北海道農業公社「新規就農ガイダンス@拓殖大学北海道短期大学」農事組合法人ほのか(北竜町)の若者が体験を発表

2018/06/13 23:55 に 寺内昇 が投稿   [ 2018/06/14 0:31 に更新しました ]
2018年6月14日(木)

6月11日(月)、拓殖大学北海道短期大学の授業(農学ビジネス学科)の一環として、(公財)北海道農業公社 北海道農業担い手育成センターによる新規就農ガイダンスが行われました。このガイダンスには、約50名の学生が参加しました。


拓殖大学北海道短期大学(深川市) 
拓殖大学北海道短期大学(深川市)


「北海道農業の担い手 これからの150年を担うみなさんへ」と題して、北海道農業担い手育成センター担い手支援部就農相談課・在原章公様 課長より、北海道新規参入の実態についてのお話。そして、新規就農方法と特徴についてのお話を同課・土田千春 就農コーディネーターよりいただきました。

さらに、地元就農実例の紹介として、農事組合法人ほのか(北竜町)の若者3名(中山幸大郎さん・金田知樹さん・吉尾太志さん)による発表がありました。


新規就農ガイダンス会場 
新規就農ガイダンス会場


農学ビシネス学科長・岡崎正昭 教授

農学ビシネス学科長・岡崎正昭 教授より、ガイダンスの目的と本日の講師のご紹介がありました。


農学ビシネス学科長・岡崎正昭 教授 
農学ビシネス学科長・岡崎正昭 教授


「北海道農業の担い手 これからの150年を担うみなさんへ」と題して


北海道農業の担い手 これからの150年を担うみなさんへ 
北海道農業の担い手 これからの150年を担うみなさんへ


北海道新規参入の実態について

(公財)北海道農業公社 北海道農業担い手育成センター 担い手支援部就農相談課・在原章公 課長


担い手支援部就農相談課・在原章公 課長 
担い手支援部就農相談課・在原章公 課長


北海道のこれからの150年を、若い皆さんがさらに農業を続けられるように、頑張っていただきたいと思います。
様々な情報がネットに存在し、漠然としたイメージが掴めると思います。ネットを入り口として、農業公社では直接会って「face to face」によるコミュニケーションをしっかりと行い、各人の要望に対応しています。


(公財)北海道農業公社の業務 
(公財)北海道農業公社の業務


相談方法

1.セミナー(札幌月1回、毎週土曜日午前・午後)
2.北海道新規就農フェア(札幌、東京、大阪会場にて年7回)を開催して、道内市町村と連携して個人面談に対応
3.サポートデスクとして担い手育成センターで毎日対応

北海道の各地域の担い手センターは171箇所設置。各地の農協との連携で情報交換も行われています。さらに各農業法人との協力で、現地見学、従業員の紹介などを実施。


北海道新規就農フェアチラシ 
北海道新規就農フェアチラシ


就農相談者数

・2017年は年間575人
・平成20年はリーマンショックで世界的大不況の年で増加


北海道農業担い手育成センターホームページ「北海道 de 農業をはじめるサイト」

・「農業に興味がある」「農業体験がしたい」「農業で就職したい」「農業を始める」


(公財)北海道農業公社のホームページの説明 
(公財)北海道農業公社のホームページの説明


北海道農業の特徴

・規模は府県の13倍、農業所得は6倍
・1経営体当たり28.2ha、農業粗収益3,000万円を超える(平均農業所得930万円)
・食料自給率 カロリーベース221%
・農家戸数の減少 北海道で4万戸を切る
・農業者の高齢化 65歳以上の比率がアップ
・後継者のいる農家が減少していることが重視されている


ガイダンスの様子 
ガイダンスの様子


北海道農業の課題

・農家戸数の減少 → 経営面積の増加 → 農業の大型化・機械化 → 生産量維持・農業所得の増加
・農業者の高齢化
・人手不足  


対策

・担い手の確保
・地域営農支援組織の整備 → 機械化・コントラクター・スマート農業(GPSガイダンスシステム・マルチロボットトラクタ・トラクター自動操縦装置などの普及に省略化が進む)・酪農ヘルパー・搾乳ロボット
・法人化(税金問題、社会的信用を得る、従業員の獲得)


地域営農支援組織の整備 → 機械化 
地域営農支援組織の整備 → 機械化


北海道農業の明日は若者女性にチャンス

・市町村・JA等が担い手対策に注力
・北海道の農業研究機関が、国立2校、道立9校、私学4校。普及センターは全道に配置され、サポートが受けやすい
・インターネットの普及はかなり大きなツールになる。必要な情報が手に入りやすい。ネット販売も可能。腕と技とテクノロジーを使って、より良く生きていくことが容易になってきた。女性が農業に取り組みやすい環境が築き上げられてきている


