2012年7月9日(月)
世界の大きなうねりの中、日本の農業は、流れに沿って大きく変化を遂げようとしています。
6月30日(土)、「第18回 全国農村交流ネット21 北海道の集い」が、中富良野町農村環境改善センターで開催されました。午前9時からスタートした会場は、参加された町内外の80名を超える人々で満席。
「全国農村交流ネット21」は、1995年(平成7年)7月7日(土)に、岩手県の「館ケ森アーク牧場」でスタートして以来、今回で18回目を迎えます。
「農村」「農業」「地域」をキーワードに、全国で活動している人々が集い、情報交流によって一層元気になって活動していくことを目指す組織。農業生産、加工、6次産業、飲食、JA、行政、NPO、教育機関、学生など若手からベテランまで、幅広い人々が参加する研修会です。
第18回全国農村交流ネット21北海道の集いの舞台
今回は「北海道部会」のメンバーが集い「日本の農業がどのようにわろうとしているのか」がテーマ。
開催場所は、北海道の真ん中、「北海道のへそ」とされる「ラベンダーの町・中富良野」です。
▶ 第18回 全国農村交流ネット21 北海道の集い・概要
・テーマ:「日本の農業はどう変わろうとしているのか」
・サブテーマ:「見よう!北海道富良野の農業 命の源は農村と自然の中にある」
・会期:2012年6月29日(金)〜7月1日(日)
・会場:中富良野町農村環境改善センター(北海道空知郡中富良野町南町)
・プログラム:
6月29日(金):ラベンダーの妖精が住む中富良野に集合、町内視察、全体交流会
6月30日(土):メインの全体会・旬の昼食会・リレー産品紹介・アトラクション、自由交流会
7月 1日(日):ふらの観光スポット巡り、もっと感動・もっと堪能(オプショナルツアー)
私達は、6月30日(土)のメインの全体会に参加させていただきました。
初代呼びかけ人・長谷山俊郎氏(日本地域活力研究所 代表)の総合司会により、北川光夫氏((有)天心農場 会長)のご挨拶でスタート。
続いて、西村弘行氏(元東海大学副学長・名誉教授)の基調講演を戴き、その後、黄倉良二氏(北海道有機農業をすすめる会顧問)、村上友希氏(JAふらの代表理事・組合長)、北川光夫氏((有)天心農業会長)、木佐剛三氏(中富良野町長)の4名の方々のリレー講演が行なわれました。
ご挨拶・北川光夫 氏((有)天心農場会長)
▶ 論点整理:長谷山俊郎氏(日本地域活力研究所 代表)
長谷山俊郎 氏は、秋田県生まれ、茨木県在住の70歳(1942年生まれ)。農林水産省農業研究センター および独立行政法人 農業工学研究所の地域計画研究室長などを経て、2003年(平成15年)5月に「日本地域活力研究所」を設立。様々な講演をされながら、地域活力向上の支援等で幅広くご活躍。
長谷山俊郎 氏の著書『健康はあなたが摂るもので決まる~生命力の高め方~』(素人社、2010年発行)には、体に負担をかけない食・水・空気の摂り方などの健康法が示されています。
長谷山俊郎 氏のお話しの中で、農業における3つのキーワードは、1.生命(健康)2.共生(地域や人とのつながり)3.システム(マーケティング、6次産業化)であり、日本のこれからの農業を考える上での論点についてお話くださいました。
・生命力ある農産物を生産しているという自覚を持ち、地元で生産し地元で加工し販売していく。
・地域との連携を図りながら、地域に根ざした特徴ある特産品を提供して、地域ブランドの形成を図る。
・農業が持つ「美・心の癒し」を事業の活性化に反映させていく。
これからの農業を考える上での大切なポイントを示してくださいました。
▶ 基調講演:「農商工官連携と機能性食品」西村弘行 氏(元東海大学副学長・名誉教授)参照:Wiki
西村弘行 氏は、横浜市出身の67歳(1945年生まれ)。
