2022年1月24日(月)
この度、北竜町美葉牛在住、「道俳句会・北竜支部」の会員である吉尾広子さん(74歳)の句集『花筏(はないかだ)』が、北海道俳句協会(源鬼彦 会長)第42回鮫島賞を受賞されました。おめでとうございます!
1月12日(水)に開催された北海道俳句年鑑編集委員会の各賞選考委員会にて授賞が決定されました。表彰状は、北海道俳句協会令和四年度定期総会(6月)にて授与される予定です。
鮫島賞(さめじましょう)
「鮫島賞」は、北海道俳句協会(1995年設立)の設立者であり初代会長である鮫島 交魚子氏(さめじま こうぎょし)の逝去後に設立された賞。句集を対象とする権威ある賞で、今回42回目を迎えます(鮫島 交魚子氏:1888年(明治21)年~1980年(昭和55)年・長野県出身)。
道俳句会・北竜支部では、鮫島賞は、故・田中北斗氏が、1995年(平成7年)に受賞されていらしゃいます。吉尾広子さんは2人目の栄誉ある受賞となります。
吉尾広子さん
- 俳号:吉尾広子 本名:吉尾廣子
- 1947年(昭和22年)8月北竜町生まれ、74歳、北竜町育ち
- 1969年(昭和44年)に小学校・中学校・高校時代ともに同級生の吉尾政一さんと大恋愛の末ご結婚され、1男2女に恵まれる
- 稲作とメロンを栽培する農業を営む。65歳で農地を手放し離農
- 1982年(昭和57年)に「道」俳句会入会。以来40年間、現在においても俳句活動を継続中
- 2002年(平成14年)第一句集『母の声』出版
- 2021年(令和3年)第二句集『花筏』出版
今は、6人のお孫さんに恵まれ、時折会える日を楽しみに日々をゆっくりと過ごされています。
第一句集『母の声』2002年・第二句集『花筏』2021年
2002年(平成14年)に第一句集『母の声』を出版、19年後の2021年(令和3年)に、第二句集『花筏』を出版されました。
第一句集『母の声』出版記念祝賀会
- 「道」文庫:第百三十二号
- 発行日:2002年(平成14年)5月31日
- 著者 :吉尾 広子
- 印刷所:さっぽろ印刷
2002年(平成14年)6月22日 北竜町老人福祉センターにて、吉尾広子句集『母の声』出版記念祝賀会が開催されました。
第二句集『花筏』19年間・339句
- 「道」文庫:第二〇二号
- 発行日:2021年(令和3年)8月8日
- 著者 :吉尾 広子
- 印刷 :株式会社アイワード
句集『花筏』は、2001年(平成13年)から2020年(令和2年)までの19年間で読まれた句から339句を抜粋し、年代順に五章立てで構成されています。
句集の表装デザインは、黒地にピンクの桜の花びらが散りばめられ素敵な絵柄となっています。
道俳句会・田湯岬 主宰のお言葉
句集『花筏』前書きに書かれた道俳句会・田湯岬 主宰のお言葉には、「句集『花筏』には、どの句を見ても、吉尾広子の顔が見えてくる。北光星の教える『生活意識を内容にこめた感性の詩ごえ』であり、源鬼彦が標榜した『風土が生む命の起き臥しから授かる詩である』を実践した一集と言える」と、記されています。
吉尾広子さん「花筏」への想い
「花筏は、水面に散った花びらが、連なって流れるのを筏に見立てた言葉です。
- 花筏 いくさなき世を 令和へと
古来より戦は第二次世界大戦まで繰り返されていましたが、唯一、平成は戦の無い平和な時代でした。この句には、この平和が令和へ続いて欲しい、との願いを込めました。桜の花びらが散って、川幅一杯に流れる様は平和そのものです。
第一句集において収録された、
- 花筏 かしこで終わる 母の文
の句の中に、花筏に対する深い想いはありました。でも、認知症を患う母に(サキさん・第一句集出版の2年後、91歳で逝去)、少しでも母に対する想いを伝えたくて、第一句集のタイトルは『母の声』としました」と、花筏に対する想いを語ってくださった吉尾広子さんです。
広子さんと俳句
俳句との出会い
広子さんは、昭和50年代、美葉牛地区の小・中学校で、俳句に熱心な教頭先生に勧められて、先生から俳句の指導を受けます。
「学校関係の慰労会の会合で、教頭先生に『子どもたちは親の背中を見て育ちます。何でもいいので、お母さんなりに学ぶ姿勢を示してみてはいかがですか?』と言われ、教頭先生から俳句を学び始めました。
