黒千石大豆の新品種「竜系3号」について拓殖大学北海道短期大学名誉教授・三分一 敬 先生にお話を伺いました

2018/05/13 16:03 に 寺内昇 が投稿   [ 2019/01/24 16:58 に更新しました ]
2018年5月14日(月)

4月24日(火)、黒千石事業協同組合(高田幸男 理事長・北竜町)の顧問・三分一敬(さんぶいち たかし)先生に、極小粒黒大豆「黒千石」との出逢いから新品種「竜系3号」育成に至るまでの大豆育種奮闘記についてお話を伺いました。

三分一先生は、北海道士別市出身、1938年(昭和13年)生まれの80歳。北海道大学農学部卒業・農学博士。拓殖大学北海道短期大学 名誉教授、公益財団法人北農会 顧問(前会長理事)、さっぽろ士別ふるさと会 会長でいらっしゃいます。


北海道拓殖短期大学・三分一敬(さんぶいち たかし)名誉教授 
北海道拓殖短期大学名誉教授・三分一敬(さんぶいち たかし)先生


三分一敬先生と黒千石大豆

士別市の農家に生まれた三分一敬先生は、子供の頃から貧しかった実家の農業のお手伝い。現在の健康な身体は、小・中・高校時代の農業で鍛えられたお陰と、三分一先生。農業の傍ら猛勉強して北海道大学へ入学。大学の学費は奨学金、生活費はアルバイトで賄って卒業されました。

・1961年(昭和36)年
 北海道農業試験場十勝支場に就職し、大豆育種科に配属される。大豆品種保存(遺伝資源調査)、純系分離試験などを担当する中で、品種保存約500点の中に「早生黒千石」が含まれていた。三分一先生と黒千石との出逢いは、大豆育種研究の第一歩から始まっていた。

・1960年代(昭和30年代)
 日本の大豆が自由化された時代。海外から輸入される安い大豆に対抗できる国産大豆の開発に取り組むために、北海道立農業試験場十勝支場に大豆研究室が増設された。新人の3名「成河智明氏・佐々木紘一氏、三分一敬氏」が採用され配置。

・1965年(昭和40年)
 低温気象条件の山麓や沿海に育種材料を栽植して生育解析や選抜を行う研究を開始

・1968年(昭和43年)
 耐冷多収品種「キタムスメ」を育成

・1970年(昭和45年)からの2年間タイへ
 日・タイ大豆技術協力プロジェクトの育種専門家のトップバッタ−として派遣され、熱帯における最重要病害のひとつである大豆銹病に対する抵抗性などの大豆品種改良研究を行う。

・1972年(昭和47年)
 大豆研究分野の重鎮の一人、福井重郎氏より「北海道における野生大豆の有無に決着を付けてほしい」と要請を受ける。

・1973年(昭和48年)9月末
 北海道農業試験場十勝支場とうもろこし育種課長の仲野博之氏の協力を得て、日勝峠を超え、沙流川(さるがわ)を中心に探索。ついに、平取町岩知志地区で、群生しているツルマメ(野生大豆)を発見。

・1978年(昭和53年)
 大豆の耐冷性に関する育種学的研究により、北海道大学より農学博士号を授与される。

・1979年(昭和54年)
 てん菜科(科長)へ移動。糖分取引制度に向けた試験研究に従事。

・1985年(昭和60年)
 中央農業試験場水稲育種科へ異動。5年間、北海道米の食味向上を主目標としたイネ育種に従事。

・1989年(平成元年)
 研究実務を離れ、中央農業試験場稲作部長、企画情報室長、植物遺伝資源センター長、北見農業試験場長、中央農業試験場長を歴任

・1998年(平成10年)37年間の研究活動を終え、農業試験場を退職。

・1998年(平成10年)インドネシアで、JICAの大豆種子生産プロジェクトに従事

・2000年(平成12年)拓殖大学北海道短期大学の教授に就任。約10年間、主として作物学の授業を担当

大学ゼミの授業の中で、野生大豆と栽培大豆(品種)を並べて栽培し、生育特性や子実生産特性の差異についての研究を実施。その中で、野生大豆と栽培大豆の中間的特性をもった材料として供試したのが「早生黒千石」だった。学生たちの実験圃に、野生大豆と比較して、極小粒黒大豆の「黒千石」を栽培していた。

当時、拓殖大学北海道短期大学・農場管理委員会の委員長として「農場公開デー」の設置を提案・実施。「農場公開デー」は、学生たちにとって農家の人々と直接触れ合う貴重な機会となった。その実習圃の見学に訪れたのが、北竜町を中心とした黒千石生産農家グループだった。

