2024年6月5日(木)
6月3日(月)、2021年に北竜町でひまわりすいか栽培の新規就農をスタートした新規就農者・佐藤孝介さん(47歳)&朋美さん(47歳)ご夫妻にお話を伺いました。
農地・水 北竜町活動組織(高田秋光 会長)の事務局を担当されている藤崎正雄さんから、「素晴らしい新規就農者が北竜町で元気に頑張っている」とご紹介いただきました。
新規就農者 佐藤孝介さん・朋美さんご夫妻
多忙を極めたサラリーマン生活
佐藤孝介さんは、八雲町出身。以前は、全国に飲食のチェーン店を大規模に展開している会社で店舗指導をされていらっしゃいました。札幌市在住ながら、単身赴任で全国各地を飛び回る忙しい日々を過ごされていました(埼玉県、長野県、山形県、大阪府等)。
そのような多忙なサラリーマン生活を送る中で、与えられた仕事をこなすという姿勢ではなく、自分で考えたことが自分に帰ってくるという仕事がしたいと思うようになりました。
自営業として農業を選択
そして、まずは自分で何かできないかと思案。色々調べていく中で、自営で国からの補助などのサポートが手厚い業種が農業であることがわかりました。では、どこで農業をするのがいいのか? 佐藤さんは、日本各地の新規就農制度を徹底的に調べ上げました。
佐藤さんのご親戚が北海道に在住されていらっしゃることもあり、北海道での農業制度に絞り込んでいきました。その中でも、新規就農に対するサポート体制が手厚かったのが北竜町でした。
サポート体制の一例:北竜町の就農支援制度
- 住宅家賃助成金(研修中):家賃の1/2を助成(上限1万円)
- 経済支援助成:取得した農用地等にかかる固定資産税相当金助成
- 経済自立安定助成金:借入した制度資金の1/10を借入翌年度から5年間助成(上限250万以内)
- 利子補給助成金:借入した制度資金利子を5年間交付(上限2,000万円 借入利息が2%を超えた分)
- 住宅修繕等助成金:購入した住宅の修繕・増築・改築等にかかる費用の1/5を助成(上限250万円
- ハウス助成事業:メロン・すいかの栽培ハウス設置金額の80%助成(JA 50%+北竜町 30%)
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北竜町とのご縁は新規就農フェア
2021年に札幌市で開催された新規就農フェアを訪問した佐藤さん。
道内各市町村の新規就農サポート体制には、それぞれ様々な特徴があるので、佐藤さん自身は、事前に調査しある程度絞った上で、新規就農フェアに参加。
北竜町ブースを訪れた際、担当者である新規就農推進員・櫻庭賢一さん、北竜町ひまわりすいか組合・渡辺俊成さん(当時組合長)のお二人に出逢い、移住と新規就農について丁寧なお話を聞きました。
お二人の熱意と人柄を感じ取り、最終的に移住先を北竜町に決め、翌週には北竜町に訪問。
農業地選択の決め手は担当者の方の熱意とお人柄
「最終的な決め手となったのは、補助金的な要素も大切ですが、これから一緒にやっていく上で、サポートをしてくださる担当者の人柄に重点をおくことが一番大事だと実感しました。その点では、今も本当に良かったなと思っています。
担当の櫻庭さんは、色々と相談に乗ってくださり、とても良くしていただいているので感謝しています。
ひまわりすいか組合の方々も本当に親切で、1年目で右も左もわからない私達でしたが、皆さんが様々な場面でご助力してくださり、何か聞いても親身になって答えてくださいます。
今年は、独立して2年目を迎えます。まだまだ未熟で、失敗ばかりで大変なのですが、周りの方々のご指導と応援で助けられています」と、佐藤さん。
奥様の朋美さんに生活の変化に対する思いをお伺いすると、
「夫のサラリーマン時代は、その大変さを側で痛感していました。私達には子供がいないので、農業をやりたいというのであれば、やってみようかと決意しました。
農業はもちろんそれまで未経験だったので、最初はあまり手伝うつもりもなかったのですが(笑)、実際やってみて、二人でやっていかないと回らないので朝から晩まで手伝っています。
なんとか失敗しながら試行錯誤し乗り越えてやっています。失敗しても周りの方がその都度、色々対処法を教えてくださるのでありがたいです」と、穏やかな表情でお話くださった朋美さんです。
ひまわりすいか組合・渡辺俊成さん(当時組合長)農家で2年間研修後独立
佐藤さんご夫妻は、新規就農フェア後すぐに北竜町に移住。2年間、ひまわりすいか組合・渡辺俊成さんの農場で研修を受け、去年2023年4月から独立して現在の圃場ですいか栽培をスタート。
初年度はハウス4棟で栽培していましたが、今年は2棟追加して6棟(100m4棟・90m2棟)で栽培されています。
ハウス6棟で1棟につき200株程を定植。育苗(挿し木)は、余裕をもって1,400株から1,500株程をご夫妻2人でされています。
移住4年目の北竜町に対する感想
「北竜町はとても住みやすいです。札幌市在住が長かったのですが、人や車が多く、環境に対し疲れを感じていました。たまに札幌に用事があって行っても、なんとなく落ち着きません。
ここ和地区の皆さんは、とても親切です。近隣の皆さんに、バーベキューに呼んでいただいたり、とても良い交流関係が続いています。気を使っていただき、いつも声をかけてくださり、とても助かっています。