1969年、名古屋大学大学院農学研究科修士課程修了し、1974年、北海道大学農学博士を取得。
北海道東海大学学長就任後、現在、東海大学名誉教授。
NPO法人 北海道バイオ産業振興協会顧問、各種委員をはじめ、幅広くご活躍中です。
2006年(平成18年)には、「ネギ属植物処理物含有食品」において特許庁長官奨励賞を受賞されました。
2011年4月に上梓された『北の健康野菜:行者ニンニクの薬効とその秘密』(北海道新聞社 発行)には、行者にんにくをはじめ、チコリー、ヤーコン、玉ねぎ、アスパラなどなど、北海道野菜の健康機能を科学的に解明し、その秘められた薬効が示されています。
西村先生は、日本の食生活における変化、現代病である生活習慣病の予防に寄与する道内食材、消費者のニーズに合った食品開発、科学的に裏付けされた健康について、様々なことをお話してくださいました。
左:講師の皆さん 右:満席の会場
▶ リレー講演1:
「北海道の有機栽培と北海道の米」黄倉良二氏(北海道有機農業をすすめる会顧問)参照ページ
黄倉良二 氏は、1973年(昭和48年)、34歳で農協理事に就任して以来、1991年(平成3年)から農協代表理事組合長を3期9年間勤められ、2000年(平成12年)2月の広域合併に至るまでの27年間、北竜町農協の仕事に心血を注がれてきました。
2000年(平成12年)、北竜町農協は、8つの農業協同組合の広域合併によって、北竜町農業協同組合から、きたそらち農業協同組合(JAきたそらち)北竜支所となりました。
黄倉氏は、合併時にJAきたそらち代表理事専務に就任。
2002年(平成14年)から2007年まで、代表理事組合長を就任されました。
黄倉氏は、1973年(昭和48年)、後藤亨 氏(後藤三男八氏 御子息)とともに「自然農法米(化学肥料や農業防除をしない米づくり)」に取り組み始めます。
15年後の1988年(昭和63年)に開催された北竜町の農民集会で、北竜町農協青年部が「国民の命と健康を守る食糧生産」宣言を行い、町をあげての安心・安全な食糧生産であるクリーン農業への取り組みがスタートしました。
1993年(平成5年)には、特別栽培米の取り組みが開始。
1996年(平成8年)、北竜町玄米ばら調整集出荷施設が完成。2001年(平成13年)、自然農法米を有機JASに申請し認証されます。
2004年(平成16年)、北竜町の全戸が加入し、北竜町うるち米生産組合が設立。使用農薬成分を統一し、12成分以下の低農薬栽培としました。
2005年(平成17年)には、玄米ばら調整集出荷施設を改修。
2006年(平成18年)には、お米で生産情報公表JASの認証を受けました。米の栽培で、200戸近い農家が所属する生産組合が「生産情報公表農産物JAS規格」を取得したのは、日本で初めてであり、現在でも北竜町だけです。
さらに、2007年(平成19年)には、有機農産物小分け業者の認定を受け、ひまわりライスにJASマークを添付して販売することが可能になりました。
玄米ばら調整集出荷施設では、コンタミ対策が施され、全量色彩選別するための200チャンネル選別機が4台装備。集荷された米にロット番号をつけて保管・管理。すべてのコメの生産履歴がホームページで追跡できるシステム(トレーサビリティー)が導入されています(参照ページ)。
こうして玄米受け入れ時に、きめ細かな仕分けが可能になったことにより、実需者のニーズに応じた仕分けが実現し、品質にむらのない商品の供給ができるようになっていきました。
「北竜町が歴史と世代を超えて、山と木と緑を守り育み、それに支えられた力のある豊かな水を大切にし、親から子、子から孫へと誇り得る土を伝承する。
天に感謝しつつ、『食べものはいのち(生命)』の思いを込めた百姓魂で、手と技術と心を尽くす実践農業こそ、環境を保全するための農業ではなく、命を最も大切にする「農業保全型環境」であり、これからも挑戦し続けます」