・2006年(平成18年)
 2・3回の現地見学や研修会を重ね、北竜町との交流がスタート。

・2008年(平成20年)
 黒千石事業協同組合(2007年設立)から、正式に黒千石の品種改良の要請を受ける。

・2009年(平成21年)
 黒千石の品種改良を目指した育種が本格的にスタート、人工交配を実施。

・2014年(平成26年)
 町長を代表とする「北竜町コンソーシアム」が農林水産省の補助金(3か年)を受けて品種改良を強化。最有望系統に「竜系3号」の育成系統番号を付す。

・2014年〜2015年(平成27年)
 2か年間、生産力検定試験および北海道内4箇所で現地調査に供試。

・2016年(平成28年)
 「竜系3号」を農林水産省に品種出願・受理される。一般栽培がスタート。

・2017年(平成29年)
 黒千石事業協同組合が生産する「黒千石」の50%程が「竜系3号」に置き換わる。
 在来の「黒千石」を使った処方で商品を生産している企業には、在来「黒千石」を出荷。
 その他の加工品等は全て「竜系3号」を使用。「黒千石」と「竜系3号」を混ぜることはない。


品種改良とは

品種改良は、長い目でみると狩猟民族から農耕民族への移行期からスタート。ある土地で実った作物を譲り受け、他の場所へ移し良く実った作物の種を自宅の庭に播く。更に庭にもっと良い実がなったので、その種だけを翌年に播いた。これが品種改良の原点であり進歩。

主として農民によって他の地方から導入され、また選抜を加えられて長年栽培されたものが「在来種」。それに対し、人工交配や突然変異誘発など近代育種技術によって作られたものが「育成品種」。近代育成品種は在来種に比べて収量性・品質等が改良されて栽培しやすく、我が国の作付けの9割以上を占めている。

現在、大豆で主として使われている育種技術は、交配による交雑育種法である。交雑育種法は、遺伝的に異なる品種同士を掛け合わせることにより多様な遺伝的背景を持つ雑種集団を育成し、ここから優良品種を選抜する手法。

品種育成の始まりは、 農商務省農事試験場東奥支場(1893年・明治26年設立)で、大豆の在来種の栽培試験を行い、優良品種の選定から始まったとされる。その後、農商務省農事試験場陸羽支場で、純系分離法、交雑育種法による品種改良が開始された。

これまで国で育成された大豆138品種(現農林認定品種)のうち130品種は交配育種で育成されている(2002年)。なお、北海道では、遺伝子組み換えによる品種改良は認められていない(GM条例)。

※ 稲の場合は、明治期に農民・中山久蔵氏が、北海道在来イネ「赤毛(稲穂に赤くて長いのぎがついた稲)」から寒冷地向きの品種を選び出し、北海道ではじめて米作り(赤毛種)に成功を納めた。さらに品種改良を重ね、「坊主」という優れた耐寒品種が生み出されていった。その後も品種改良は続けられ、良質な品種が登場している。

※ 参照「農林水産省委託革新的農業技術習得研修 大豆の品種開発の現状と成果」作物研究所 大豆育種研究チーム・羽鹿牧太 氏(PDF


栽培大豆の原型「野生大豆・ツルマメ」

一般的に、栽培大豆の原型(野生大豆)と考えられているツルマメは、広く中国大陸、シベリア、朝鮮半島、日本に分布していることが知られており、当時、牧野富太郎氏の『日本植物図鑑』には、日本における分布においては、北海道が含まれていなかった。

三分一先生は、大豆研究分野の重鎮の一人・福井重郎氏より「北海道における野生大豆の有無に決着を付けてほしい」と要請を受ける。そこで、1972年(昭和47年)の秋、アメリカの有名な大豆育種研究者であるリチャード・L・バーナード氏とともに、二人で日高山脈の東側(十勝側)を中心に探索したが発見することはできなかった。

翌1973年(昭和48年)9月末、北海道農業試験場十勝支場とうもろこし育種課長の仲野博之氏の協力を得て、日勝峠を超え、沙流川(さるがわ)を中心に探索。ついに、平取町岩知志地区で、群生しているツルマメ(野生大豆)を発見。その後の調査で、日高平野の河川および函館に近い道南の河川流域でも、ツルマメの自生が確認された。

野生大豆は、粒が米粒のように小さい。真っ黒い仁丹のような大きさで、百粒の重さが3g、茎の長さは100~150cm。ツル性で、他の植物に巻きついていた。


野生大豆(ツルマメ) 
野生大豆(ツルマメ)(撮影:三分一敬先生)