移住はなかなか難しいとも聞いていたのですが、町民の皆さんは親切な方ばかりなので、地域に入りやすかったし馴染やすかったです」と、町の人々の優しさ・親切心に感謝する佐藤さん。
「都会の環境は、人が多いし、お隣が誰だかわからないし、家の中でも音を気にしなければなりませんでした。
しかし、ここ北竜町では、広い圃場と住宅の一軒家と倉庫(農家用納戸)を分けていただき、大自然の農作業が存分に実施できる環境が与えられています。
ここだとテレビの音も大きな声をだしても気にしなくていいので楽です。空気もおいしくて気持ち良く過ごしています」と、朋美さん。
「移住して一番苦労したことは、やはり栽培です。いくら頭で考えても、実際の栽培は自然相手なので、予想していることと違うことが発生したりします。
まだまだ技術がないので、その都度失敗しながらも学んでいくしかないかなと思います。今も大変ですが、早く一人前になれるように頑張っています!」と語る佐藤さん。
大変ですがサラリーマン時代より楽です
「朝は4時に起きて、夕刻7時くらいまでは作業をしています。自分の思うままにやれるので、サラリーマン時代より楽です。
農繁期が終わった冬季期間は、好きな旅行にあちこち出かけています。夫婦で旅行が趣味なので、サラリーマン時代の休日には全国各地を旅行していました。
こちらでは、農作業をやっていると忙しくてお金を使う暇がないので、現在の収入で十分にやっていけます。
将来的な老後のことを考えると、もう少しハウスの棟数を増やして、貯蓄もしたいと考えています」と、佐藤さん。
新規就農の情報収集はインターネット
「新規就農情報はインターネットで検索して収集しました。
ホームページ内に新規就農に関する詳細ページを設けている市町村もあれば、なかなか情報が探しにくいホームページもかなりあります。
その点、北竜町は新規就農に関するわかりやすい情報提供をしています。
情報収集の中で、一番求めたところは、費用の問題です。農業をスタートするときは、資金・費用がかなり高額となります。さらに、研修体制方法をどのように対応しているのか、またどのような研修が受けれるのかということに重点をおいて調べました」。
貯蓄に回していける経営を軌道に乗せる
「農業をスタートした時点で、どのくらいの収入で、どのような生活がおくれるのかというイメージを描けるかどうかが重要です。そのような情報をインターネットで明示していただけると大変助かります。
サラリーマン生活に終止符を打って農業に飛び込むことは、かなりの覚悟をもって取り組むことなので、将来的なイメージが描けることがとても重要だと思います。
将来、どのくらいの収入が得られるかという情報を開示している市町村はとても少ないです。開示しているところは人気があり集中してます。例えば、平取町は経費・所得などのプランを開示しているので、将来の生活がイメージしやすいです。
市町村によっては、収入などの情報を開示せず、補助制度の説明だけのところもあります。
新規に農業に取り組もうと情報収集をしている方にとっては、最終的に生活がどうなるのかというイメージを持ちやすい情報が一番重要だと思います。
また、最初から栽培したい生産物を決めてしまうと、その生産物が町の特産品になっている市町村は限られます。そのため選択の幅は狭くなり、難しい就農になってしまいます」と、佐藤さん。
佐藤さんは新規就農を検討し始めた頃、稲作も考えたそうですが、初期投資の金額があまりに大きいので無理だと判断。
「今後の人生、10年から15年スパンで考えたときに、しっかりと採算が取れて少しでも老後の蓄えができるものを選択すべきだと考えました。2年から3年で初期投資を回収し終えて、貯蓄に回していける経営を軌道に乗せることのできる就農プランをイメージしました」。
最終的に、北竜町で、ひまわりすいか栽培を決めた佐藤さんご夫妻です。
失敗は成功の元! ピンチをチャンスに!
「失敗の繰り返しです。失敗は初期投資と考えて、失敗のたびに落ち込んでいたら前に進めないので、ピンチをチャンスに変換してプラス思考でチャレンジしています。
そして、大変な作業も、慣れれば面白いです!
作物は、子どものように成長過程を見ながら育成し、共に歩んでいくので愛おしいと感じています」と、意気揚々とお話くださった佐藤孝介さんです。
佐藤ファームの設備等
ビニールハウス自動開閉装置
ビニールハウス窓の開閉は自動開閉(湿度・温度・風の測定により自動操作)。実際には動かないこともあり、スマホをリモコンにして自分で遠隔の開閉を行っている。
電柵:ソーラーシステム(太陽光発電)で賄う
「アライグマが捕まったという話は聞いていますが、作物を捕食されたことはありません。鹿はそのへんを歩いてはいますが、さすがにハウスの中までは入ってきません」と、佐藤さん。
井戸(深さ12m)
独立2年目の投資として、水不足に備え井戸を設置。普段は用水を使い、交代水のときには井戸を使う。
心に描く自営業への想いを実現化している北竜町での農業。。。
絶え間ぬ努力を摘み重ねていく新規就農者を、受け入れ助け温かく見守る北竜町の方々の尊い魂に、限りない愛と感謝と祈りをこめて。。。
その他の写真
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◇ 取材・文章:寺内郁子(撮影・編集協力:寺内昇)