農業への新規参入に必要なもの

・やる気と情熱は必須
・営農技術や経営管理技術:受入指導農家等で、実践的な就農研修を通じて習得
・資金
・地域や周りの人々との連携:地域からの信用を勝ち取る → 誠実さ・一生懸命さ
・農地・機械・資材:青年等就農資金などの資金の融通を受けて整備


農業への新規参入に必要なもの 
農業への新規参入に必要なもの


担い手支援部就農相談課のスタッフ紹介

今後も、スタッフが皆様の様々な相談の対応や資金的な支援事業を応援していきます。


担い手支援部就農相談課スタッフ紹介 
担い手支援部就農相談課スタッフ紹介


新規就農方法と特徴について

北海道農業公社 担い手育成センター担い手支援部就農相談課・土田千春 就農コーディネーター


担い手支援部就農相談課・土田千春 就農コーディネーター 
担い手支援部就農相談課・土田千春 就農コーディネーター


就農方式タイプ

1.家族型継承:親の経営を継承
2.独立就農(新規参入型):有形・無形資源を独自に獲得
3.就職就農
4.法人経由型就農
5.第三者継承:農業リタイアー時に、第三者に売却譲渡し、既存の経営を継承する


就農方式タイプ別の特徴 
就農方式タイプ別の特徴


・親元就農の場合は、家、資金、地域の信頼、農地、技術などを親から引き継ぐ。親と相談しながらの農業で、自由度はそれぞれ異なる
・人材投資資金を活用すると5年後には経営者として独立する必要がある
・就職型就農の場合は、農業の知識がなくても、働きながら学びながら知識を習得していくことができる。構成員として、経営に参画していくと出資金が必要となる
・地域の信頼関係は、法人の中で築き上げていく。法人が求める従業員の条件を認識する


新規就農における問題点をアンケート調査

・問題点としての回答では、資金確保が6割、農地確保が4割、住宅確保と営農技術の習得が3割の回答を占めた


就農後の経営面での問題点

・技術不足、労働力不足、投資資金不足、運転資金不足、所得不足
・新規就農は、あらゆる点で、ハードルが高い


農地所有適格法人

・平成22年から28年の間で、毎年、道内で100戸づつほど法人が増えている


法人化の目的とメリット

・経理面において、法人化することによって家計費と経営費を区別
・優秀な人材雇用の可能性が広がる.。心して働ける職場として認識される
・販売拡大。取引先に対する信用力を高めることができる
・円滑な経営継承が実施される
・農業所得が400万円超えで法人化することで、節税が可能


農業所得が400万円超えで法人化 
農業所得が400万円超えで法人化


法人経営における保険

・事業主負担の保険として、労働保険(労災保険・雇用保険)、社会保険(医療保険・年金保険)がある。労働者数や事業形態によって適用要件が異なる


法人に就職した先輩方の声

・就農してから様々なことを学び、知識を取得していくことが可能
・身体的な労働環境(アレルギー体質)を改善しておく。体力的な面を考慮する
・農業は、命ある生き物を育て、目で見て体感できる面白さを実感


法人に就職した先輩方の声 
法人に就職した先輩方の声 ①


法人就農した拓大卒業生の実例

・体力が大事だが、体力がなくても根性があれば実践可能。体力・協調性・柔軟性が求められる
・1年で諦めず、2年以上続けることを大切
・1年目は作業全般、2年目には大型免許を取得し、3年目には作業工程を覚え、4年目にはハウス11棟の責任者になる。農業の楽しさを実感するまでには時間がかかりますが、積極的に関わっていけるようになるまで、頑張って継続していただきたい


法人に就職した先輩方の声 ② 
法人に就職した先輩方の声 ②


メール相談の実例・こんなことにも注意

・「未経験者歓迎」「親切丁寧に教えます」と募集があり就農したが、何の説明もなく作業の指示をされた(農業の専門用語が理解できない)
・170馬力のトラクターに乗車し作業することを指示され、失敗したら怒鳴られた
・指導する経営者側には、丁寧な説明、指導者としての自覚と理解をしっかり持つことが必要になってくる


農業後継者の問題点

・親子間の経営対立は、「親に原因」「息子の原因」「お互いに原因」「金銭的な原因」の4パターンに区分できる ・不満の中身と原因を分析して、それぞれに意見を出し合い話し合って、良い方法を探し出し、対処する解決策を提案


