕地面積:2,977ha
(水田1,669ha、畑1、308ha:そば49ha、大豆260ha、小麦230ha) - 1戸あたり平均耕作面積:21,3ha
JAきたそらち・永井稔 北竜地区代表理事
北竜町米「ひまわりライス」について説明
第46回日本農業賞集団組織の部で大賞受賞
「2016年、第46回日本農業賞集団組織の部で、『北竜ひまわりライス生産組合』が大賞を受賞しました。
日本農業賞は、JA全中、JA都道府県中央会とNHKが主催して、日本農業の確立を目指し、意欲的に経営や技術の改革と発展に取り組み、地域社会の発展に貢献している農業者と営農集団を表彰するものです」。
「北竜ひまわりライス生産組合は、全町をあげて農薬節減に取り組み、生産情報公表農産物JAS規格を取得、全町をあげての販売PR活動等が評価され、大賞受賞となりました。
北竜町の環境に配慮した米作りの歴史は長く、昭和63年(1988年)、農薬規制が緩かった時代から有機農業、減農薬、無防除などの栽培に積極的に取り組みました。
北竜町は、「国民の命と健康を守る安全な食糧生産宣言の町」を宣言し、農業委員会、土地改良区、北竜町が連携を組んで安心な農作物を栽培してきました。
ひまわりライス生産組合が、生産情報公表農産物JAS規格を取得し、消費者に全ての情報開示を行いました。
ひまわり生産組合の農家戸数140戸の内、100戸が水稲農家であり、水稲農家全戸が生産情報公表農産物JAS規格に取り組んでいます。
町の生産組合全戸で認証を受けているのは全国でも北竜町のみです」と永井 北竜地区代表理事。
先駆者: 黄倉良二氏(元JAきたそらち代表理事組合長・北竜町名誉町民:当日配布資料より)
昭和48年(1973年)、故後藤亨氏、黄倉良二氏(当時、北竜町農業協同組合 組合長)が、自然農法で米作に取り組む。
黄倉良二氏は、「食べものはいのち(生命)」の魂を提唱し、農業における「生産条件の品質管理」の大切さを説いた。
「本来の食べものは、山と木と緑に支えられた『力強い水』で息づく。受け継いだ『土地』を劣化させない、汚染させないこと。そしてあなたの生命を守る『百姓の魂』 を磨いていき、『担い手を育てる』ことが農業の基本です」と繰り返し語る。
昭和63年(1988年)6月「国民の生命と健康を守る農民集会」において、農協青年部が安全な食糧生産に関する宣言を行う。
米の産地としては、生産者が力を合わせて「食べものはいのち(生命)」の思いを大切に、手と技術と心をつくして、人の安全な食糧を生産する事が、「命・食糧・環境・暮らし」を守り育み、人と地域と社会に貢献することを目指す。
有機JASの技術(当日配布資料より)
- 土作りを基本に物理性・化学性・生物性の改善を行い、病害虫の発生予察に務める
- 除草は、代掻き2回、除草機を利用する
- 病害虫は生物農薬、ドロオイクリーナー等を利用する
水稲種子温湯消毒機
「有機JASの技法のひとつとして、『水稲種子温湯消毒機』をどこよりも早く取り入れたことです。化学農薬をいかに削減する観点から、種子消毒は必要な作業となり、この温湯消毒を入れることによって農薬を制限できます。
- 化学農薬に頼らない水稲種子の消毒方法のひとつが温湯消毒
- JAきたそらち北竜支所では、道費と北竜町からの助成により温湯消毒プラント一式を導入
- 温湯消毒は、湯60℃で10分間種子を殺菌する事により、あらゆる菌を死滅することができる
米栽培において、1割程度となりますが、有機米、特別栽培米を取り扱っています。中でも農薬節減米『きたくりん』は、4成分の農薬使用で栽培可能(慣行栽培の農薬使用は22成分)で、安心安全な米として販売を行っています」と説明された永井 北竜地区代表理事。
北竜玄米ばら施設 色彩選別機(当日配布資料より)
北竜玄米ばら施設において、それまで手作業で行ったいたことが、新たなシステムが新設され、効率アップとなる。
- 異物除去のため、全量を色彩選別機で処理
- コンタミ防止装置を全ラインに設置
- トレーサビリティシステムの導入。生産者の特定の自動化
JAきたそらち北竜支所・生産情報公表農産物JASホームページで、ひまわりライスの袋に記載されているロット番号を入力すると、生産者の氏名、顔写真、収穫月日、農薬・肥料の薬剤名、使用回数・量、水田の地図など、詳細な生産物の情報を知ることができる。
農家で乾燥されて施設に持ち込まれた玄米は、最初に、JAきたそらち職員の皆さんによる「自主検査」が実施される。検査機により、タンパクの割合、穀粒などが判定され、コンピュータによる情報処理される。
玄米の受け入れ基準
- たんぱく値(4区分)、整粒(4区分)
- 調整ランク(5区分)、品種(13区分)
- 生産物識別番号(8区分) 一般栽培(品種毎)
- 有機JAS(品種毎) 特別栽培(品種毎)
- 栽培区分✕タンパク✕整粒✕調整ランク=3500種類の米が出荷可能
- 実績では受入時の仕分けで、うるち米335種類、もち米29種類の集荷
- 販売別種類は、115種類(うるち米103種類、もち米12種類)の仕分けとなっている
何故そこまで仕分けをし、集荷するのか!