と黄倉氏の熱いお言葉です。
▶ リレー講演2:
「地域の6次産業へ向けたJAふらのの取り組み」村山友希氏(JAふらの代表理事・組合長)
・JAふらのは、「北海道のへそ」と呼ばれ、北海道の中心に位置した地域です。
・東の十勝岳山麓を望む、緩やかな地形の畑作、西の芦別岳山麓の扇場地形に広がる水田耕作。周囲をぐるっと山に囲まれた富良野盆地は内陸性気候。冬は-30℃、夏は30℃を超える寒暖の差が大きい環境は、農業に適した土地です。
・2001年(平成13年)2月、JAふらのは、富良野市、上富良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村の農協が1つとなり誕生。組合員戸数1,890戸、作付面積約22,500ha。
・ふらの農協が、地元の豊富な野菜を生かした加工品事業を展開し始めたのがおよそ20年前。地元野菜を使った漬物づくりからスタートして、ドレッシング、ソース、ジュースと様々な加工品の開発を手がけ、今や北海道から九州に至る全国各地のスーパーや生協等に販路が広がっています。
・ふらの農協の直営店「オガール」(フラノマルシェ内)では、ふらの農協の全商品が扱われており、にんじんジュースやトマトジュース等様々な加工品が観光客の人気を集めています。
・また業務用商品として、調味料「ソース」は、とんかつチェーン店「新宿さぼてん」の全店舗で使用されているとのこと。また、スナック菓子大手の湖池屋との業務提携によるポテトチップス専用工場「シレラ富良野」で製造される「ふらのポテトチップス」等が注目を浴びています。
「多くの課題が山積みした状況の中で、「ふらの」ブランドを活かした地域の6次産業化を軸に、新たな時代に対応した農業振興を推し進めていきたいと思います」
と村上組合長のお言葉。
ふらの農協の概要を踏まえながら、これまで築きあげてきた加工事業の取り組みにおける全体像を丁寧にお話くださいました。
▶ リレー講演3:
「1軒逸品と私にとって農業とは何か」北川光夫氏((有)天心農場会長)参照ページ
「天心農場」は、中富良野町で100年以上続く野菜農家。
北川光夫氏は、農協に営農指導の担当者として13年勤務。この経験を元に、玉ねぎをはじめ、カボチャ、アスパラガス等、10種類を超える野菜栽培を手掛けています。
特に珍しいハーブの仲間のチコリー、エシャロットなどは、東京や札幌のレストランで使用され、高い評価。
チコリーコーヒー、チコリー入り玄米茶、チコリージャム、チコリーテンシンジェル等のチコリーを使った商品が注目されています。
また東京に本社を置く日本農林社とタイアップして試験栽培された、新品種「北海天心」と「玉灯り」という2品種の玉ねぎも、安定した生産が続けられています。
「天心農場」の名付け親でもある北川光夫 氏は、北海道の食文化に貢献した個人に贈られる「第4回小田賞」を受賞されています(2007年5月受賞)。この「小田賞」は、帯広に本社を置く有名製菓メーカー「六花亭」の創業者・小田豊四郎氏の基金により設立された賞です。
「『天心』つまり、『天の心』とは神を意味しています。農業は、緑を育ててきれいな空気を作り、綺麗な水を作って豊かな土を作り、人が生きていくための大事な食料を作ります。
本来、空気や水を作るのは神様の仕事。農家は神様に代わって仕事をしているのです。だから、天の心の仕事、農業は天心なのです」
と語る北川氏の農産物や加工品の数々は、地域に根ざした個性的なものであり、元気で生命力にあふれ、まさに天の心が感じられるものです。
▶ リレー講演4:
「わが町の土地改良 国営土地改良事業」木佐剛三氏・中富良野町長
富良野盆地地区における土地改良事業のはじまり、現状、そしてこれからの事業について、木佐町長のお話です。
