第46回農業セミナー「誰が農業を担うのか!?第2弾~法人経営から見た農業の可能性~」@拓殖大学北海道短期大学(深川市)が開催されました

2012/12/04 17:14 に 寺内昇 が投稿   [ 2012/12/05 1:52 に更新しました ]
2012年12月5日(水)

12月1日(土)朝から、シンシンと雪が降りしきる中、拓殖大学北海道短期大学(篠塚徹 学長)が主催する第46回農業セミナー(橋本信 実行委員長)が、同大学(深川市)で開催されました。北農中央会、JAきたそらち、JA北いぶきの協賛。  

本セミナーは、拓殖大学短期大学の創設以来46年間続けられている環境農学科の伝統行事。農業情報の発信と、環境農学科の教育内容・方針を広く周知することを目的としたものです。

法人組織で農業を営んでいる道内でも有数の4例の先進的事例が発表されました。
石田清美さん((株)輝楽里(きらり)代表取締役・江別市)、本間秀正さん((有)ライフ代表取締役・南幌町)、渡辺辰一さん((有)渡辺農場代表取締役・三笠市)、佐藤稔さん((有)田からもの代表取締役・北竜町)の皆さんです。


    
会場となった拓殖大学北海道短期大学(深川市)


「誰が農業を担うのか!?第2弾」~法人経営から見た農業の可能~と題する今回のセミナーでは、地域現場で実績を上げ、活躍されている4人の方々がご講演。法人経営の在り方、地域における役割、担い手の可能性等、農業法人の方向性についての熱いお話です。さらにパネルディスカッション、学生たちとの質疑応答が活発に交わされました。

会場となった拓殖大学北海道短期大学・スノークリスタルホールには、学生の皆さんや関係者や一般の方々を含め約300人が参加。椅子や机を増やしての大盛況。会場に入りきれないために、別室に用意されたテレビモニターで、視聴された方々もいらっしゃったとのこと。今回のセミナーは、かつてないほどの参加人数だったそうです。


   
左:配布された資料  右:会場風景


篠塚徹 学長の開会挨拶
篠塚徹学長 
「TPPをはじめ、農業を取り巻く環境は厳しいものとなっていますが、日本の農業の振興なくして、農業の再生もないし、環境保全も成されないと確信しています。その中でも、北海道の役割が重要です。
当大学は、昭和41年(1966年)の創設以来、教員はもとより、地域の方々の熱いご支援により今日まで教育を続けて、実績をあげることができました。
近年、少子化の波、、若者の農業離れによって、学生の減少が続いています。今後の改造においても、地域の特徴を生かした大学を目指していきたいと思います。
農業の発展と若者を農業分野に呼び戻すことが、本学存続の鍵となります。本日の農業セミナーが盛り上がり、盛会になることを期待します」


石田清美 氏(59歳) (株)輝楽里(きらり)代表取締役(江別市)  ホームページ
  「誰のために!」

 石田清美氏 (株)輝楽里(きらり)代表取締役(江別市) ◎ 経営ビジョンを確立し20年先を描く。地域と一体となって、次世代へ繋げていく農業法人経営を、自分たちの力で確立していく経営を行う。中国からの研修生を受入れ、研修生が帰国後にも農業ができるようにと、中国にも会社を設立。

・平成18年(2006年)に7戸で農業法人「(株)輝楽里(きらり)」を設立(140ha)。
・乾燥施設の買い上げからスタートし、倉庫、野菜ハウス、水稲育成ハウスの新設と次々に規模を拡大。
・平成22年(2010年)には、新会社(有)江別ヤマト種苗(肥料、農薬、資材、種苗等)を設立。
・農地購入、新人採用、職員の海外派遣と事業を展開中。
・研修生宿舎増築、社員宿舎購入など、環境を整備。
・平成23年(2011年)3月、中国現地法人設立(KASDco. 吉林省輝楽里農業科技開発有限公司)。
・同年6月、ISS北海道事業協同組合設立。