以後、野生大豆はどのような経緯で、栽培品種に変化してきたのかを研究した。
野生大豆(ツルマメ)は、黒色種皮。そして北海道における黒豆の代表品種が「いわいくろ」。さらに、極小粒、黒色種皮に「早生黒千石」を半野生種に近いものと位置づけて、拓殖大学北海道短期大学の実習圃に「いわいくろ」「早生黒千石」「野生大豆」を並べて栽植し調査研究を実施。

昔は、自分の庭に野生大豆を栽培し、良質の大豆が実ると、次の年には、その良質の種を播種して育てる。その繰り返しで、世界の品種改良が行われてきた。大豆だけでなく、稲やジャガイモのなどのすべての野生作物においても、こうして品種改良が続けられてきた。


野生大豆(ツルマメ)成熟期 
野生大豆(ツルマメ)完熟期(撮影:三分一敬先生)


 「早生黒千石」とは

「黒千石」は道内の種苗業者が「黒千石」という名で採種・販売していたものが、中央農業試験場より、1941年(昭和17年)に畑作物優良品種「主要特性:緑肥用、黒豆極小粒」として決定され「早生黒千石」と命名された(優良品種としては1959年(昭和34年)に廃止されている)。(参照 >>

また、北海道立総合研究機構農業研究本部中央農業試験場の遺伝資源として、「早生黒千石(わせくろせんごく)」の品種名で保存されている。

【特性】小葉の形は円葉で、花は赤紫色,毛茸は褐色である。莢は小さく黒褐色であり、着莢数は極めて多い。主茎長は95cm内外で高いが、「茶小粒」に劣り、生草収量も「茶小粒」より少ない。開花始は8月中旬、成熟期は10月中旬で極晩生種に属する。子実は球形で,百粒重が10g~11gと極小粒で、種皮は黒色で、種皮にはやや光沢がある。子葉色は緑である。

※ 農業生物資源ジーンバンクに登録されている「KUROSENGOKU」は、福岡県から導入されています(参照 >>


『北海道における豆類の品種』(財)日本豆類基金協会 
『北海道における豆類の品種』(財)日本豆類基金協会

早生黒千石 
早生黒千石


 黒千石を改良した「早熟、耐倒伏性強、安定多収」の新品種「竜系3号」

「黒千石」は、完熟期が極晩生かつ耐倒伏性弱。ただ、緑肥用として栽培されていたため、倒伏した状態でも圃場に鋤き込めるので目的は達成できていた。 一方、食用として栽培すると、成熟期が10月中旬以降のため、降雪のため収穫ができなくなることもあり、また、倒伏するとコンバインでの収穫は難しく、収量が著しく低下してしまう。さらに、倒伏した豆は障害粒になりやすく品質低下をもたらす。緑肥用に向いている黒千石大豆では、食用としての市場の大きな需要には応えられない状況だった。

そこで、黒千石事業協同組合は食用の黒千石大豆を安定して市場に供給することを目指し、生産者である組合員の想いを取りまとめ、黒千石大豆の「早熟、耐倒伏性強、安定多収」の品種改良を三分一先生に依頼した。

品種改良された「竜系3号」は、黒千石大豆より成熟期が7日早く、長茎、多収、耐倒伏性で、かつ莢の着く位置が非常に高いため(※)、コンバイ ンによる収穫ロスが減ることで、実質的な収量の増加が見込まれる。子実の特性は、球形、光沢強、及び子葉色緑(中身が緑)。百粒重は11g〜12g。腐敗による障害粒が少ないので外観品質に優れる。

2014年・2015年の三分一先生による最下着莢節位高の調査:2か年の平均高さ=竜系3号:20.4cm、黒千石:14.3cm)

・2006年(平成18年)
 拓殖大学北海道短期大学・三分一教授が、2・3回の現地見学や研修会を重ね、北竜町との交流がスタート

・2008年(平成20年)
 2007年に設立した黒千石事業協同組合(高田幸男 理事長・北竜町)が、拓殖大学北海道短期大学・三分一教授に、極晩生かつ耐倒伏性弱の「黒千石」の品種改良を依頼。


品種改良中の様々な系統 
品種改良中の様々な系統


・2009年(平成21年)
 「黒千石」における「早熟、耐倒伏性強、安定多収」の品種改良を目指した育種が本格的に開始される。
「黒千石」と「ユキシズカ(早熟・耐倒伏性の大豆)」の交配を行い、交雑育種をスタート。
「黒千石」を種子親(母本)、花粉親(父本)を「ユキシズカ」として、ビニールハウス内に数回の播種期で栽植。交配花数は100花で、成功率5%。「黒千石」の場合、子葉色(種皮を剥いだ子実の中身)の緑色は母性遺伝によるものであり、交配時には、必ず「黒千石」が種子親(母本)としなければならない。

