2018年7月30日(月)
7月26日(木)13:30〜、メロンの品質向上を目的に、JAきたそらち抑制メロン講習会が渡邊ファーム・メロンハウス前にて開催されました。北竜メロン生産組合の農家の方々およそ12名が参加し、熱心に耳を傾けました。抑制メロンとは、収穫期が9月から10月になるメロンの栽培法です。
講師は、空知農業改良普及センター北空知支所・吉田典生 主査と桂川 専門主任です。
渡邊ファーム・メロンハウス前
▶ JAきたそらち青果部・三品正則 主査のご挨拶
主催者を代表して、JAきたそらち青果部・三品正則 主査よりご挨拶をいただきました。
JAきたそらち青果部・三品正則 主査
▶ 抑制メロンの栽培について:空知農業改良普及センター北空知支所・吉田典生 主査
空知農業改良普及センター北空知支所・吉田典生 主査
▶ レッド113の特性
・熟成日数60~65日タイプ、栽培日数が長いメロン
・ハウス抑制栽培では、玉肥大が不良
・うどんこ病に抵抗性がなく弱い。栽培後半のうどんこ対策に注意が必要
▶ JAきたそらちにおける課題
・1ハウスにつき400ケースは目指したい(1ケース3,000円×400=1,200,000円)
・100万円以上のメロンづくりを目指す。4玉比率をもう少し増やしていく
・玉肥大不良の対策として、株間・施肥・節位・冠水のタイミングなどを検討する
・玉がついてからの草勢が、収穫まで60~65日かかる品種なので、草勢をしっかり維持できるかが、糖分・品質・玉肥大などすべてに関わってくる
・着果以降の葉の伸び方に注意を払う
・病害対策として、着果後の管理が大切
・9月以降の温度がメロンの最低適温である15℃を切ることがあると生育がストップしてしまう。この時期の草勢の維持と排水・薬剤散布の調整がポイントとなる
・メインの病害は、うどんこ病、害虫対策としてはハダニ類、アブラムシ類など
・害虫は初発期にしっかりと叩いて処理することが一番重要
・8月前後の高温期における処理対策がポイント
・うどんこ病の特徴は、温度が低くてもカビが発生すること。葉の表面から発生して裏まで蔓延してしまうと手遅れなので、初発期の葉の表面に発生した時点で食い止めることが重要
・うどんこ病は、葉の表面に寄生するのが特徴。葉の内部組織には侵入せず増殖していかないので、薬剤散布水量を多くして洗い流すようにかけていくと効果的
・農薬の種類や量なども、一度かけたら様子を見ながら対処していく。一つの農薬で効かなかったら、別の種類を試してみる。ローテーションしながら様子を見る
・好天が続くと、虫の発生に注意が必要
・ハダニの場合は、しっかりと駆除しないと翌年も発生する場合がある。しっかりと抑えきれているかがポイント。発生しているところは毎年発生し、完全に駆除できているところは、何年も発生していない傾向がある。温度が上がると一斉に発生するようなものではないので、しっかりと駆除しておくことが大切
講習会模様
▶ 定植からつる伸張期までのポイント
・抑制型の栽培は、春作型に比べ土壌が乾燥しやすいので、活着がひとつのポイントになる。定植後の水管理(灌水)が重要。水は接着剤のような役目をするので、土壌が乾いていると初期の活着がスムーズに行かない。水管理が、春作型メロンと抑制メロンの異なる点。定植してから玉がつくまで、水分管理に注意する
・生育を揃えて、着果する日をほぼ同じようにし、開花時期をそろえていくことが重要
・整枝作業の脇芽を摘む作業で、成長した段階で一斉に実施すると、根が影響を受ける。根が影響を受けると、後半、草勢に不良になる。整枝作業は、早め早めに丁寧に行い、一度に行わないよう、気を使って丁寧に行うことが大切
▶ 高温対策
・高温になると、根の張り具合に影響を及ぼす
・シルバーポリトウなどを上からかけて、遮熱対策を施す
・葉には光が必要だが、根が熱くなると生育に影響がでる