石田氏は、「時間は大切に有効に使え」「挨拶は基本、礼節を守れ」「先輩の経験は宝。耳に入ったものは、目で確かめ経験する」「仕事は真剣に厳しく、生活は明るく楽しく正直に」という人間としての基本的な考え方を、体験を混じえながら力強く学生の皆さんへ語りかけていらっしゃいました。


本間秀正 氏(58歳) (有)ライフ・代表取締役(南幌町)  ホームページ
  「地域農業の中での法人経営」
 本間秀正氏 (有)ライフ・代表取締役(南幌町) ◎「仕事は楽しく、人は陽気に、社は景気よく」をモットーに、作業効率の向上、人とのコミュニケーションを重視し、所得アップに繋がるような経営を行う。社名「ライフ」は、ドイツ語(reif)で「稔る。熟す」を示し、大地に根ざし大きく育つ意味がこめられています。

・平成15年(2003年)、農業生産法人ライフを創立。農家5戸、70haからスタート。
・現在耕作面積123ha :水稲(53.5ha)、小麦(47ha)、ビート(7.3ha)、大豆(13.5ha)、キャベツ(10.7ha)、施設野菜(1ha)。
・社員12名(取締役5名、従業員7名)、常用パート4名 その他2~4名。
・平成18年(2006年)より「酒米(彗星)」への取組、平成23年(2011年)より水稲直播にトライ。

本間氏は、南幌町議会議員でもあり、現在、南空知消防組合南幌消防団団長を務めていらっしゃいます。
そんな多忙の中で、「作業は集中し、効率よく進め、休む時はしっかりと休む」という普通のことを普通にこなしていくことの大切さ、難しさを語られました。
また「コミュニケーションの大切さ」を強調。余裕をもって仕事に取組み、「仕事は楽しい」という意識をもつことによって、外に向けての色々な発見があり、世界が広がっていくことをお話されました。


試食ランチ

黒米「芽生さくらむらさき」「きらら397」のちらし寿司をはじめ、オードブルには、ミートボール、シュウマイ、串フライ、ポテトサラダなど盛り沢山。地元の食材を使い、地元の「日の出会館」さんが料理されたものです。

さらにフライドポテト、フライドカボチャ(バレイショ「きたあかり」、カボチャ(らいふく」)、グラタンなどボリュームたっぷり。地元のお料理がたくさん並び、みなさん大満足。美味しく、楽しく、農業についての会話も弾みました。


    
試食ランチ


渡辺辰一氏(41歳) (有)渡辺農場・代表取締役(三笠市)  ホームページ
  「これからの農業に求められているものと、それに答える農業法人のあり方とは!」
渡辺辰一氏(有)渡辺農場・代表取締役(三笠市)
◎「人が育つ農場」をテーマに、若手農家の育成、研修生の受け入れ等、意識の高い社員の育成に積極的に取り組む。農業の可能性拡大に向けて、地域の交流イベントや地元特産品の加工商品開発に力をいれていく事業 展開を行なっています。

・昭和47年(1972年)設立の(有)渡辺農場における3代目として、平成15年(2003年)に代表取締役に就任。平成23年(2011年)に新規事業として起こした(株)カーサ(養豚・肥育事業)の常務取締役を務める。
・現在、20代の正社員が10名。
・安心安全な農作物栽培に向け、約130haの土地に玉ねぎを中心に、キュウリ、スイカ、カボチャ、トマト、コーン、大豆、小麦栽培を行う。
・農業体験プログラムの企画(クッキング教室、キャンプ体験等)、ホームページ作成、機関紙発行などを通して、若い世代に農業への関心を向けていく活動を展開していく。

渡辺氏は、「ゆるがない消費者との信頼関係」を大切にし、これからを担う若者の力を活性化させ、「地域のハブ」になれるよう事業展開していきたいと熱く語っていらっしゃいました。