- 生産者からみれば、努力して栽培したお米をそれぞれ仕分けしてもらえるとやりがいが出る。JAとしての集荷率アップにもつながる
- 消費者からみれば、様々なニーズに対応できる産地として認知される
ひまわりライスのこだわり(当日配布資料より)
- 北海道の稲作農家のレベルは高く、正直「味」の差はほとんどないのが現状
- JAきたそらち北竜支所では、その最高レベルのお米をさらに選りすぐり、味を左右すると言われているタンパク数値の基準をクリアしたお米のみ「ひまわりライス」として出荷。その為、味のブレがなく、低温倉庫で保管されたお米は新米の味そのままにお届けすることが可能
- 100%施設集荷であり、万が一の異物を除去する機械「色彩選別機」で調整を行う為、美味しいだけでなく、安心なお米でもある
意見交換:スマート農業におけるGPSの活用状況
❂ 永井 北竜地区代表理事「生産者が全国的に減っている中で、これからはスマート農業による省力化・高品質生産等を取り入れていく状況になってきています。この町は山に囲まれているので、中間地・山間地の曲がりくねった場所があり、ICTを取り入れた場合、GPSの電波の確保が難しいのが現状です。
今年の春の田植えシーズンに、GPSが狂う事象が発生しました。噂では太陽フレアの影響だとも言われています。通常とは異なる動きをして、真っ直ぐに進まず、蛇行して進み最後に停止し、設定が切れる事象が10回ほどありました」
❂ 平形 局長「現状として、GPSが使える場所は全体の何割くらいありますか?」
❂ 永井 北竜地区代表理事「通常の平坦な土地であれば6割くらいは使えると思います。高さまでとるGPSだと5割を切ると思います」
❂ 平形 局長「車窓の景色から、大区画の圃場もあり水平に整備するのが大変そうだと感じました。基地局の設置も、農水省だけでなく自治体を管轄する総務省など農業以外を含めて整備されることが必要だと思います。こうした課題を認識しながら取り組んでいきたいと思います」
農事組合法人ほのか・事業概要について:山田敏光 代表説明 & 当日配布資料より
「農事組合法人ほのかは、平成24年(2012年)、法人化を目指す5件の農家で、水稲のみの共同作業・経理を開始しました。
平成26年(2014年)法務局に登記し設立。当時の規模拡大加算金を準備資金としました。果菜類も始め、また、3年かけて他にはないひまわりに特化した法人となりました。当初、1億5千万円程だった収入は、現在2億5千万円を超えました。全体的に経費がかかるので、収益はあまりありません。もうかりません(笑)」と山田代表
農事組合法人とは
農事組合法人は、農業生産法人の中でも、株式会社とは制度・機構自体が異なり、平等を原則とした協同組合です。
構成メンバー
- 出資構成員:9名
- 新規就農 :5名
- 男性:10名(20代2人、30代2人、40代2人、50代1人、60代3人)
- 女性: 8名 (20代〜60代)
- 他アルバイト
令和6年耕作面積:17,318a(約4km✕4km)
- 水稲 :12,268a
- 大豆 :960a
- 秋小麦:442a
- ひまわり食用:187a
- ひまわり油用:357a
- 景観ひまわり:148a
- ハウスメロン:135a
- いなきび :406a
- 緑肥・温床等:1,170a
- 野菜 :28a
- 合計 :17,318a
約4km✕4km = 東京ドーム340個分
3月〜10月の主な事業
- 大学生との農業体験交流
- 視察・収穫体験
- 農業実習生の受け入れ
- 女子会・海水浴
- ひたすら農作業、たまにバーベキュー
農事組合法人ほのかInstagramより引用(Instagramはこちら >>)
3月:ビニールハウスのテントかけ・組合員による共同作業により能率アップ
5月:ほのかお花見女子会(美葉牛神社にて) 和気藹々、ファミリー的なお花見会で心和む
5月:イネの種まき & 田植えの慰労会・心ひとつに一致団結して作業を終えた後の慰労会
8月:ほのか女子で仮装盆踊り大会・女子力を結集して仮想盆踊りに参加
12月:組合員旅行・家族ぐるみで楽しむ笑顔あふれる会員の皆さん
若者たち、皆さんへのメッセージ(当日配布資料より)