・2010年(平成22年)
 雑種第一代を自宅のビニールハウス内で養成し、交雑成功個体5個体で、採種粒数は約3,000粒を確保

・2011年(平成23年)
 雑種第二代を深川に2,000粒、士別に1,000粒、雑種第三代は深川に500粒を播種。選抜は、早熟個体を中心に行い、刈り取り前に黒色種皮個体及び草型の優れた個体を合計300個体を収穫。さらに、室内で、子実の大きさおよび品質で選抜を加えた。結果、最終選抜個体数は雑種第二代は31個体、雑種第三代は18個体で、適性熟期や望ましい草型の頻度は著しく少ない。


竜系3号 
竜系3号

中は緑色 
中は緑色


・2012年(平成24年)
 岩見沢市と北竜町の農家圃で、雑種第三代および第四代を中心に栽植。岩見沢は1畦4m・40個体、北竜では1畦20m・130個体を栽植。結果、熟期、草型、耐倒伏性、品質については、ほぼ期待水準を兼備する黒色種皮個体を多数選抜することができた。

岩見沢の試験圃は自宅から2km程で、播種や収穫は妻に手伝ってもらい、北竜町では、拓殖大学北海道短期大学時代の三分一ゼミ卒業生や多くの農家の方々がボランティアで応援してくださった。

・2013年(平成25年)
 岩見沢市に180系統、北竜町に145系統を栽植。圃場調査、成熟期調査および室内品質調査に基づいて36系統を選抜。

・2014年(平成26年)
 町長を代表とする「北竜町コンソーシアム」が農林水産省の補助金(3か年)を受けて、規模拡大、現地調査、子実成分分析、加工適正性試験の実施など強化がはかられた。最有望系統名に「竜系3号」を付した。

・2014年〜2015年(平成27年)の2か年間、生産力検定試験および北海道内4箇所で現地調査に供試

・2016年(平成28年)2月
 雑種第八代である「竜系3号」を農林水産省に品種出願(新品種の登録申請)・受理される。農林水産省に品種出願(登録申請)を提出した地点で、利用権利が生じる。さらに新品種の登録認可がおりるまでおよそ3年間の日数を要する。一般栽培がスタート。

・2017年(平成29年)黒千石事業協同組合が生産する「黒千石」の50%程が「竜系3号」に置き換わる。


竜系3号と黒千石大豆 
竜系3号と黒千石

竜系3号と黒千石大豆 
完熟期を迎える竜系3号(左)とまだまだ青い黒千石(右)


北竜町コンソーシアムが農林水産省の補助金を受けて品種改良
<新品種・新技術活用型産地育生支援事業による3年間の国の支援>


 ・2013年(平成25年)
 2009年から始まった、黒千石大豆の期待される品種育成の目処がついたので、試験規模拡大のために、農林水産省の公募事業に申請し採択される。

・2014年度(平成26年度)〜2016年度(平成28年度)
 2014年より3年間、農林水産省の補助事業がスタート。 「北竜町コンソーシアム」では、三分一先生をアドバイザーとし、「新品種・新技術等の普及に向けた取り組み」について事業が実施された。

<北竜町地域コンソーシアム>
・代表者名:北竜町長 佐野豊
・市町村:北竜町
・学識経験者:きたそらち農業協同組合北竜支所
・実需者:(株)豆蔵、池田食品(株)、中村食品産業(株)、(株)北竜振興公社
・生産者:黒千石事業協同組合
・アドバイザー:空知農業改良普及センター北空知支所・三分一敬
・事業費(国費):約12,000,000円


黒千石大豆と竜系3号の成分比較
 一般財団法人 日本食品分析センターによる分析結果(2016年)


竜系3号

黒千石

方法

たんぱく質

38.9 g/100g

38.5 g/100g

ケルダール法

脂質

22.3 g/100g

24.1 g/100g

クロロホルム・メタノール混液抽出法

灰分

5.6 g/100g

5.4 g/100g

直接灰化法

炭水化物

33.2 g/100g

32.0 g/100g

エネルギー

479 kcal/100g

488 kcal/100g

糖分

11.7 g/100g

12.7 g/100g

ソモギー変法

シアニジン-3-グルコシド

0.12 g/100g

0.12 g/100g

高速液体クロマトグラフ法

ポリフェノール

0.98 g/100g

0.95 g/100g

FOLIN-CIOCALTEU法


分析試験成績書・日本食品分析センター  分析試験成績書・日本食品分析センター  分析試験成績書・日本食品分析センター  分析試験成績書・日本食品分析センター 
分析試験成績書・日本食品分析センター(2016年1月6日、2018年3月11日)