佐藤稔氏(57歳) (有)田からもの・代表取締役(北竜町)  北竜町ポータル記事一覧
  「法人経営は地域の担い手となりうるか」
佐藤稔氏(有)田からもの・代表取締役(北竜町)
◎「プロに近道はない」という信念のもとに絶え間ぬ努力と研究を積み重ねることの大切さ、農業経営の重要性を語る。その農業は、「食べものはいのち(生命)」という北竜町の魂を継承し、安心・安全な食べものの栽培を目指していくものです。

・昭和58年(1983年)に就農。平成18年(2006年)に(有)田からものを設立。同年北竜町のひまわりライス生産組合長を務める。
・昭和63年(1988年)より無除草剤栽培米に取り組む。平成3年(1991年)より有機栽培・特別栽培に取り組む。
・耕地面積39.22ha:水稲26haの内、特別栽培(ゆきひかり、ゆめぴりか、おぼろづき)、有機栽培(きらら)、農薬節減(空育、ななつぼし)、そば(きたわせ)、緑肥(えん麦)。
・社員2名採用(平成21年、23年)。
・平成20年(2008年)、農林水産省の第1回「農業技術の匠」に選定される。
・平成21年(2009年)、北海道食の安全・安心委員会の委員。

佐藤氏は、農業経営の概要について、面積、収量、販売高、所得額、財務状況における年毎の推移を数字とグラフを使い、解りやすく丁寧にお話くださいました。経営管理のメリット、デメリット、注意すべき点など、経営における基礎知識や経営ビジョンの重要性を強調。
「労働・経営・研究」の全体がひとつにまとまってこそ、農業が成り立つという深い信念を、学生の皆さんにアピールされていらっしゃいました。


パネルディスカッション
 司会:橋本信氏(拓殖道短大・環境農学科長)
  ホームページ

 1.農業における法人経営はなぜ必要か?
 2.地域における存続・発展の条件・役割とは何か?
 3.農業の担い手に対する今後の期待すべき在り方は?
 4.農業法人の可能性について

 4つの論点を踏まえた上での、質疑応答が活発に交わされました。

質疑応答

 ・1社だけでなく、複数社を経営することのメリット、意義について
 ・人材雇用・人材育成についての詳しい内容
 ・「ゆでガエル」「深み」の意味について
 ・農業経営の把握について
 ・楽しい経営と礼節を守るとの明確な基準・違いについて
 ・大規模経営と小規模経営のメリット・デメリット
 ・自社の経営診断をどのように行っているか

 様々な質問に対して、4人に方々のそれぞれ個性的な意見が、熱心かつ活発に交わされました。


パネルディスカッション模様   パネルディスカッション模様
パネルディスカッション模様

橋本信 先生の閉会挨拶
パネルディスカッション模様
「北海道には、農業の重要拠点しての農業生産法人があることを実感しました。農業は人が担うもの。その人を育て、支えるしくみとしてとして農業生産法人があり、それが地域に活気をもたらすものであるということを、4人の講師の方々の実績から改めて認識いたしました。
経営という視点で農業を考えていくこと、経営の為に求められる生産技術の発想、経営に必要な人材の養成という観点から新しい視点をもつことができました。
この農業セミナーは、地域の皆様と農業の未来を切り開くためのセミナーであり、4人の講師の方々のお話により、改めて農業の可能性への認識をもつことができたことを、心からお礼申し上げます。ありがとうございました」


北の大地・北海道における農業、

地域と一体となって、生命を育んでいく農業、

これからの農業を担っていく若者たちの輝ける可能性に、

大いなる愛と感謝と祈りをこめて。。。


第46回農業セミナー「法人経営から見た農業の可能性」 
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拓殖大学北海道短期大学ホームページ記事「第46回農業セミナーを開催しました」


◇ 撮影=寺内昇 取材・文=寺内郁子