農業後継者から農業経営者への計画・目標

・家族経営協定のススメ:家族との客観的な話し合い
・地域の組織活動への積極的参加


農業次世代人材投資資金(準備型)について:親元就農を目指す場合

・就農後5年以内に経営を継承:組勘の名義変更、自分の名前で農産物を出荷、すべて自分名義で実施


農業次世代人材投資資金(準備型)について 
農業次世代人材投資資金(準備型)について


農事組合法人ほのか(北竜町)水谷茂樹 代表のみなさんへのメッセージ


農事組合法人ほのか(北竜町)水谷茂樹 代表のみなさんへのメッセージ 
農事組合法人ほのか(北竜町)水谷茂樹 代表のみなさんへのメッセージ


「田んぼや畑は、食糧生産工場ではありません。農業は車やテレビを流れ作業で作る様にはいきません。

爺や婆・嫁や子供が、太陽と水と土の恩恵を受けながら、時には自然と闘いながら、自分の知恵と体と心で食べ物を育てる、血の通った命産業です。
農家は、地域を作っています。田舎を守っています。そこにいる人間を育てます。

グローバル化とか経済効果とかいう言葉は二の次、当てにはなりません。
ほのかができたのは、農業で、自分たちとまわりの人たちを、この自然を、北竜を守り育てていくためです。


農業法人へ就職して~家族経営から農業法人経営へ~農事組合法人ほのか


北竜町と農事組合法人ほのかの紹介 
北竜町と農事組合法人ほのかの紹介


中山幸大郎さん(22歳)


中山幸大郎さん 
中山幸大郎さん


北海道深川東高校卒業、すぐに就農。実家の農家の継ぐ。ゆっくりのんびりやっていこうというイメージでしたが、法人化し、他の農家さんと協力作業となりました。それまでの稲作に加え、メロン、インゲンなどの畑作作業、機械整備、補助暗渠整備、ハウスの組み立て・解体作業などいろんな作業しています。

北竜町について紹介します。
北竜町は深川市から西に車で30分位のところに位置し、農業を基幹産業とし、夏には「ひまわりの里」の観光地として盛んです。2017年には、北竜町産米「ひまわりライス」を栽培する北竜ひまわりライス生産組合が日本農業賞大賞を受賞しました。


ひまわりの里 
ひまわりの里

日本農業賞大賞受賞について 
日本農業賞大賞受賞について


農事組合法人ほのかについて紹介します。
農事組合法人ほのかの設立は平成26年。構成員9戸(経営主9人(妻8人)、後継者3人(妻1人)、新規就農1人、常時雇用1人、その他必要に応じてアルバイト)です。


平成30年耕作面積140ha 
平成30年耕作面積140ha


平成24年、法人化を目指す5件の農家で水稲のみの共同作業・経理をスタート。翌年、3戸が加わり、転作・畑作物も経営に加え集落営農として可動。平成26年、法務局に登記設立。規模拡大加算金を準備資金とする。果菜類もスタートし、さらに、3年かけて他にないひまわり(食用・油用・景観)栽培に特化した法人となってます。

平成30年耕作面積140ha(水稲97ha、大豆、秋小麦、そば、ひまわり食用・油用・景観ひまわり、ハウスメロン、ハウスインゲン、いなきび、緑肥等)です。


メロン、インゲン、大豆 
メロン、インゲン、大豆


春は除雪作業からスタートし、ハウスの組み立て作業、田植え、夏は草刈り、秋の収穫時は、ライスセンターなどで地域共同作業をしたり、圃場整備などを行っています。冬場は、総会、委員会等で、来年の営農計画などを話し合っています。自分は主に機械のオペレーターを担当しています。


収穫模様 
収穫模様


作業は、すべての作業ができるように学んだ上で、自分の得意とする作業を中心に行っていきます。作業の中で、先輩から指導を受けたり、同年齢同士お互いに教え合ったり、補い合いながら作業を進めています。

その他、農協青年部活動として、北竜町産ブランド米「ひまわりライス」の販売促進を道内外へ訪問して行っています。北竜町戦隊ヒーロー「アグリファイターノースドラゴン」は、商工会・農協・役場の青年部や若手が集まって結成されました。これまで、道内各地はもとより、東京・大阪・沖縄など遠征して、取引先のスーパーでショーを披露してひまわりライスの直販を実施しています。


アグリファイターノースドラゴンの活動 
アグリファイターノースドラゴンの活動


これから就農したい皆さんへのドバイスとしては、理想と現実のギャップはありますが、機械作業や土木作業は実践を重ねるごとに身についていくということです。何事も勉強・経験として捉えています。