現在、富良野盆地地区において、国営農地再編成事業が展開されています。2008年度(平成20年度)に着工し、2015年度(平成27年度)完了予定。事業工期8年間で2,560haを整備するという、過去に例のない程の大規模な区画整備事業です。
富良野盆地地区は、中富良野町と富良野市に位置する水田地帯。圃場が小規模であり、排水不良が生じていることから、効率的な機械作業が行えず、生産性の低下を招いています。さらに、離散跡地継承に伴い農地が分散化している状況にあり、農業経営が不安定なものになっています。
そこで本事業によって、既耕地を再編整備する区画整理、農地造成、用水路・排水路の整備、農道の整備などを一体的に施行し、生産性の高い農業基盤を形成することを目指しています。
「命ある農産物を育むための農地、その農地を豊かにするための土地改良事業は、これまでも、そしてこれからも、私達の永遠のテーマです」
木佐町長の力強いお言葉です。
命ある食べものを生産していく、これからの日本の農業のあり方が、心に描かれ、じっくりと染みこんでいくような貴重なお話の数々でした。
素晴らしいお話、素晴らしい感動を、ありがとうございます。
▶ 昼食会・産品紹介・抽選会@JAふらの中富良野支所3階
12時30分、場所をJAふらの中富良野支所3階に移動し、昼食会が行なわれました。
昼食は、中富良野産の旬の食材を使った料理が、テーブルいっぱいに並びます。
オレンジと人参のやわらかムース(ふらのラテール)、知床地鶏と玉ねぎの長芋ソースグラタン(ふらのラテール)、北星山サンド(食生活改善推進員)、なかふらの彩どりサンド(食生活改善推進員)、シフォンケーキ(食生活改善推進員)、旬のとうもろこし(ふらのイエロー)、中ふらのメロン、そして、幌加内そば(そば工房坂本)などなど。
カレーライス(カレー工房きらら)は、地元のお母さんたちの手作り料理。玉ねぎの深いコクを醸し出すカレールーは、パンチのきいた美味しさです。中富良野の旬の美味しさを心ゆくまで堪能!
そして、(有)ファーム富田様、(有)天心農場様、彩香の里なかふらの様、中富良野町観光協会様、なかふらの酒造振興会様、JAふらの様から、産品紹介がありました。各地域の特徴が生かされた、素晴らしい商品の数々に感動!
入り口で手渡された番号カードで抽選会。北竜町参加グループが当たった商品は、ファーム富田のラベンダー石鹸セット、(有)天心農場のチコリーテンシンジェル、なかふらの酒造振興会のお酒「法螺吹(ほらふき)」、JAふらののとうもろこし(ふらのイエロー)などなど、家族の方々への嬉しいお土産です。ありがとうございます!!!
昼食会
ご挨拶される北川光夫 氏(左)と佐野豊 北竜町長(右)
▶ 自由交流会@ホテル「ふらのラテール」
閉会式終了後、ホテル「ふらのラテール」へ。18時に集合し、夕食親睦会。
黄倉良二さんの司会進行により、ご出席の方々のそれぞれの熱い想いが語られました。流れ行く、和やかで、和気あいあいと楽しい時間。
日本の農業を愛しみ、命を育み続ける人々の情熱は、今年の日本一のラベンダーの町・中富良野の町から、来年の日本一のひまわりの町・北竜町へとバトンタッチされます。
素晴らしい魂の導きと出会いに、深く感謝いたします。ありがとうございます。
左:黄倉さんご挨拶 右:乾杯!
天からの贈り物、命あふれる食べもの
命を吹き込んで愛しみ、共に分け与え合う尊い食べもの
自然の大地と清らかな水と輝く光が織り成して生まれいずる、神聖なる食べものに
大いなる愛と感謝と祈りをこめて。。。
ポスターそろい踏み「北竜町」と「中富良野町」@旭川空港到着ロビー
◆ 参考ページ
・第19回全国農村交流ネット21北海道の集い in 北竜町 2013(お知らせ)
・第18回全国農村交流ネット21北海道の集いプログラム(平成 23 年 12 月)Pdf
◇ いくこ&のぼる