北竜町・新保育園への地中熱ヒートポンプシステム導入について川田昌宏 技術長にお話を伺う

2019/09/23 14:43 に 寺内昇 が投稿   [ 2019/09/29 15:13 に更新しました ]
2019年9月24日(火)

令和2年4月に竣工予定となっている、北竜町の新保育園建設において、地中熱ヒートポンプシステムが導入されています。地中熱ヒートポンプシステムは、省エネを図り、CO2排出を削減するクリーンエネルギーの積極的な利用を目指しています。

そこで9月13日(金)、ヒートポンプシステムの導入を担当されている北竜町役場建設課・川田昌宏 技術長(47歳)に、お忙しい中お話を伺いました。


北竜町役場建設課・川田昌宏 技術長 
北竜町役場建設課・川田昌宏 技術長


地中熱ヒートポンプシステムの目的

地中熱ヒートポンプ使用の目的のひとつは、CO2排出削減にあります。エネルギーの循環を上手に利用して、省エネや環境保全(環境負荷低減)に積極的に取り組んでいくものです。

町内のある程度規模のある施設の建設時には、地中熱ヒートポンプシステムの活用を考えています。公共施設で、町が管理する場合、ランニングコストの低減が可能となります。今後、合同庁舎や学校の建て替え建設の場合は、地中熱ヒートポンプシステムの検討を視野に入れています。


地中熱ヒートポンプシステムの原理

家庭用暖房エアコンの仕組み

家庭用暖房エアコンの場合、熱源が外気であり、室内機と室外機の循環するパイプに冷媒という液体を循環させます。液体が気体に変わる時、熱を奪って冷やし、気体が液体になる時、熱を放出して温める仕組みです。 夏の暑い日は、室内の熱を室外に排出して室内を冷やします。

地中熱を使う仕組み

地中熱ヒートポンプシステムの場合、温度変化の少ない地中の熱を熱源とします。冬は外気より高い温度、夏は外気より低い温度の熱源を使うことにより、効率のよいエネルギーの使い方が可能となります。 地中熱は、年間通して平均10度前後と言われています。

地中熱を使うメリット

夏は、30℃の外気温で冷やすより、10℃の地中熱を使って冷やす方が効率がよくなります。冬は、マイナス10℃の外気熱より、10℃の地熱を使って温めた方が、温度差が少ない分、効率がよくなり、省エネになります。


100mボーリングでWUチューブ22本使用

地中熱ヒートポンプシステムの場合は、100mボーリングし、WUチューブが2本セットになった管を埋め込み、5m置きに22本ボーリングする予定です。

冬季は、WUチューブを通った水(お湯)は、5℃で地中に入って、地中から熱をもらって7℃で地上に戻り、地上で0℃から2℃分の熱を放出します。そして、また5℃で地中に入っていくという、2~3℃の温度差で戻ってくる仕組みになっています。エアコンの室外機が、地中に設置されたというイメージです。

WUチューブの設置間隔は、近すぎると地盤の温度が低下してしまうので、最低5m置きにボーリングしていきます。水道管設置などの環境においては、7mになることもあります。ボーリングは駐車場(約50台駐車可能)付近で実施します。冬は雪置き場となります。


駐車場の下にヒートポンプ用チューブを配置 
駐車場の下にヒートポンプ用チューブを配置


地中熱ヒートポンプ・事業費

総事業費

総事業費は、1億4千300万円程。環境省の「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」の補助金(補助率2/3)を、9千500万円程受けるので、自己負担は4千800万円程となっています。

年間ランニングコスト試算

・地中熱ヒートポンプの場合      :150万円
・エアコン(電気)+灯油ボイラーの場合:248万円

年間運用コストが、およそ100万円ほど削減可能。また、LCC(ライフサイクルコスト)の30年間のランニング & メンテナンスコストを比較しても、建設時に環境省の補助金を受けることもあり、「エアコン+灯油ボイラー」の場合に比べ、地中熱ヒートポンプシステムの場合は、2千800万円程削減可能な試算が出ています。

二酸化炭素排出量(t-CO2/年)

・地中熱ヒートポンプの場合      :46 t-CO2
・エアコン(電気)+灯油ボイラーの場合:65 t-CO2

地中熱ヒートポンプシステムの場合、従来のエアコンと灯油ボイラーに比べ、毎年20トン近いCO2排出を削減できます。


(仮称)和保育所 
(仮称)和保育所


道内各地における地中熱利用の取組み例

これまでの地中熱ヒートポンプ・システム導入施設としては、「砂川市庁舎(砂川市)」「北欧の風道の駅とうべつ(当別町)」「北見信用金庫紋別支店(紋別市)」「日本銀行釧路支店(釧路市)」「サンフラワーパーク北竜温泉(北竜町)」などがあります。

北空知における公共施設での取り組みはこれまでになく、北竜町のみ導入しています。


北竜町役場建設課・川田昌宏 技術長 
北竜町役場建設課・川田昌宏 技術長


地中熱ヒートポンプシステム導入へのハードル

・一般的に普及している設備ではないので、関係者の理解・説明に時間がかかる
・事業費が高額であり、補助金申請に関する作業量が大きい
・建築の工程管理・全体調整が難しい
・プロジェクト開始から完了まで、全てを見通せる人材の存否がキーポイント
(プロジェクトが進行する中、様々な事象を予測し対応できる人材が必要)


地中熱ヒートポンプシステム・工期

・工期:2019年4月25日(木)~12月20日(金)。完成後、検定


サンフラワーパーク北竜温泉の廃湯熱ヒートポンプシステムの現状

2009年に、公共施設では道内初といえる、廃湯熱ヒートポンプシステムをサンフラワーパーク北竜温泉に導入しました。2011年の東日本大震災前は、年間1000万円ほどランニングコストが削減されてました。

しかし原発が停止し、電気料金が高くなり、特にそれまで安価だった夜間電気料金がかなり上がりました。北竜温泉では、夜間の安価な電力を蓄熱して昼間使用しているのですが、夜間の電気料金が倍以上になってしまいました。

現在は、想定していない環境変化のため、震災前ほどのコスト削減にはなっていませんが、年間680トン弱の CO2削減が継続されており、地球環境の保全に寄与しています。


建設がすすむ北竜町の新保育所(撮影:2019年9月9日) 
建設がすすむ北竜町の新保育所(撮影:2019年9月9日)


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◇ 撮影・編集=寺内昇 取材・文=寺内郁子