身心の健康に大切な「油」、でも意外と知らない「油」のこと。分かり易くお伝えできればと思います。 

植物油の流通【No.06】

 1.植物油の貿易

植物油の国際貿易量(輸出量)は年々増加を続け、図7のとおり2001年・2002年~2013年・2014年の間に2倍に拡大し、2013年・20114年には7,340万トンに達しています。

この数量は、植物油生産量の4割を超えるものとなっています。
油種別には熱帯油脂と総称されるパーム油、パーム核油及びやし油の3油種が世界の貿易量の7割を占め、生産量でパーム油に次ぐ大豆油の貿易量は1割強を占めるに過ぎません。

大豆油など油糧種子を原料とする植物油の場合、貿易は主として原料である種子の形態で行われ、消費国で油が製造されることが一般的であるのに対し、果肉から生産されるパーム油などは油の形態でしか国際流通できないという特徴がこのような結果をもたらしています。

それぞれの油種ごとの生産量に対する輸出量の比率(2013年・2014年)をみると、パーム油は74%と輸出志向型の油脂となっています。これに対し、大豆油など油糧種子から採取される油種については大豆油でも輸出比率は22%と低く、一般的には主に消費国で搾油し、生産されることを示しています。


資料:一般社団法人 日本植物油協会HP
資料:一般社団法人 日本植物油協会HP


輸出量が最も多いパーム油は、付随生産物であるパーム核油を含め、実質上はマレーシアとインドネシアの2国が輸出国となっています。これら2国は、パーム油関連産業を国家の重要産業として位置づけて育成してきました。その結果、国内需要を遥かに超える生産量を実現し、輸出に振り向けています。

大豆油についても同じような傾向が見られます。大豆油の生産量はアメリカ、ブラジル、アルゼンチンの順に多いのですが、輸出量では、アルゼンチン、ブラジル、アメリカの順番となっています。

アメリカが「世界のパン篭」の歴史を踏襲して大豆を輸出する責務を果たしているのに対し、大豆新興国であるアルゼンチンは、差別輸出税により大豆種子ではなく、大豆油と大豆ミールの輸出を推進しています。
表4にあるとおり、2001年・2002年には同国で生産される大豆油のほとんどが輸出に振り向けられていました。

一方、菜種油の輸出はカナダの独壇場となっています。以前には国内の搾油能力が小さかったことから菜種種子の輸出に重きを置いていましたが、この10年余りの間に国内の搾油能力を高め、菜種油を輸出しようという意向が強くなりました。

ひまわり油は、種子から採取する油としては比較的輸出比率が高くなっています。特にヨーロッパの穀倉地帯に位置するウクライナはひまわりをはじめ油糧種子の生産を積極的に推進し輸出拡大を図っています。


資料:一般社団法人 日本植物油協会HP
資料:一般社団法人 日本植物油協会HP


 2.増加を続ける植物油の輸入

植物油の輸入市場は、EU、中国及びインドの3地域を中心として形成されています。
図8は、2001年・2002年、2013年・2014年における主要油種の国・地域別輸入割合を示しています。


資料:一般社団法人 日本植物油協会HP
資料:一般社団法人 日本植物油協会HP


EU、中国、インド及びアメリカが、世界の植物油輸入の約半分を占める状況は大きく変わっていません。
しかし、その中で中国のシェアが高まっていることが注目されます。中国は多様な油糧種子を生産する国であり、世界の油糧種子貿易量の過半を輸入しています。

これに対し、同じく膨大な人口を抱えるインドは、自給政策を基本としていることから油糧種子の輸入は行わず、油脂の供給不足分を主としてパーム油の輸入で補っています。

そして、人口の増加と経済発展の伸張により中国とインドは、今後さらに油糧種子や油脂そのものの輸入量を増やしていくと予想されています。


資料:一般社団法人 日本植物油協会HP
資料:一般社団法人 日本植物油協会HP


ひまわり油は、主にウクライナ、そしてアルゼンチンを中心とする地域で生産されていますが、自国やEU等の近隣国で消費されることが多く、なかなか日本まで入ってこないようです。


次回は(No.07・11月予定)、「植物油のバイオ燃料への利用」についてのお話しです。


東郷さんの油の話 


東郷さんの油の話