田んぼや畑は、食糧生産工場ではありません。農業は車やテレビを流れ作業で作る様にはいきません。
爺や婆、嫁や子供が、太陽と水と土の恩恵を受けながら、時には自然と闘いながら、自分の知恵と身体と心で食べ物を育てる、血の通った生命の産業です。
農家は、地域を作っています。田舎を守っています。そこにいる人間を育てています。
ほのかができたのは、農業で自分たちとまわりの人たちを、この自然を、そして北竜町を守り育てていくためです。
意見交換
❂ 平形 局長「ほのかさんは、男性の年齢構成がバランスよく配分されており、町外の若い方が新規就農されています。新規就農は勇気のいることだし、そうした人たちがこちらに定着したり就農するのは、どういうところに秘訣があるのですか?」
❂ 水谷茂樹 前ほのか代表「若い人たちは、ここが楽しいからここで働きたいと思うんだと思います。研修にきてここで学んだ若者は、ほとんどここで働きたいと言っています。北海道の就農率は低いですが、ここは就農率が高いです。毎年、若い世代に農業を繋げていって回しています」
❂ 平形 局長「今回の基本法改正法において、国内で作れるお米・麦・大豆などは、できるだけ国内で作ろうという動きがあります。肥料においても、堆肥なども見直してみようという動きがきっかけにもなっています。
農業の就業人口においても、現在は120万人いますが、2040年には30万人に減少し、4分の1になるという試算があります。
農業支援サービス事業体といって、今後、作業を受託するという組織を本格的に育成・支援していくべきではないかと思います。
今、スマート農業と言われていますが、高額です。機器は順次更新されていくので、個々の農家に新しい機器を買っていただくには大変だと思います。
そうしたスマート農機を持っていて、播種、防除、収穫など作業部分だけを請け負って、最新の農機を使っていくことが将来的に進んでいくと思います。
ほのかさんの役割は、経営そのものもありますが、部分的な受託事業に発展したり、社員構成にすすんでいったりすることもあるのかなと思います。
今まで、機械を入れるときには、農業経営者を中心に補助金が支払われていましたが、今後は受託事業をされる組織において機械を入れる際も積極的に補助の対象にしていきます。
また、スマート農業技術活用促進法により、来年から金融税制からも支援が可能になるスキームが動き始めます。農業支援サービス事業体の強化をしていかなければならないと思います」
❂ 水谷さん「受託事業については、法人設立当初は想定はしていたのですが、法人規模が大きくなり、現状は自分たちのことで手一杯の状態です」
❂ 善岡浩樹 会長(北竜町農業委員会)「苗立ての依頼を受けたりすることがありますが、自分達の仕事で手一杯です。第三セクター等の組織に仕事をお願いしないと厳しくなってくるかもしれません」
❂ 平形 局長「この30年で、北海道の水稲農家の水準はかなり上がっています。ゆめぴりか、ふっくりんこ、きららなどどれを食べても美味しいお米になっていて、実に素晴らしい努力だと思います。
ほのかさんのいいところは、農家の担い手である2代目3代目を育てることはもちろんのこと、道外から農業を知らない方が農業をやってみたいと思うような人々をどんどん惹きつけて指導育成を行っているところです。
皆さん力を合わせて日本の食料生産を行い、いろいろな方々が就農されることを私達は期待しています。そして応援していきたいと思います」
圃場視察
時間が限られていたので、懇談会を終了し、事務所横に広がる「いなきび畑」の土に触れ見学。
この後、ひまわりの里へと移動し視察!
農事組合法人ほのかの圃場を視察された後、ひまわりの里を回って、北竜町を後にし旭川空港へと向われました。
大変お忙しい中、時間の隙間をぬって、わざわざ北竜町まで足を運んでくださり、生産者と直接会話し、田畑の現場の空気感を肌で感じてくださった平形局長をはじめ、皆様に心から感謝いたします。ありがとうございます。
大自然の中で生命育くむ尊い農業、生産者の熱い想いが交流し伝え合う偉大なる視察訪問に、限りない愛と感謝と祈りをこめて。。。
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◇ 取材・文章:寺内郁子(撮影・編集協力:寺内昇)