・長いハウスの場合は、妻面の開放だけでは熱が抜けきれないので工夫が必要。ハウス妻面の両サイドの上部を開放できるようにして、風を通して熱溜まりを防止するとよいが、9月以降は閉じれるようにする
講習会の様子
▶ 着果期のポイント
・早朝にミツバチが交配して実をつけるので、ミツバチが飛べる環境と花が咲いている環境が重要になる。基本的に温度が15℃以上28℃以下あれば、ミツバチは飛ぶので、温度調整をしっかりと行う
・湿度が高いと、ミツバチは飛ばないし、花粉が割れてしまうので、換気や湿度が低下するような環境を整備する
・メロンがピンポン玉から10日間くらいまでの時期(初期)に縦肥大の成長がある。そこで大体の玉肥大の形が決まってくる。縦肥大の後に横肥大しだす。縦肥大の時期に、かん水してしっかりと成長させることがポイントになる
・抑制メロンは、成熟が60日~65日タイプ。葉が光合成して糖を生産する能力は、70日程度が最大。着果より手前の葉は、収穫近くでは活動が弱くなるため、着果より先の葉を大きくしっかりさせることが重要
・遅れて追肥をすると玉が青いままとなるので、追肥はあまり薦めない。この品種は元々緑肌であり、ネットがきれいに張ってくることによって、最終的に白肌に見えてくる。追肥で窒素を多く入れすぎると、青いメロンになってしまう。早めの追肥や、少量の追肥であれば、問題はない
・抑制メロンは良い肉質をもっているので、その点を生かした栽培方法を目指していければと思う
しっかりメモを取りながら
▶ 病害虫の話:農業改良普及センター・桂川 専門主任
農業改良普及センター・桂川 専門主任
▶ 殺虫剤
・モベントフロアブルは、アブラムシとハダニの両方に効き、今までの薬より長い期間効果がある。着果前は、ミツバチに影響が出るので、着果確認後の使用が安全。最近の薬は、連用するとあっという間に効かなくなる薬が多いので注意が必要。1シーズン1回の使用で、最適な時期に使用して、効果を上げることがポイント。しっかり効かせるためには、しっかり散布することが大切。10アールで300リットルほど散布。多い分においては大丈夫なのですが、少ないと効果が減少
・モベントフロアブルは、ハモグリバエには効かないので注意。今年追加された、ディアナ、プレオなどの殺虫剤もしっかり効果あり。ハモグリの場合、卵を産み付ける成虫と葉っぱの中にいる幼虫とが混在している場合が問題で、成虫と幼虫を同時に防除することが難しい。5日間くらいの間隔で3回くらい薬を連続散布して防除していくことが必要。
生産履歴使用ガイドブック
▶ 病害予防
・うどんこ病の場合は、予防剤としてクムラスが効く。10日に1回くらい丁寧にかけていかないと、広がってしまうので注意が必要
・うどんこ病予防剤「ガッテン乳剤」なども発生時にすぐに散布すれば効果あり
・今年は、6月に天候不順だったために、菌核病、つる枯病、ぺと病が発生。特につる枯病には注意。つる枯病で枯れた葉は、カラカラになってハウスの土壌に落ちカビが残っている。9月頃のジメジメした時期にカビが残っていると発生しやすい。葉がVの字型に枯れて茎も枯れてくる。茎をカットするときは、節と節の真ん中ではなく、節の近くをカット。カットは、天気の良い日に行い、切り口をすぐに乾かすことが大切
晴天の下の講習会
この後、メロンハウスを見学して終了となりました。
温度、湿度、水分、防除など、緻密な管理作業の難しさ、大変さを知ることができました。
貴重なお話をありがとうございました。
抑制メロン・生育状況の観察
黄美香メロンのハウス
収穫前の黄美香メロン
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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子