当時、その先生が岩見沢へ転勤となったため、俳句を止めようと思っていた矢先、道俳句会・北竜支部への入会を勧められそれ以来継続しています」と、広子さん。
日常のあるがままを俳句に
「道俳句会・北竜支部では、月1回会員が集まり、ひとり俳句8句を提出し講評会を行っています。お菓子を食べながら、楽しい時間です。
講評で、自分がいいなと思った句と、みなさんが評価した句が違っていることが多いですね。
慣れてくると、難しい季語などを使って格好良く作ろうとしがちです。でも、私は難しいことはわからないので、気負わず自分の気持ちに正直に、日常のあるがままを句にしたためています。
今まで、長く続けられているのは、仲間たちとの繋がりが大きいと思います」。
思いついたことはスマホ記入
日々思いついたことを、昔は手帳に書き留めたことも、今はスマホに記入している広子さんです。
俳句を通じて多くの人々と交流
吟行会参加
「年2回の吟行会に参加し、参加者がそれぞれの句を披露し合い、仲間との交流を図っています。俳句を通して、普段会えないような人々との出会いが、楽しみのひとつです」。
空知管内郷土芸術祭に参加
「空知管内郷土芸術祭に参加し、近隣市町村の方々との交流を図っています。空知管内郷土芸術祭は、文化活動の振興を目的に、郷土芸能や文化活動に関する各地域の交流を促すもので、1977年(昭和52年)から空知管内市町村の輪番により取り組むイベントです」と、広子さん。
地元の俳句サークルだけでなく、様々な講評会に参加して、大勢の人々との繋がりや交流を楽しんでいる広子さんです。
俳句に込められた広子さんの想い
お母様に対する想い
- 赤とんぼ 選んで止まる 母の指(第一句集「母の声」に掲載)
「母は、戦後の大変な時代に、舅の家族介護を七年間継続し善行者として町長表彰を授与された程、辛抱強くかつ聡明な人でした」と、しみじみとお母様への想いを語る広子さん。
夫への想い
句集には、広子さんの夫・政一さんへの想いを詠んだ句が多数あります。
- 実直な 夫と向き合い 杉菜とも
- 売りし田の 雪の深さを 測る夫
- 日に一度 ほめあい春を 待つ夫婦
- 夫なりの 美学に徹し 松手入
- 名月を 愛でる無口な 夫とても
- 花さびた 今更夫に 恋ごころ
実直で几帳面なご主人・政一さん
夫の政一さんは、勤勉・実直・几帳面で、信望が厚く、1985年(昭和60年)から北竜町農協の理事、副組合長を歴任。合併後は、JAきたそらち北竜地区代表理事としてご活躍されました。
さらに、今は退かれていらっしゃいますが、(社福)北竜町社会福祉協議会・会長、北竜町農畜産物直売所「みのりっち北竜」出荷者協議会・会長なども務められて、町のためにご尽力されていらしゃいます。
日常生活での素直な想い・お孫さんへの想い
- 冬銀河 台詞ひとつの 孫の劇
お孫さんの劇を見に行ったとき、劇の中でたった一言のお孫さんのせりふについて、お孫さんから「ちゃんと見ててね、ちゃんと覚えておいてね」と言われ、必死にお孫さんの姿を探すお祖母ちゃん。
「冬空にはこんなに星がいっぱいあるのに、我が孫は、そのうちのたった一個なんだなぁ。そのひとつの台詞を探すために、2日もかけてここを訪れ、今ここにいるんだなぁ」と感じた心境を読んだ句。
- 新妻の 声筒抜けて 大刈田
近隣に、農家経験のない普段はとてもおとなしいお嫁さんの子どもを叱る大声が聞こえ、とても驚いた。稲を刈った跡だったから、余計に声が筒抜けて聞こえてきたのかなと感じた句。
- 春めくや すでに賢者の 呱々の声
生まれたばかりの赤ちゃん(お孫さん)の声が、賢く聞こえるお祖父の気持ちを謳った句。
句集のあとがき
句集のあとがきに記された吉尾広子さんのお言葉は、
「花筏のひとひらひとひらを演じてくれた、私に繋がる人達が、いつまでも健やかでありますように。。。」。
ご夫妻ご一緒に!
信望厚いご主人をしっかりと支え、几帳面なご主人に支えられながらも、共に支え合いながら歩んで来られたお二人の道。。。
共に新たな光を見出して、ゆっくりと気負わずに過ごしていく、これからのお二人の素敵な人生に、限りない愛と感謝と祈りをこめて。。。
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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子