北海道黒千石大豆の商標登録

2017年(平成29年)9月、黒千石事業協同組合は、特許庁から、指定商品又は指定役務並びに役務の区分・第29類「北海道の黒千石大豆、北海道産の黒千石大豆を原料とした納豆、北海道産の黒千石大豆を原料とした豆腐、北海道産の黒千石大豆を原料とした煮豆、北海道産の黒千石大豆を原料とした即席カレー、北海道産の黒千石大豆を原料としたふりかけ」(第30類は以下の写真参照)の商標登録証を受領(登録第5982183号)。

●「黒千石」銘柄及び商標「北海道黒千石大豆」に所属する品種の具備すべき特性として(三分一敬 先生)
 ① 種皮が黒色であること
 ② 臍(へそ)が黒色であること
 ③ 子実の大きさが極小粒であること
 ④ 子葉が緑色であること

● 弁理士の見解
 ① 「黒千石」の具備すべき特性が同等であれば「黒千石」として使用できる
 ② 「竜系3号」は上記「具備すべき特性」が全て一致しているので「黒千石」として使用できる
 ◎ 申請した結果、「黒千石大豆」を明記した申請が特許庁にて認められ、登録が完了


商標登録証「北海道黒千石大豆」 
商標登録証「北海道黒千石大豆」


 「大豆は世界の飢饉・貧困を救う」三分一先生の大豆品種改良への想い・心のテーマ


北海道拓殖短期大学名誉教授・三分一敬(さんぶいち たかし)さん 
北海道拓殖短期大学名誉教授・三分一敬(さんぶいち たかし)先生


「新品種『竜系3号』は、当初イメージした育種目標の90%は達成できたと思っています。7か年という短期間は、私自身が期待していた以上の成果です。『竜系3号』を『黒千石』に置き換えて栽培することによって、約30%の反収増が期待され、倒伏や降雪による被害も心配ないので、品質面でも安定向上が期待できると思います」と、三分一先生。

「大豆は、世界の三大穀物(小麦、稲、とうもろこし)と比較して、栄養学的にはタンパク成分が高く、脂肪も多く含有します。私が就職した当時、世界の人口増加に比べると、食料開発が追いつかず、将来、食料不足の可能性が懸念されていました。貧しい国に対して、栄養価の高い大豆の開発に力を入れるべきであると考えられていました。

大豆の育種事業に長年関わり、これまで大豆の品種改良の人生を歩んできました。自分の使命感は、世界の飢餓・貧困を救うという意味においては、大豆は価値のある存在だと思います。

そのために自分は貢献したい。もともとは、貧乏農家の生まれで終戦後の貧しい時代を過ごしましたので、貧乏に対する闘いの思いと、自分なりに社会的価値を発揮できるのではないかと思っています。

『大豆は世界の飢饉・貧困を救う』を心のテーマとして、心尽くして精一杯情熱を注ぎ込み、楽しみながら取り組んでいます。大豆育種は、80歳になっても面白い!」と、誠実さが伝わってくる優しい笑顔で語ってくださった三分一先生です。


お庭のリンゴの花 
お庭のリンゴの花(撮影:三分一敬先生)


三分一先生の楽しみは、「果物栽培」と「渓流釣り」。お庭には、無農薬のりんごの木、プルーンの木が植えられていました(風を防ぐためにヒバを栽植)。


無農薬栽培のりんごの実 
無農薬栽培のりんごの実(撮影:三分一敬先生)


自然の営みの中で、野生大豆から品種改良を重ね、
どんどん進化し、高品質に変化していく大豆たち。。。
世界の飢饉と人類の生命を守り救う、尊い大豆たちに、
限りない愛と感謝と祈りをこめて。。。


母の日に贈られた花束 
部屋を飾る母の日の花束


三分一敬先生監修『北海道における作物育種』(株)北海道協同組合通信社(1998年発行)

三分一敬先生監修『北海道における作物育種』 
三分一敬先生監修『北海道における作物育種』

三分一敬先生監修『北海道における作物育種』目次 
三分一敬先生監修『北海道における作物育種』目次


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黒千石事業協同組合10周年記念祝賀会・皆で喜びを分かち合いました(2015年3月23日)
黒千石大豆・黒千石事業協同組合(北海道 北竜町)
黒千石事業協同組合ネットショップ


◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子