わからないことや、理解できないことなどは、両親・先輩・同年代の仲間など周りの人々に聞き、アドバイスを受けながら自分なりに納得した上で進めていくと、ほとんどものが、なんとか解決していきます。

やる気も必要ですが、しっかり休むことも大切です。焦らずゆっくり取り組んでいってほしいと思います。


金田知樹さん(27歳)


金田知樹さん 
金田知樹さん


私は、卒業後、自動車整備関係に就職し、その後、友人の紹介で北竜町の農事組合法人に就農。当時参加した就農フェアーで妻と知り合い結婚。妻の農業研修でお世話になった農事組合法人ほのかとのご縁で働くことになりました。

5年間の研修後、法人に就職となりました。妻はメロン栽培を希望し、メロン農家で3年間研修。
自分は法人への就農を決意しました。二人で農業をやるには、ハウスもののだけの方が、初期投資も少なくてすみますが、もし病気などで片方が働けなくなってしまったら、経験の浅い一人での農作業は難しいと考えました。

去年子供も生まれ、現在妻が働けない状態になっているので、自分の法人での給料でなんとか生活をしています。法人に就職したら、給料制で収入も安定し、雇用保険もあるので、安心した生活が送れます。

就農にあたり、青年就農給付金(農業次世代人材投資資金:年間最大150万円、給付期間最大5年間)を受けました。5年後には農業に従事義務が課せられています。5年後に農業をやめる場合は、一括返金が求められます。女性の場合、妊娠時に休止はできますが、休止後1年以内の復帰しなければなりません。その点、子育てが大変になりので、その点を十分考慮して計画したほうが良いと思います。


会場の模様 
会場の模様


吉尾太志さん(29歳)


吉尾太志さん 
吉尾太志さん


ひまわり油のPRをしたいと思います。この写真は、ひまわり収穫時、コンバインでの刈り取りの様子です。


油用ひまわりの収穫 
油用ひまわりの収穫


油用ひまわりの収穫のとき、コンバインからの排出時は茎なども混じりますが、ここからさらに選別していきます。ひまわりの種は乾燥施設に送られます。粒の大きさにより選別され、製品となるサイズのものを送り込んで乾燥機にかけます。


油用ひまわりの乾燥 
油用ひまわりの乾燥


乾燥したひまわりの種です。


乾燥後のひまわりの種 
乾燥後のひまわりの種


ナッツ用ひまわりの種は、皮剥き機械・色彩選別機での作業が必要です。
油用ひまわりの種は、名寄市の民間会社工場に送られ、委託搾油が行われます。その後、日清オイリオのブランドで精製し、商品化されます。


商品化された「燦燦ひまわり油」 
商品化された「燦燦ひまわり油」


私は、札幌で10年間美容師として接客をしていました。親は北竜町美葉牛で農家をやっています。

2年前に北竜町に戻り「ほのか」で就農をスタートしました。両親が個人でやっている時は、正直、農家を継ぐことは考えていませんでした。法人となり、メリットがあると感じたので、農業をやることを決心しました。


会場の様子 
会場の様子


法人のメリットとは、個々の特化した得意分野を見出し、専門知識が深くなるところにあると思います。

農業をやる上で、「人」が一番大事だと感じています。トラクターに乗ったり、ハウス作業などいろいろな作業を行っていますが、その作業の中での人々との関わり合いが、これからは大切になっていくと思います。

就職する際の心構えとしては、簡単なことなのですが、理解できないことや疑問に思ったことは、躊躇せずに素直に周りの先輩方に聞くことです。最初は知らない専門用語でわからないことばかりです。僕は最初、「畦」という言葉さえわかりませんでした。そんな僕でさえ、普通に働いています。

「ほのか」の場合は、優しい先輩方が、手取り足取り丁寧に、わかりやすく説明してくれので、本当に良い職場だと思います。


以上、生徒さんたちの沢山の拍手をもって、新規就農ガイダンスが終了しました。


皆さんから盛大な拍手 
皆さんから盛大な拍手


就農における様々な知識・方法・法則・心構えなど、あらゆる視点から就農について考えることができた素晴らしいガイダンスでした。

北海道農業公社・在原章公 課長、土田千春 就農コーディネーター、そして農事組合法人ほのか・中山幸大郎さん、金田知樹さん、吉尾太志さん、皆さんの大変参考になる沢山のお話をありがとうございました。


皆さんから盛大な拍手 
皆さんから盛大な拍手


写真(90枚)はこちら >>


◆ 関連サイト

北海道農業担い手育成センター
(公財)北海道農業公社
拓殖大学北海道短期大学


◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子